日本におけるPCR検査数が圧倒的に少ないのは、国立感染研などの感染症学会の主流が検査の効果を認めず、厚労省の息のかかったメディアやコメンテーターが「検査不要論」を振りまいてきたことと、感染者数を低く抑えるのは政権にとっても好都合という事情からでした。検査を極力抑制する方針はいまも変わっていません。
しかし権威筋の主張であっても偽装は偽装です。行政がきちんと政策を打ち出すためには、何よりも実態を把握することが必須条件であって、「相談窓口」で100分の1とか数十分の1に絞った結果の感染数では全く基準にはなりません。政府や都の見解が「あやふや」で「場当たり的」なのは、偏に「(ある程度)正確なデータ」がないことに拠っています。
コロナの感染拡大を防止し重症化を阻止するうえでも徹底した検査が必要であるのは自明であって、それを否定する論法がどうして成り立つのでしょうか。
韓国はかなり早い時期から1日に2万件以上の徹底したPCR検査を実施し、感染者を見つけて隔離(病院以外の公共施設などを利用)することで感染拡大を防止した結果、感染者数は山を越えつつあり、致死率も約1・5%と低く抑えられています(日本は3%以上)。
ドイツもこまやかな地域医療体制にくわえ、週50万件の大規模検査により感染者の早期発見に力を入れた結果、約4万人の感染者に対し死者は約200人と致死率約0・5%と低く押さえられています。
いずれも医療崩壊を起こしていないどころか、韓国の事例は成功モデルとして欧米でも取り入れられているということです。
それに対して日本はいまだに「医療崩壊が起きる」の脅迫の下に検査を抑制しているため、この先一体どうなるのか全く見通しが得られていません。
いまなお一喜一憂の手探り状態というわけです。
志村けんさんが自宅にいるうちに重篤になり、入院したものの手遅れで亡くなった例や、阪神・藤浪選手らが「相談窓口」がPCR検査を拒否したのを押し切って検査を受けた結果陽性と分かり、それ以上の感染拡大の防止につながった例は、日本のPCR検査に関する方針が間違っていることを分かりやすく示しています。
LITERAが日本の新型コロナウイルス対策が色々間違っていることを指摘する記事を出しました。説得力があります。
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志村けんや阪神・藤浪選手が証明した「検査不要論」の嘘! それでも検査しない日本、安倍首相「死亡者が少ないから」は本当か
LITERA 2020.03.31
25日41人、26日47人、27日40人、28日63人、29日68人と急増してきた東京都の新型コロナ感染確認数。きのう30日は検体数が少なかったため13人と減少したが、きょう31日は78人とまた1日の最多を更新した。潜伏期間は約2週間とされており先の3連休での感染が数字に出てくるのは、まだこれから。そう考えると、まだ数字にあらわれていないだけで、感染爆発の危機はもうすぐそこに迫っているといえる。
この事態を引き起こしている最大の要因のひとつは、やはり検査数が圧倒的に少なく、検査体制の整備もほとんど進んでいないことだ。
安倍首相は1日8000件のPCR検査ができる体制を整えるとぶち上げ、28日の会見でも検査を増やすように指示していると言っていたが、この10日間の日本全体の検査人数を見ると、3月20日と24日の2日だけは3000人を超えていたが、21〜23日は1日100人前後。26〜28日は戻したが、それでも2000人に届いていない。そして、29日は300人弱、昨日30日は200人強。1日2万件以上の検査を実施していた韓国や週50万件の検査を行っているドイツとは雲泥の差だ。
しかし、こうした数になるのも当然だろう。安倍首相の説明とは全く違って、日本政府の検査を抑制する方針は全く変わっていないのだ。厚労省が「帰国者・接触者相談センター」に相談できる目安として「感染風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続いたり、強い倦怠感や息苦しさがある場合(高齢者や基礎疾患がある人、妊婦はこれらが2日以上つづいた場合)」という厳しすぎるハードルを打ち出したのは、2月17日のことだったが、それから1カ月以上たったいまもこの条件は生きている。それどころか、上記の条件に該当し、医師が検査すべきと判断した場合でも、保健所が検査不要として拒否する事案が相変わらず続発している。
また当初、海外渡航歴や感染者との接触歴の有無が条件とされており、とちゅう変更されたが、いまだに渡航歴や接触歴が重視されている自治体も少なくない。クラスター潰しに力を入れる一方、症状のある人の検査が十分に行われていない。
この結果、起きているのがいまの日本の状況なのだ。ここにきて、日本では感染を抑え込むどころか、感染者経路不明の感染者が増大し、感染爆発目前まで追い詰められているが、検査数を低く抑え込んできたことがその大きな要因になっていることは間違いない。
それを逆説的に証明したのが、阪神タイガースの藤浪晋太郎選手らのケースだ。彼らは厚労省のガイドラインにあるような発熱などがあったわけではなく、症状は臭覚障害・味覚障害だけだった。しかし、藤浪選手や診察に当たった医師はコロナ感染を疑い、検査を求めた。一旦は拒否されたが、再度交渉した結果、検査を受けることができたのだという。
なぜ条件に合致しないのに検査できたのかは不明だが、もし、このとき、保健所があくまで検査を拒否していたら、藤浪選手や食事会の参加者は隔離入院することも感染の自覚もなくそのまま日常生活を送り、感染をどんどん拡大させていただろう。チーム全体や球界全体にまで感染が広がった可能性もある。
そう考えると、藤浪選手らが検査を受けたおかげで、クラスター拡大が未然に防げたのである。藤浪選手らが陽性だと判明した結果、食事会という感染経路が浮かび上がり、他の感染者が多数見つかり、彼らの行動を制限することができた。また藤浪選手の報道をきっかけに同じ症状の人の、感染もいくつか確認されている。その結果、新たな感染の芽をつむことができたのだ。
しかし、現実には、藤浪選手のようなケースで検査はほとんど行われてこなかった。保健所に拒否されるか、あるいは軽症者が最初から検査を諦めてしまうケースが大半だ。その結果、感染に気づかないまま、日常生活を送り、どんどん感染を拡大させているのだ。感染が拡大すれば、当然重症者も増える。なかには、高齢者に接触し、重症、あるいは死に至ったケースもあるはずだ。
徹底した検査を行った韓国やドイツはピークダウンや致死率抑え込みに成功
実際、志村けんも「検査しない日本」の被害者かもしれない。志村は感染経路が判明していないというが、無症状者、もしくは軽症者から知らないうちに感染した可能性は高い。もし、広く検査を行っていれば、志村は感染しなくて済んだかもしれない。
さらに志村けんのケースはもうひとつ、「検査しない日本」の弊害を浮き彫りにした。志村は17日に倦怠感を訴え、19日に発熱・呼吸困難。訪問診断した医師の判断で20日に救急搬送、重度の肺炎と診断される。PCR検査を受け陽性が確認されたのは、すでに意識がなくなったあとの23日だった。
志村に限らず、感染者のうち2割もいるという重症者は急激に悪化している事例が多い。ところが、2日あるいは4日様子を見るという基準があるため、自宅で様子を見ているうちに、軽症から重症に進んでしまうケースが続出しているのだ。
こうしたケースを見れば、検査をしない方針がいかに日本で感染を拡大させ、重症化をまねいているかがよくわかるだろう。
一方、PCR検査を積極的に行なっている前述の韓国やドイツはどうか。韓国はかなり早い時期から、1日に2万件を超えるPCR検査を実施。徹底的に検査をし、感染者を見つけ隔離することで感染拡大を防止する戦略を取ってきた。ドライブスルー検査、ウォークスルー検査など工夫し、安全で効率的な検査をブラッシュアップしてきた。
その結果、一時期は感染者数が増え続けたが、すでにピークアウトしつつあり、致死率も約1.5%と低く抑えられている。しかも、韓国の検査戦略は、成功モデルとして、欧米でも取り入れられている。
ドイツも、こまやかな地域医療体制にくわえ、週50万件の大規模検査により感染者の早期発見に力を入れた結果、約4万人の感染者に対し死者は約200人、致死率は約0.7%と低くおさえている。
こうしたドイツや韓国の成功を受け、各国も積極検査に方針を転換した。フランスも重症者・濃厚接触者に重点を置いた検査から、検査範囲を拡大する方針に転換するという。
当初、積極的に検査や行動制限をしない集団免疫作戦を打ち出したイギリスも、大きな批判を浴びすぐ方針転換した。
正確な感染者データがないため、場当たり的な政策しか出せない日本
ようするに、検査の拡大は、世界的にも効果があることが実証され、いまやスタンダードとなっているのだ。にもかかわらず、日本だけはあいかわらず、検査数を抑え込み続けている。
この姿勢は、感染拡大や重症化を招いているだけではない。行政がきちんと政策を打ち出すためには、疫学調査が必要だが、日本は検査の母数が圧倒的に少ないため、正確な情報を伝えることができず、科学的根拠に基づいた政策を打ち出せなくなっている。政府や自治体は「諸外国と比べて、感染者数の増加のスピードを抑えられている」「一定程度、持ちこたえている」などとあやふやな見解を出しているが、その正誤を検証する材料もない。
その結果が唐突な全国一律休校などの場当たり的政策だ。もっと広く検査をしていれば、地域ごとに休校が必要か必要でないかの判断もできるが、それもないため、全国一律などという粗雑な施策になってしまったのだ。これからやろうとしている学校再開の判断でも、地域ごとの感染実態に応じてと言っているが、そんなデータはどこの自治体も取れていない。
今後、緊急事態宣言やロックダウンを行う場合も同様だ。正確な疫学調査をしていないため、その是非も、タイミングも、全て政治判断任せ。国民もそれが妥当かどうかチェックしようがない。
とにかく、 感染防止、重症化阻止、疫学調査、政策決定など、あらゆる面で、検査を拡大させる必要があることは自明なのだ。
ところが、日本ではこの期に及んでも、まだ検査不要論を叫ぶ声が後を絶たない。
その代表的な意見は「検査拡大すると医療崩壊する」というもの。軽症者まで病院に殺到したら、医療対応ができなくなり、病院での感染が拡大、イタリアのようになってしまうというのだ。
しかし、これ、完全に逆だろう。イタリアで医療崩壊がおきたのは、そもそも医療費大幅削減で医療体制が劣化していた上、かなり前から感染が広がっていたにも関わらず、きちんと検査をしなかったからだ。逆に、検査をあれだけやってもドイツは医療崩壊なんて起きていないし、韓国も初期に集中的に患者が出た大邱で危機状態になったが、それ以外ではまったく医療崩壊なんて起こっていない。
日本でも医療費削減で病床や人手が不足しているのなら、なおさら早く実態を掴み、感染数が増えた場合の体制を整えておかなければならない。国内のキャパシティで無理なら、韓国や中国、台湾など海外に支援を求めることだって検討すべきだろう。
だいたい、無症状者や軽症者が病院に殺到するというが、それを防ぐためには陽性者を全員、隔離入院させなければいいだけだろう。無症状・軽症者には病院ではない待機用の隔離施設を別途、確保すればいい。(家庭内感染も多いので自宅待機は避けたほうがいいし、やむを得ず自宅待機とする場合は2週間外出しないで済む行政のサポートが必要だろう)。それを提言しないで、医療崩壊を防ぐために、検査を実施せず、国民に感染を知らせないようにするというのは、ほとんど独裁国家のやり口と変わりがない。
安倍首相「間質性肺炎の死亡者には必ずPCR検査を実施」は本当か
もうひとつ、厚労省の息のかかったメディアや専門家、医療関係者の間では「感染者数が正確でないとかは関係ない。日本は死亡者が少ないのだから、いまのやり方で成功している」という意見もよく聞くが、これもまやかしだ。そもそも、検査をきちんとしていないのだから、コロナによる死亡者数が正確かどうかさえわからないからだ。
実は、安倍首相も28日の会見で「日本が持ちこたえている」根拠として、「死亡者が少ない」ことをあげ、「肺炎になっている人は最終的にCTを撮る。CTで間質性肺炎の症状が出た死亡者はすべてPCR検査をしているから、死亡者の数は正確」と言い張っていた。
しかし、これ、本当なのか。そもそもCTのない場所で死亡する患者もいるのだから、肺炎になっている人が全員、CTを撮るとはかぎらない。しかも、いまは、助かる見込みのある重症者に対してすらPCR検査をしていないのだ。それが間質性肺炎の死亡者全員にPCR検査を完璧に実施しているなんてありえないだろう。
厚労省結核感染症課の担当者は、毎日新聞の取材に対して、「生前に新型コロナウイルス感染症の病状があった遺体などについては、医師が感染症法に基づき、地域の保健所を経由して都道府県知事に届け出る義務があります。公表している死者数と実際の死者数が乖離しているという状況はあり得ません」と答えていたが、一方で、「誤嚥性肺炎なども含め、すべての肺炎患者の方の遺体をPCR検査しているわけではありません」とも述べている。
これはようするに、医師が一般的な肺炎と判断すれば、スルーされてしまうということだろう。実際、ワイドショーでも複数のコメンテーターが、発表された死者数にカウントされていない感染者がいる可能性を指摘していたし、本サイトが取材した感染症の専門家もこう話していた。
「間質性肺炎の死亡者を全員、PCR検査してるとは信じられない。実際は、新型コロナによるものなのに、病院が届け出せず、肺炎による死亡として処理されているケースもあるはず。来年、統計を見たら、それがわかるんじゃないか。肺炎が死因で亡くなる人は毎年、9万人ほどだが、今年はそれが突出して増えている可能性もあると思う」
復帰した玉川徹はさっそくドイツの成功を例に「日本も検査すべき」
それにしても、いったいなぜ、彼らはここまでして、検査しないことを正当化したがるのか。
「自分たちの後手後手対応や失策、検査体制の不備を認めたくない政治家、自治体首長、厚労省官僚が実態を隠したがっているというのはもちろんですが、加えて、日本は感染症学会の主流が検査不要論で、検査の効果を頑として認めないというのが大きいと思う。それが厚労省の官僚に言い訳を与え、厚労省の息のかかったメディアやジャーナリストが厚労省に乗っかって『検査不要論』を振りまくという構図になっている」(医療ジャーナリスト)
しかし、騙されてはいけない。繰り返すが、検査拡大が感染抑え込みにつながるというのは、海外の事例が証明しているのだ。
『羽鳥慎一モーニングショー』で検査拡大を一貫して主張してきた玉川徹が昨日、休みから復帰し、こう明言していた。
「やっぱり検査数が少ない。今になってほぼ確定してきましたけど、アメリカはなんでこんなに感染者数が増えて大変な状況なっているのかっていうのは、アメリカのなかでも分析が行われてやっぱり検査が足りなかったと。感染が広がり始める初期での検査が足りなかった。フランスも方針を転換しました。それからドイツは致死率が低いです。今のところ致死率が0・78%。日本は3%以上の致死率。これは日本の場合、検査が少ないから致死率が高いっていうのもあるんだけども、韓国と比べてもドイツは低い。何でかってドイツは徹底的に検査をやったと。軽症者も隔離していると。その結果として致死率が低く抑えられていると言っている。だから検査をやらなきゃいけないんですよ。日本は検査ができるのにもかかわらず、いま、絞っています。どっかでこれを変えるべき」
「医療崩壊を起こさないためには、どうすればいいかって、トリアージをやって軽症者を隔離するってことが大事。入院はしないけど隔離させる。そのためには軽症者を隔離するための施設が必要。それから感染者が増えれば重症者も増える。その意味で言うと、人工呼吸器が圧倒的に少ない。日本の技術力があればつくれます。この3点です。海外は遅かったと、いま反省している」
今からでも遅くない。政府や自治体は広く検査を行う方針に転換すべきだ。メディアやネットでは自粛を無視する若者への非難が広がっているが、そんなことに血道をあげるより、検査拡大を求め、実現させるほうが、自粛を促すことにも大きな効果があるはずだ。(編集部)