沖縄県は31日、辺野古の米軍新基地建設に関する仲井真前知事による埋め立て承認を撤回しました。
謝花副知事は「埋め立て承認撤回は、辺野古に新基地は造らせないという翁長知事の強く、熱い思いをしっかりと受け止めた上で、法に基づき適正に判断したもの」と語り、撤回に至った3つの要因を説明しました。。
これにより埋め立て工事は法的根拠を失い中断されます。今後6カ月以内に撤回の取り消しを求めて提訴が可能なので、いずれ国と裁判闘争になるものと思われます。
植草一秀氏は「美ら(ちゅら)海壊し 基地造る 暴政止める 弔い選挙」と題するブログで沖縄知事選についての考察を行いました。
そのなかで、安倍内閣は撤回問題を法廷闘争に移行させ、辺野古米軍基地建設の是非を知事選争点からずらすことを目論んできたものの、翁長雄志前知事が急逝し、知事選が翁長知事の弔い合戦になったことで目算が狂ったとするとともに、政権側はなおさら「経済問題」に争点を転化しようとするだろうとしています。
そして承認撤回については、翁長前知事は前回の知事選前・選挙中・選挙後を通じて、「選挙で示される民意が撤回の根拠になる」ことを明言していたが、結局民意を根拠にする撤回に踏み切らなかったとし、同じ「撤回」でも、手続き上の瑕疵を理由とする「要件撤回」と沖縄県民の意思を根拠とする「公益撤回」では、意味も重みも異なるので、玉城候補が新知事に選出された場合には、改めて、沖縄県の主権者の意思を根拠にした埋め立て承認撤回を行うべきであると述べています。
日刊ゲンダイが「玉城氏がWスコア優勢? 沖縄知事選で早くも始まった情報戦」と題する記事を出しましたので、その抜粋も併せて紹介します。
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沖縄県が埋め立て承認撤回 辺野古 工事の法的根拠失う
翁長氏の思い受け、適正判断
しんぶん赤旗 2018年9月1日
沖縄県は31日、名護市辺野古の米軍新基地建設に関する仲井真弘多前知事による埋め立て承認を撤回しました。同日付で防衛省沖縄防衛局に「公有水面埋立承認取消通知書」を手渡しました。これにより埋め立て工事は法的根拠を失い、中断されます。日本共産党の小池晃書記局長は会見し、「断固支持する。ただちにすべての作業を全面的にやめるべきだ」とのべました。
撤回は翁長雄志知事が亡くなる前に表明していたもの。県は撤回に向けて事業者である沖縄防衛局の言い分を聞く「聴聞」を8月9日に実施していました。
撤回に関する権限を引き継いでいた謝花喜一郎副知事は会見で、「聴聞」の調書と報告書について検討を行った結果、
▽埋め立て承認に付した留意事項に基づく事前協議を行わずに工事を開始したという違反行為があり、行政指導を重ねても是正しない
▽軟弱地盤、活断層、高さ制限及び返還条件などの問題が承認後に判明した
▽承認後に策定したサンゴやジュゴンなどの環境保全対策に問題があり環境保全上の支障が生じることは明らかと認められた
と指摘。「違法な状態を放置できないという法律による行政の原理の観点から、承認取り消しが相当であると判断した」と説明しました。
謝花氏は「翁長知事は就任から辺野古新基地建設阻止を県政運営の柱にし、県民のために自らを投げ打ち、まさに命を削り、その実現に向け取り組んできた」と述べ、埋め立て承認撤回は、「辺野古に新基地は造らせないという翁長知事の強く、熱い思いをしっかりと受け止めた上で、法に基づき適正に判断したもの」と語りました。
質疑応答で知事選の告示を9月13日に控えていることから、このタイミングでの撤回は「政治的判断では」と問われましたが、謝花氏は否定し「慎重に検討を重ねた結果、行政手続きとして行った」と強調しました。
県の撤回通知を受け、小野寺五典防衛相は記者団に対し、「非常に残念だ。沖縄防衛局が必要な法的措置を取る」と述べました。県によれば、今後6カ月以内に撤回の取り消しを求めて提訴が可能です。
美(ちゅ)ら海壊し 基地造る 暴政止める 弔い選挙
植草一秀の「知られざる真実」 2018年9月 1日
沖縄県が埋め立て承認を撤回した。
急逝した翁長雄志知事が着手した撤回の手続きを踏襲したものである。
安倍内閣は直ちに法的な対抗措置を取るもの見られる。
撤回問題は法廷闘争に持ち込まれることになる。
9月13日告示、9月30日投開票の沖縄県知事選には沖縄県政与党から自由党衆議院議員の玉城デニー氏が立候補する。
他方、国政与党である自公サイドは宜野湾市長の佐喜眞淳氏を擁立することをすでに決めている。
県知事選は事実上の一騎打ちの闘いになる。
この選挙は翁長雄志前知事が急逝したことにより、前倒しで実施されることになったもの。
安倍内閣は撤回問題を法廷闘争に移行させ、辺野古米軍基地建設の是非を知事選争点からずらすことを目論んできた。
しかし、翁長雄志前知事が埋め立て承認撤回の手続きに着手した時点で急逝し、知事選が翁長知事の弔い合戦になったことで目算が狂った。
それでも、佐喜眞候補は辺野古米軍基地建設の是非を明確にしないまま選挙に臨む姿勢を示しており、知事選争点を基地問題ではなく、経済問題に差し替えようとする意図は残存しているものと考えられる。
今回の埋め立て承認撤回は、防衛省沖縄防衛局による環境保全措置に問題があることを理由とするもの(要件撤回)であり、2014年11月の知事選で辺野古米軍基地建設を拒絶する民意が示されたことを理由とするもの(公益撤回)ではない。
翁長前知事は前回知事選の前から、そして選挙中、選挙後を通じて、選挙で示される民意が撤回の根拠になることを明言していたが、選挙で示された民意を根拠にする撤回に踏み切らなかった。
同じ「撤回」でも、手続き上の瑕疵を理由とする要件撤回と沖縄県民の意思を根拠とする公益撤回では、意味も重みも異なることになる。
佐喜眞候補に対しては自公に加えて維新が支援の方針を決めている。
佐喜眞氏は自公維が支援する候補になる。
このうち公明党は、辺野古米軍基地建設について表向きは反対の意思を表明している。
しかし、佐喜眞氏が当選する場合に佐喜眞氏が辺野古米軍基地建設を容認するであろうことは疑いようがない。
ここには重大な矛盾がある。
「不幸の原因は矛盾にある」と言われる。
実態としては辺野古米軍基地建設容認であるのに、沖縄の主権者に対して、その事実を正確に伝えず、あいまいな言辞を示すことはきわめて不誠実な姿勢である。
他方、玉城デニー候補は立憲民主、国民民主、共産、社民、自由の国政野党5党の支援を受ける。
国政の対立図式がそのまま県知事選の基本構図になる。
玉城候補は佐喜眞氏とのスタンスの違いを明確にするために、新知事に選出された場合には、改めて、沖縄県の主権者の意思を根拠にした埋め立て承認撤回を行うべきである。
今回知事選の最大争点を辺野古米軍基地建設の是非と位置づけ、沖縄の主権者の判断を仰ぐことが望ましい。
佐喜眞候補は基地問題が争点にならないとするなら、辺野古米軍基地建設阻止の方針を明確に公約に示すべきだ。
あいまい戦術でのらりくらりとかわし、選挙後に基地建設容認に転じるような行動はきわめて不誠実である。
昨年10月の衆院総選挙比例代表選の政党別得票状況は以下のとおりである。
自公新 302,655
立希共社 325,983
自由党は比例代表選挙に参加していないから、自由党支持者の投票は他党得票に含まれている。
国政与党系政党への投票が30.3万票。
国政野党系政党への投票が32.6万票である。
オール沖縄陣営の保守系勢力が脱落したことで、オール沖縄陣営の得票減が懸念されているが、保守系票が脱落しても、基礎票において国政野党系得票が国政与党系得票を上回っている。
札束でほおを叩いて沖縄をひざまずかせる安倍内閣の基本姿勢にNOを突き付ける主権者が大同団結、結集すれば、国政与党系候補を打ち破ることができる。
「美(ちゅ)ら海壊し 基地造る 暴政止める 弔い選挙」
に、沖縄のアイデンティティーに基づいて結集する主権者は、必ず勝利しなければならない。 (以下は有料ブログのため非公開)
玉城氏がWスコア優勢? 沖縄知事選で早くも始まった情報戦
日刊ゲンダイ 2018年8月30日
(前 略)
「民間の調査会社の情勢調査が出回っています。調査日は不明で、玉城氏53%、佐喜真氏26%、未定20%だそうです。他に、日本維新の会の調査結果だとして、玉城氏57%、佐喜真氏21%という数字もあります。いずれも玉城氏がダブルスコアの優勢ですが、維新は自公とともに佐喜真氏を推薦する。佐喜真陣営を引き締め、玉城陣営を油断させるための情報かもしれません」(地元記者)
ただ、出典のはっきりした調査もある。選挙情報サイト「選挙ドットコム」によれば、先週24日の数字では玉城氏が大きく先行。未定者は2割だったという。
「投票日の1カ月前なら未定者がもっと多いのが通常で、2割は少ない。翁長雄志知事が死去し、その後継として玉城さんをクローズアップする報道も多いので、玉城さんを後押しするムードがあるからではないでしょうか」(選挙ドットコムの増沢諒編集長)
(後 略)