2018年9月1日土曜日

自民党が総裁選報道に“圧力文書”を配布(詳報)

 自民党の総裁選管理委が総裁選という「私」の選挙で、新聞・通信各社に対し「公平・公正な報道」を求めました。「求める」分には自由とも言えますが、そうしたものは本来報道各社の良識に任せられるべきものです。それを野田毅委員長名で、記事内容や写真の掲載面積にいたるまで「必ず各候補者を平等・公平に」扱うように要求するというのは、干渉というべきものです特に政権と適正な距離を持たない日本のメディアに対してはそうです。
 
 そうであるならば10日以降に予定されている安倍氏の外遊を報じるに当たっては、常にそれと同じ面積と字数で石破氏の動静についても報じなくてはなりませんが、選管委は本当にそんな風に考えているのでしょうか。そんなことはあり得ず、単に、石破氏を単独で記事にすることは「許されない」という派利派略に基づいた干渉に過ぎません。
 そもそも本当に「党」の選管委なのか、そのことが問われます。
 
 この件については下記記事のリードの部分でも触れましたが、日刊ゲンダイが「総裁選の報道めぐり 自民党公平・公正要求の支離滅裂」のタイトルで取り上げましたので、「詳報版」として紹介します。
 
 いずれにしても安倍首相に求められているのは、そんな情けない干渉をする一方で、石破氏が求めた政策テーマごとの討論会を拒み、記者会見を含め質問に答える形式を極力避けるなどして逃げ回るのではなく、堂々と論戦を受けて立つことです。
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総裁選の報道めぐり 自民党「公平・公正」要求の支離滅裂
日刊ゲンダイ 2018年8月31日
 “圧力バカ”を絵に描いたような話だ。自民党が総裁選の扱いについて、新聞・通信各社に「公平・公正な報道」を求める文書を配布した。その注文の仕方は非常に細かい。
  総裁選管理委員会の野田毅委員長名で配った文書は、記事内容や写真の掲載面積にいたるまで「必ず各候補者を平等・公平に」扱うように要求。各候補のインタビューの掲載日が異なる場合は、別の候補の名前も書けとまで注文を付けた。
 
  配布は28日で前日と当日に読売、日経、共同通信、産経が世論調査の結果を発表。いずれも「次の総裁にふさわしい人」で、石破元幹事長の支持率が安倍首相を猛追し、差は全て1桁台だ。安倍応援団の大新聞でも「僅差」の結果に、またも周辺が圧勝戦略を描く安倍首相に忖度。石破猛追は報じ方のせいだとの難クセで、圧力文書を突きつけたのは想像に難くない。
 4年前の総選挙でも、自民党は安倍首相の意向をくみ、放送局に関連番組のゲストやテーマ選び、街の声の扱い方など詳細に項目を挙げ「公正な報道」を求める文書を送りつけた。当時も「前代未聞の報道圧力」と批判されたが、懲りていない。
 
 そもそも「公平・公正」を求めるほど、この総裁選で安倍首相は報道に値する行動を取っているのか。石破氏が連日のように記者会見を重ねる一方、安倍首相は“逃げ恥”作戦を徹底。石破氏が求めた政策テーマごとの討論会を拒み、記者会見を含め質問に答える形式を極力避け続けている
 
■「器が小さすぎる」
 最優先の地方行脚も「講演は当たり障りのない話だけの“独演会”」(ある地方の党員)で、中身ゼロ。地方議員の要望に珍しく耳を傾けると、「ピンと来ないのか、『そうだよね』と漏らす程度の反応」(自民党関係者)というありさまだ。
 
「安倍さんは総裁候補以前に一国の首相です。一挙手一投足がメディアに注目されるのは当然。討論から逃げ、露出を控え、考えもロクに伝えずに『公平・公正』な扱いだけを求めるのは器が小さ過ぎます。トランプ米大統領に『真珠湾攻撃を忘れないぞ』と伝えられたとする米紙報道も、総裁選中のロシア訪問も、大きく扱えば不平等なのでしょうか。支離滅裂な政治介入を突き返すべきなのに、メディアの批判報道は少ない。だから、自民党にナメられるのです」(法大名誉教授・須藤春夫氏=メディア論)
 へそで茶を沸かす圧力文書は日刊ゲンダイには届いていないが、当然これまで通りの姿勢で総裁選を報じさせてもらう。