2018年9月4日火曜日

04- 再来年のサマータイムは「不可能」 IT改修に4年 3000億円

 2020年の東京五輪・パラリンピックの暑さ対策の一環として、一部で「サマータイム」の導入の声が出ている中、IT(情報技術)機器にどのような影響が出るかを専門家が話し合うシンポジウムが開かれ、準備期間が短すぎるなどとして反対する意見が相次ぎました。
 立命館大の上原哲太郎教授は基調講演で「システム改修には4年は必要」として、20年の実施は「不可能だ」と述べました。また全体の改修費用は3000億円と試算しました。
 IT企業の業界団体の別所直哉・政策委員会委員長は「システム面の課題に目を向けている人は少なく、このまま実施されれば大きな事故が起きるのではないかと心配している」と、拙速な実施に反対しました。
 
 自民党はサマータイムを採用する場合、議員立法を考えていますが、情報法制研究所は近く、議論内容を自民党に伝えることにしています。
 東京新聞の記事を紹介します。
 
 それとは別に日刊ゲンダイは、EUが現在実施しているサマータイムは加盟各国から廃止への動きが拡大したため廃止の方向にあること、韓国でも「ソウル五輪」の時、サマータイム制度導入したものの、評判が悪く2年で廃止となったことなどを伝えています。
 日刊ゲンダイの記事を併せて紹介します。
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2年後のサマータイム「不可能」IT改修に4年3000億円
東京新聞 2018年9月3日
 二〇二〇年東京五輪・パラリンピックの暑さ対策として政府が検討している「夏時間(サマータイム)」について、ITに詳しい学識者が二日、東京都内で検討集会を開いた。夏だけ時間を早めるためには、多くの時間と費用をかけて社会全体のITシステムを改修しなければならず、二年後の実施は難しいとの意見が相次いだ。 (吉田通夫)
 
 集会は、情報法やITを専門とする学者や企業関係者でつくる「情報法制研究所」が主催し、約百二十人が集まった。
 立命館大の上原哲太郎教授は基調講演で「システム改修には四年は必要」として、二〇年の実施は「不可能だ」と指摘した。企業や自治体のコンピューターシステムの時刻設定は、自動だったり手動のタイプが残っていたりと複雑だからだ。時刻を設定するタイプの家電にも対応しなければならず、全体の改修費用は三千億円と試算。コンピューターウイルス対策ソフトの自動更新といった決まった時間に作動するプログラムに、不具合が生じる可能性などの弊害にも触れた。
 
 会場に集まったシステム会社の社員らからも「為替など国際的にやりとりするシステムでは、海外側にも日本の時差を認識するよう設定を変えてもらわなければならず、非常に時間がかかる」などと懸念する声が相次いだ。
 IT企業の業界団体「日本IT団体連盟」の別所直哉・政策委員会委員長は「システム面の課題に目を向けている人は少なく、このまま実施されれば大きな事故が起きるのではないかと心配している」と、拙速な実施に反対した。
 情報法制研究所は近く、議論内容を自民党に伝えることにしている。
 
 
EUはサマータイム廃止へ それでも安倍政権は導入するのか
日刊ゲンダイ 2018年9月2日
 やっぱり、相当ヒドイ制度だということだ。日本が導入を検討しているサマータイム制度を、EUは廃止することになりそうだ。EUのユンケル欧州委員長が31日、廃止の意向を表明した
 EUは現在、3月の最終日曜日に時計を1時間進め、10月の最終日曜日に元に戻す制度を加盟28カ国に義務づけている。しかし、健康を害するため、加盟各国から廃止を訴える動きが拡大。フィンランドが廃止を提案していた。
 
 欧州委がEU市民にアンケートをした結果、460万件の意見のうち、84%が「廃止支持」だった。よほど、サマータイムにウンザリしていたということだ。ユンケル委員長は「何百万人もの市民が、もう時間を変更したくないと言っている。欧州委は彼らの言う通りにする」と表明した。
 
 欧州市民がサマータイムに「ノー」の意思表示をしたのも当然だ。利点はまったくないからだ。心身の健康をむしばみ、事故が増えることが分かっている。
 なのに、安倍政権は、2020年東京五輪のために「2年間限定」で、日本にも導入しようとしているのだからどうかしている。
 韓国でも1988年の「ソウル五輪」の時、サマータイム制度が導入されたが、評判が悪く、やはり2年で廃止となっている。
 
 日本でも、戦後、GHQの命令で1948年から導入されたが、51年にサンフランシスコ講和条約が締結されると同時に打ち切られた。主権が回復した途端、廃止したのは、よほど嫌われていたということだ。
 当時、サマータイムを体験した筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)がこう言う。
「評判はよくなかったですね。1時間、早く出社しても日本のサラリーマンは、早く帰宅できませんからね。夕方時間が余っても、余暇を楽しむ文化もなかった。東京五輪のために導入するとしていますが、わずか1カ月間のために2年間もサマータイム制度を実施するのは、合理的じゃありませんよ」
 
 暑さ対策ならば、サマータイムの導入よりも、オリンピックの開催時期を7月から10月にずらすことを考えた方がいいのではないか。