安倍政権下で、生活の苦しさを示すエンゲル係数は2・2ポイントも悪化しました。総務省家計調査によればエンゲル係数は、06年から12年までは23%台で安定していましたが、第2次安倍政権発足(12年12月)後 急上昇し、13年は23・6%、14年24・0%、16年25・8%、18年25・8%で、17年は0・1%分改善しましたが現在は再び上昇傾向です。因みに海外では米国15%、ドイツ18%、英国20%で、日本は際立って劣悪であることが分かります。
アベノミクスは官製相場をつくり出し、大企業と富裕層こそ潤いましたが、庶民の生活は苦しくなりました。ワーキングプア層は年々増大し日本の貧困問題は深刻です。
安倍首相は「株高」と「求人倍率」を根拠に、日本は好況にあるなどと高言していますが、愚かなことです。
そんな中で、加藤勝信厚労相は4日、生活保護利用者・同支援団体、日弁連などの反対を押し切って「生活扶助」の引き下げを10月から実施することを告示しました。
今回の削減は「一般低所得世帯(年収の低い方から10%の世帯)」の消費実態と比較・均衡させる」ことを根拠にしています。
しかし日本の生活保護は、生活保護基準を下回っていても、行政窓口が兄弟や親戚から援助を受けることを要求するなどして生活保護申請を受付けなかったりすることで、捕捉率は、所得だけで判定すると1~2割、資産を考慮しても2~3割にとどまっています。
要するに残りの7~8割は、とても貧しい生活水準のまま放置されているわけなので、そのゾーンの所得レベルを基準にして給付のレベルを引き下げるというのは、そもそも根本的な間違いです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
生活保護引き下げ告示 厚労相 反対の声を無視し強行 来月から
しんぶん赤旗 2018年9月5日
加藤勝信厚生労働相は4日、生活保護のうち食費など日常生活費に充てる「生活扶助」の引き下げを10月から実施することを告示しました。生活保護利用者や支援団体、日本弁護士連合会(日弁連)などが反対する声を上げていましたが、これを無視して強行しました。
安倍政権は生活扶助費を今年10月から3年かけて段階的に減らし、全て実施すれば予算規模では国と地方合わせて年額210億円が削減されます。
厚労省の試算では、生活保護を利用する世帯のうち約7割で生活扶助費が減額されます。減額幅は最大5%で、都市部に暮らす「夫婦と子ども2人の世帯」では年10万円以上も少なくなるケースがあり、多くの子育て世帯の家計を直撃します。
単身世帯では約8割が減額。厚労省が示した生活保護基準をもとに試算すると、都市部の単身世帯はほとんどの世帯で減ることになります。
生活保護基準は、憲法25条で保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を具体化するものです。
生活保護費の削減は、安倍政権発足直後から連続で行われており、今回の削減計画が明らかになると利用者からは「これ以上減額されたら、人間らしい暮らしはできなくなる」と悲鳴が上がり、削減計画の撤回を求める運動が広がりました。通常国会では、日本共産党や立憲民主党などの野党が共同し、削減凍結を盛り込む法案を提出しました。
また、今回の削減は「一般低所得世帯」(年収の低い方から10%の世帯)の消費実態と比較・均衡させる手法(=水準均衡方式)によるものです。同方式に対しては厚労省社会保障審議会の部会が「最低生活保障基準を満たすものと言えるのか」と報告書で疑問を呈するなど、専門家からも異論が噴出していました。
生活保護費削減に批判の声 子どもの貧困対策に逆行
しんぶん赤旗 2018年9月5日
加藤勝信厚生労働相が4日、生活保護費削減を10月から実施すると告示したことに対する批判の声を紹介します。
名古屋市立大准教授 桜井啓太さん
今回の見直しは2013年に続く大幅な引き下げです。最も引き下がった場合、13年から、15%近く引き下げになる。保障されるべき「健康で文化的な最低限度の生活水準」が侵されることになると危惧しています。
生活扶助だけでなく、今回は加算の多くも引き下げです。母子加算では最大2割の減額。児童養育加算については、高校生にも拡充したと政府は誇っていますが、3歳未満への支給額は、これまでの1万5千円から5千円へ、1万円も削減されます。子どもの貧困対策にも逆行するものではないでしょうか。
捕捉率が低い問題を放置したまま、所得の低い一般世帯と比較して扶助基準を引き下げるのでは、経済が停滞し、格差の拡大や貧困世帯が増える状況では、保護基準は下がり続けることになります。
性急な引き下げではなく、科学的根拠とともに当事者の意見も大事にしながら、あるべき水準を決めていくべきです。
全生連「人権侵害やめよ」
厚生労働省が10月からの生活保護基準引き下げと、改悪生活保護法の施行を告示したことを受け、全国生活と健康を守る会連合会(全生連・安形義弘会長)は4日、抗議声明を発表しました。
全生連は、生活保護基準の引き下げは生活保護利用者に耐えがたい苦しみを押し付け、年金や最低賃金などに連動して国民の最低生活水準(ナショナル・ミニマム)を切り下げるものだとして、撤回を求めてきたと強調しています。
また法改悪で、生活保護利用者だけに後発医薬品の使用を義務づけ、払いすぎた保護費返還の扱いを月々の保護費から天引きを強制することは、保護利用者の人権を侵害する差別だと指摘。「生活保護基準引き下げと生活保護法改悪を許さず、国民の人権と平和的生存権を守る生活保護制度への改善を求め、全力を挙げる」と決意を述べています。