2020年4月7日火曜日

黒川検事長の定年延長「撤回を」 日弁連会長が声明

 日弁連会長は6日、黒川弘務検事長の定年を延長した閣議決定の撤回を求めるとともに、検察官の定年の63歳から65歳への引き上げや、内閣の恣意的な定年延長を認める検察庁法改正案にも反対する声明を出しました。声明文を下に掲示します
 声明は、これまで検察官に定年延長が適用されないと解釈されていたのは「人事への政治の恣意的な介入を排除し、独立性を確保するため」であると指摘し、その解釈を変更し黒川氏の定年を延長したことは「三権分立を揺るがすもの」と批判しました。

 共産党の山添拓議員は2日の参院法務委で、黒川弘務検事長の勤務延長に関連して、国家公務員法の勤務延長を検察官にも適用できるとした解釈変更の検討にあたり参考にした資料には、検察官にも勤務延長を適用すべきだとする文献や、森雅子法相が繰り返し述べてきた社会経済情勢の変化を示す資料もなかったことを法務省に認めさせました。
 また、森法相が「検察官の能力も個人差がありうるから、検察官は上司の指揮監督に服する」と答弁したことに対して、山添氏は「だからこそ、検察上層部の人事に官邸が介入するのは大問題だ」と指摘しました。
 しんぶん赤旗の記事を併せて紹介します。
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官邸の人事介入危険 検事長定年延長に山添氏
しんぶん赤旗 2020年4月6日
 日本共産党の山添拓議員は2日の参院法務委員会で、安倍政権が強行した黒川弘務東京高検検事長の勤務延長に何の根拠もないことを明らかにし、検察人事に政権が関与する危険を告発しました。
 法務省は、国家公務員法の勤務延長を検察官にも適用できるとした解釈変更の検討にあたり参考にした資料を提示しました。しかし、山添氏の追及で、川原隆司刑事局長は資料の中に検察官にも勤務延長を適用すべきだとする文献や、森雅子法相が繰り返し述べてきた社会経済情勢の変化を示す資料もなかったことを認め、解釈変更の根拠がなかったことが明らかになりました

 それでも森法相は「業務の性質上、退職等による担当者の交代が当該業務の継続的遂行に重大な障害が生ずることが一般の国家公務員と同様だ」と強弁しました。
 山添氏は、「この検察官でなければならない事件を想定することは許されるのか。同じ法と証拠の下では同様の終局処分が行われるべきだ」と強調しました。その上で山添氏は「証拠の収集をどこまで行うのかなど検察官により差が出る。権力に疑惑がかかっているときにどこまで捜査を徹底するか、そのさじ加減は検察官次第だ」とただしました。
 森法相は「ご指摘のとおり個々の検察官は法と証拠に基づき不偏不党を旨とする。他方、検察官の能力も個人差がありうるから、検察官は上司の指揮監督に服する」と答弁。山添氏は「だからこそ、検察上層部の人事に官邸が介入するのは大問題だ」と指摘しました。


検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明

政府は、本年1月31日の閣議において、2月7日付けで定年退官する予定だった東京高等検察庁検事長について、国家公務員法(以下「国公法」という。)第81条の3第1項を根拠に、その勤務を6か月(8月7日まで)延長する決定を行った(以下「本件勤務延長」という。)。 

しかし、検察官の定年退官は、検察庁法第22条に規定され、同法第32条の2において、国公法附則第13条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基づいて、同法の特例を定めたものとされており、これまで、国公法第81条の3第1項は、検察官には適用されていない。 

これは、検察官が、強大な捜査権を有し、起訴権限を独占する立場にあって、準司法的作用を有しており、犯罪の嫌疑があれば政治家をも捜査の対象とするため、政治的に中立公正でなければならず、検察官の人事に政治の恣意的な介入を排除し、検察官の独立性を確保するためのものであって、憲法の基本原理である権力分立に基礎を置くものである。 

したがって、国公法の解釈変更による本件勤務延長は、解釈の範囲を逸脱するものであって、検察庁法第22条及び第32条の2に違反し、法の支配と権力分立を揺るがすものと言わざるを得ない。 

さらに政府は、本年3月13日、検察庁法改正法案を含む国公法等の一部を改正する法律案を通常国会に提出した。この改正案は、全ての検察官の定年を現行の63歳から65歳に段階的に引き上げた上で、63歳の段階でいわゆる役職定年制が適用されるとするものである。そして、内閣又は法務大臣が「職務の遂行上の特別の事情を勘案し」「公務の運営に著しい支障が生ずる」と認めるときは、役職定年を超えて、あるいは定年さえも超えて当該官職で勤務させることができるようにしている(改正法案第9条第3項ないし第5項、第10条第2項、第22条第1項、第2項、第4項ないし第7項)。 

しかし、この改正案によれば、内閣及び法務大臣の裁量によって検察官の人事に介入をすることが可能となり、検察に対する国民の信頼を失い、さらには、準司法官として職務と責任の特殊性を有する検察官の政治的中立性や独立性が脅かされる危険があまりにも大きく、憲法の基本原理である権力分立に反する。 

よって、当連合会は、違法な本件勤務延長の閣議決定の撤回を求めるとともに、国公法等の一部を改正する法律案中の検察官の定年ないし勤務延長に係る特例措置の部分に反対するものである。 
 2020年(令和2年)4月6日 
日本弁護士連合会
会長  荒  中