共産党の志位委員長は7日、国会内で記者会見し、新型コロナウイルス問題に関する「緊急事態宣言」の発出と政府の「緊急経済対策」について党の立場について述べました。
概略は下記のとおりです。
・最大の問題は安倍首相が自粛と一体の補償を拒んでいることであり、「緊急事態宣言」を発令する以上補償措置を行うことが必要
・首相はこの問題で“自粛要請による間接的な影響が甚大なためその全体を補償することは難しい”と述べているがそれは全く理屈にならないもので、甚大であればなおさら間接的な影響も含めて補償措置がとられるべきである
・個人に対する現金給付も、中小企業に対する現金給付も、「大幅な収入減」などの条件が付けられていて、困っている人々のなかに「分断」と「不公平」を持ち込んでいる。しかもどちらも一回こっきりでは生きていけないので毎月の継続的な補償が必要
・共産党は、すべての国民に1人10万円を迅速に給付する ▽自粛と一体に補償するという大原則のもとに抜本的・継続的な補償を行っていく ▽消費税を5%に緊急減税することを強く要求する
・医療崩壊を抑止するうえでも、まず「帰国者・接触者相談センター」を通さなくても検査ができるような仕組みにあらためること。医療施設についても「新型コロナ対応で収入が減っている、あるいは減少が予想される医療機関には財政的補償を行う」こと
また、安倍首相が衆院議院運営委で緊急事態条項をめぐって憲法審査会での改憲論議を呼びかけたことについて問われ、「新型コロナの問題を利用して、自分たちの改憲を進めようというのは言語道断のやり方で、コロナの問題のまさに党略的な利用」であると厳しく批判しました。
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補償拒否の姿勢あらためよ 感染拡大抑止、医療崩壊阻止のために
新型コロナ 志位委員長が会見
しんぶん赤旗 2020年4月8日
日本共産党の志位和夫委員長は7日、国会内で記者会見し、新型コロナウイルス問題に関する「緊急事態宣言」の発出と政府の「緊急経済対策」について、現時点での日本共産党の立場について述べました。
最大の問題は補償拒否の姿勢にある
現時点で、政府が感染の爆発的拡大を抑えるために、外出自粛の要請を強めるなどの措置を取ることは当然だと考えます。
最大の問題は、安倍晋三首相が、この期に及んで、自粛と一体の補償を拒んでいることにあります。
本日の衆参の議院運営委員会での質疑でも、この態度が一番の問題として浮き彫りになりました。これでは感染の爆発的拡大を抑えるうえでの実効性がないと言わなければなりません。この態度を根本的に改めて、自粛と一体の補償を宣言して実行することを強く求めたい。とくに、政府の責任で「緊急事態宣言」を発令する以上、政府の責任において補償措置を行うことがいよいよ急務になっていることを強調したい。
自粛要請の直接・間接の影響の全体を補償せよ
本日の質疑で、安倍首相はこの問題について問われて、“自粛要請による影響は直接的な影響だけではなく、間接的な影響もあり、こちらは甚大な影響になる、だからその全体を補償することは難しい”という論法を繰り返しました。
日本共産党の立場は、自粛要請による直接的な影響、間接的な影響の全体に対して補償措置を行うべきだというものです。間接的な影響が甚大だからできないというのは全く理屈にならない。甚大ならなおさら、間接的な影響も含めて補償措置がとられるべきだということを強く言いたい。
「緊急経済対策」の現金給付案――対象が狭く、不公平
政府の「緊急経済対策」についても、自粛と一体の補償を行うという立場が欠落しています。これが最大の問題です。そのためどういう矛盾が起きているか。二つの問題があります。
一つは、個人に対する現金給付も、中小企業に対する現金給付も、「大幅な収入減」などの条件付きになり、「線引き」が行われていることです。「線引き」が行われることで対象がきわめて狭くなり、多くの個人と事業者が切り捨てられる。新型コロナ問題で多くの人々が生活に困窮しているなかで、困っている方々のなかに「分断」と「不公平」を持ち込むというのは、絶対にやってはならないやり方です。
対象が狭まるという点では、たとえば、東京都23区で、夫婦2人・片働きのサラリーマンの場合、住民税非課税になるのは年収156万円以下に限られます。そうなると、年収700万円の方が350万円に半減しても現金給付の対象になりません。非課税ラインが156万円で、その2倍までしか対象にならないため、312万円以下に落ちないと、収入が半分になっても対象にならない。
不公平という点では、たとえば、単身者のサラリーマンの場合、年収300万円なら、149万円まで年収が下がれば30万円が給付されます。しかし151万円までしか下がらなければ、給付されない。そうすると逆転が起こります。
対象が狭く、不公平が生まれる。みんなが新型コロナで苦しんでいるときに、みんなが連帯しなければならないときに、とくに困窮している人々のなかに分断を持ち込むのは最悪のやり方です。
一回こっきりでなく、継続的な補償を
もう一つの問題は、政府の「緊急経済対策」で出されている現金給付は、個人に対する現金給付が1世帯30万円、中小企業に対する給付として200万円、100万円という数字が出てきました。どちらも一回こっきり。これでは生きていけません。毎月の継続的な補償が必要です。
“消費税問題を無視、すべて新型コロナのせい”は許されない
さらに、経済対策としては、消費税問題が一言も入っていません。消費税増税を無視し、すべてを新型コロナのせいにしようとしているという大きな問題があります。いまの経済危機の土台部分は、消費税10%による大不況です。そこに新型コロナの打撃が襲ってきた。「経済対策では消費税減税が一番」という強い声が起こっているのに、それをまったく無視しています。
日本共産党の提案――困っている方々に迅速に補償と支援を
日本共産党は、困っている方々に、迅速に補償と支援がいきわたるような施策を強く求めていきます。端的に次の3点です。
第一は、すべての国民への1人10万円の迅速な給付です。いま困窮している人々に最も迅速に現金を届ける必要があります。
第二は、自粛と一体に補償するという大原則のもとに抜本的・継続的な補償を行っていくことです。継続的ということが大事であり、収束するまで毎月やっていく。ヨーロッパはそういうやり方です。例えばイギリスでは、働く人も自営業者もフリーランスも、8割の所得を毎月、最大2500ポンド(33万円)まで補償する。毎月、収束するまでやっていくとしています。
第三に、経済対策としては消費税5%への緊急減税が必要です。
医療崩壊を抑止するうえで――二つの問題点をただせ
最後に、政府の「緊急経済対策」は、医療崩壊を抑止するうえでも、大きな問題点があります。
PCR検査について、「迅速な検査の促進」といっていますが、なぜ検査が進まないのか、どこに問題があるかの分析がまったくない。ですから解決策もない。ただやるといっているだけです。
どこに問題があるかというのは明瞭で、「帰国者・接触者相談センター」を通さないと、「帰国者・接触者外来」にまで行けない。そのため、医師が必要だと判断しても、圧倒的な方々がいまだに検査ができない。この仕組みに問題があります。「帰国者・接触者相談センター」を通さなくても検査ができるような仕組みにあらためる必要があります。
もう一点、「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」の創設が述べられていますが、中身が不明です。いま医療機関全体に対する緊急的な財政的補償が必要です。新型コロナ感染症の患者さんを受け入れる病院も、そうでない病院も、全体が大きな打撃を被っており、全体に対する財源的な補償が必要ですが、それが述べられていません。
病院の問題も同じ構図です。「新型コロナ対応で収入が減っている、あるいは減少が予想される医療機関には財政的補償を行う」という大原則を確立して実行することが大切です。これをやって初めて医療崩壊を食い止める道が開かれます。
補正予算案のどこが問題か
(政府の補正予算案について問われて)自粛と一体に補償を行うとの考えがないことが最大の問題です。それから、消費税減税が無視されていることも大きな問題です。そして規模があまりに小さい。かつてない規模だと言いますが、実際の財政支出は総額16・8兆円です。とてもではないが、今の危機に対応できる規模ではありません。
コロナ問題の党略的利用 改憲論議呼びかけ 志位委員長が批判
しんぶん赤旗 2020年4月8日
日本共産党の志位和夫委員長は7日、国会内で記者会見し、安倍晋三首相が同日の衆院議院運営委員会で緊急事態条項をめぐって憲法審査会での改憲論議を呼びかけたことについて問われ、「新型コロナの問題を利用して、自分たちの改憲を進めようというのは言語道断のやり方です。絶対に認めるわけにはいきません」と厳しく批判しました。
志位氏は、新型コロナ対策でいま問われているのは強制措置かどうかではなく、補償をするかどうかだと指摘し、「政府による自粛のさまざまな要請を実効あるものにするための最大の担保は補償です」と強調しました。
その上で「補償をしないことが問題になっているのであり、強制措置については、首相自身も『現実的ではない』と述べています」と指摘。「そんなときに、憲法を変えて、憲法の中に緊急事態条項を持ち込んで人権制約を憲法上も可能にするというのは、コロナの問題のまさに党略的な利用です」と厳しく批判しました。