29日、東京都のコロナ感染の1日の死者は過去最高の9名になりました。
累積人数ベースの陽性率は40%という異常な数値を示し、致死率は15日の2・0%から2週間で3・0%(29日)と1%アップしこの先どこまで上がるのか見通せません。
慶大が入院予定者(首都圏と想定)を検査したところ感染率は6%でした。これは都民の60万人以上が感染している可能性を示していますが、実際に確認されている都内の感染者は4059名(29日)に過ぎません。公表されている数字は明らかに実態とかけ離れています。
目下の小池都知事はコロナ禍の鎮静に向けて派手な動きを見せていますが、考えてみると小池氏は安倍首相と共に、3月24日にIOC会長との間で東京五輪の延長が決まるまでは「コロナ禍」はどこ吹く風かとばかりに無視し続け、ついに首都圏にコロナの感染者を蔓延させた元凶でした。
金子勝・立大教授が「戦犯・小池知事を褒めそやす論調 愚かなメディアの大本営」とする手厳しい記事を出しました。
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金子勝の天下の逆襲
戦犯・小池知事を褒めそやす論調 愚かなメディアの大本営
日刊ゲンダイ 2020/04/29
コロナ禍をめぐる大手メディアの報道は、先の大戦中の大本営発表のようになっている。東京都の小池知事を褒めそやすような論調さえある。
小池は東京の医療崩壊の戦犯だ。先週はがん研有明病院や練馬光が丘病院でも院内感染が発生した。小池のブレーンである国立国際医療研究センターの大曲貴夫医師は、PCR検査の拡大は医療崩壊を招くと主張し、検査を制限してきた。ところが、結果は全く逆だ。検査不足が医療崩壊を引き起こした。厚労省のデータでは1月15日から4月21日までの検査数は8435件、そのうち陽性者数は3320件。陽性率は約4割に上る。全国平均10・3%の実に4倍である。最近は民間検査が増えていると言い訳するが、とても足りていない。慶応病院の入院予定者を検査したら6%の陽性者がいた。隠れ感染が院内感染を招いているのだ。
にもかかわらず、小池は検査数制限の実態も医療崩壊の現実も説明せず、対策も講じない。それどころか、永寿総合病院や中野江古田病院の事例では隠蔽が疑われる。中野のコールセンターの集団感染をめぐっては、発生から2週間も事実を隠し、消毒後に公表。それで感染者を追跡できなくなり、周辺の中野江古田病院や総合東京病院でも院内感染が発生した。
そもそも、「ステイホーム」の外出自粛でコロナ禍を収束させられるのか。一貫して失策を重ねている専門家会議は、「接触機会8割削減」を1カ月続ければ感染者が減ると喧伝しているが、具体的な根拠を示せない。むしろ欧米諸国のロックダウンでは感染が増加している。しかし、大手メディアは数々の失敗の検証をすることもなく、小池の責任逃れをただ垂れ流している。
米国や英国のように、初期段階で検査を怠り、感染拡大後に外出自粛に転じる戦略は間違いだ。それに対して、韓国、台湾、香港などの東アジア地域では感染をほぼ抑え込んでいる。膨大な検査の積み上げとGPSを利用した個別追跡。専用病棟建設などによって、感染者を隔離する政策を追求したからだ。
ところが、小池は夜の街に責任を押し付け、買い出し自粛を求める。自らの失敗を都民の努力不足にすり替える。布マスク配布の安倍首相にいたっては、まるで竹槍を配って防空壕に逃げ込め。かつての敗戦と同じパターンだ。安倍、小池、専門家会議は即刻退陣し、清新なリーダーと専門家の下で態勢を組み直す必要がある。
金子勝 立教大学大学院特任教授
1952年6月、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。法政大学経済学部教授、慶應義塾大学経済学部教授などを経て現職。慶応義塾大学名誉教授。文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」などにレギュラー出演中。近著「平成経済 衰退の本質」など著書多数。新聞、雑誌、ネットメディアにも多数寄稿している。