2018年9月17日月曜日

17- 朝鮮戦争「終戦宣言」で起きること (東京新聞)

 事実上の終戦を迎えてから既に65年も経っている「朝鮮戦争」が、実は終戦していない(休戦状態にある)というのは誰が考えてもおかしな話です。
 大統領になるまではそんなことに関心のなかったトランプ氏は、朝鮮戦争が休戦状態であることを知って「自分の手で終わらせる」と話したということですが、それが当たり前の感覚です。
 朝鮮戦争を機に1950年、ソ連が欠席した国連安保理で結成が決議され国連軍の名の下に、休戦状態にあることを口実にいまだに韓国国内に居続けている米軍にとって、たとえ政治的な宣言に過ぎない「終戦宣言」であっても、在韓米軍の縮小が要請されることになるから反対するというのは、余りにも身勝手な考えです。米国の世界戦略はこれに限らず不合理で独善的なものだらけです。
 
 また安倍首相のように、核・ミサイルの廃棄が完了する前に終戦宣言を行うべきではないというのも言いがかりであって、それは米の体制派の意向には沿っていても、ホワイトハウス内で孤軍奮闘しているトランプ氏の意向には反するものです。ホントに「友だち甲斐のない」話です。(^○^)
 
 北朝鮮公的メディアは在韓米軍の撤退を主張していますが、外交交渉では「終戦宣言」とは関係なく、米国や韓国側に、米軍の韓国駐留を認める考えを伝えているということです。
 この「終戦宣言」の問題で硬直しているのは米国の方であって、金正恩氏の方が現実的であるということです。第一、6月12日のトランプ・金正恩会談後、北は一定の行動を実行したにもかかわらず、それに何の対応も見せなかったのは米国の方です。
 
 東京新聞が「週のはじめめに考える 『終戦宣言』で起きること」について考察しました。
 註)「週のはじめに考える」は、毎週日曜日に出される東京新聞の社説の枕詞です。テーマの大きさや視野が普段のものとは一味違います。
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社説 週のはじめに考える 「終戦宣言」で起きること
東京新聞 2018年9月16日
 米国が、一九五三年に休戦となった朝鮮戦争に「終戦宣言」を出すことをためらい、米朝間の協議が停滞しています。その理由を考えてみましょう。
 朝鮮戦争は、米軍を中心とした国連軍と、中国の人民義勇軍・北朝鮮軍の三者によって休戦協定が結ばれました。
 それから六十五年がたち、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と初めての首脳会談に臨んだトランプ米大統領は、この戦争を終結させることに意欲を示しました。
 ホワイトハウス内情に通じた人によれば、トランプ氏は朝鮮戦争が休戦状態であることを知って、「自分の手で終わらせる」と話していたそうです。
 
◆米国は非核化を優先
 具体的には、まず「終戦宣言」を出すことです。もう戦争をしません、平和的に協力しましょうという意味を込めた「宣言」です。
 ところが、最近になって米国は、これに応じようとしません。北朝鮮の非核化を見極めたいと主張しているのです。
 日本も非核化が実現する前に終戦宣言を出すことに、反対の立場を取っています。
 法的な拘束力がある「平和協定」を結ぶのではなく、政治的な宣言である「終戦宣言」をどうして心配しているのでしょうか。
 まず、「北朝鮮はもう敵ではない」と宣言すれば、状況が悪化した場合でも、米国が北朝鮮に軍事的圧力をかけにくくなるということが挙げられます。
 米朝間の交渉には「根本的に信頼が欠如している」(ブルックス在韓米軍司令官)ということです。それゆえ、宣言を出す前に、北朝鮮は、非核化の進め方を示した日程や内容を提示するなど、もっと踏み込んだ措置が必要だと考えているのです。
 二つ目は、この戦争を契機に結成された「国連軍」の存在です。一九五〇年に、ソ連が欠席した国連安全保障理事会で、国連軍の結成が決議されました
 
◆国連軍を温存したい
 異例な形の国連軍ですが、北朝鮮を「平和の破壊者」と規定し、北朝鮮が韓国に侵攻した場合、国連は「正義の軍」として、対抗することができるのです。今も有効である、この安全保障の枠組みを手放したくないのでしょう。
 また国連軍がいなくなれば、海上の南北境界線である北方限界線(NLL)が無効となります。NLLは五三年に、国連軍が設定した線です。北朝鮮側に大きく食い込み、南北がたびたびトラブルを起こしてきました。
 最後に、終戦宣言に応じた途端に、現在韓国に駐屯する米軍の扱いが課題となります。各国の利害がからむ微妙な問題です。
 緊張緩和が進んだのですから、将来的に在韓米軍を縮小するのか、さらには撤退するのか。日本へのどんな影響があるのかも関心を集めるでしょう。
 在日米軍に関する著作がある、NPO法人「ピースデポ」特別顧問、梅林宏道さんは、「在韓米軍の縮小は不可避」と話します。
 北朝鮮の脅威が消えても、米軍が現状維持では「狙いは中国牽制(けんせい)だ」として、中国と韓国の関係が難しくなります。
 しかし、「在韓米軍の完全撤退はありえない」とも梅林さんは言います。北朝鮮は、中国の影響力が大きくなり過ぎることを警戒しており、米軍に「平和維持軍」の役割を期待しているからです。
 北朝鮮は、公的メディアでは、在韓米軍の撤退を主張していますが、外交交渉では、米国や韓国側に、米軍の韓国駐留を認める考えを伝えています
 正恩氏は最近、韓国の特使団に対して、終戦宣言が実現しても、在韓米軍の撤退は必要ないとの考えを表明しています。
 在韓米軍が縮小、削減されたら、米国と韓国の軍事同盟にひびが入る。その分、沖縄をはじめとする在日米軍基地は増強され、九州が対中国の最前線になるという主張があります。
 しかし、「在日、在韓米軍はもちろん相互に補完しあう関係ですが、過去の規模見直しの時期や内容を見ると、韓国と日本ではそれぞれ別の理由で行われています」(梅林さん)。
 
◆変化を過度に恐れず
 つまり、終戦宣言が出たことで、突然、朝鮮半島と日本で、米軍の役割や機能が一気に変わってしまうとは考えにくいのです。
 もちろん、北朝鮮が非核化に向け具体的に動くことが前提です。正恩氏は、「朝鮮半島の非核化を、トランプ氏の一期目の任期に実現したい」とも語っています
 楽観は禁物ですが、悲観もせずに実行を見守りたい。
 関係国が終戦に前向きになっています。変化を過度に恐れず、朝鮮戦争を、一日も早く完全な形で終わらせなければなりません。