安倍首相は、近畿地方が台風21号の直撃を受けて一夜明けたばかりの5日、いまだ関空に約8000人が取り残されていたにもかかわらず、総裁選の票固めという私的な用事のために新潟行きを強行し、災害対応を放り出して3選のための選挙運動に勤しんだと批判されました。
ところが6日の未明に北海道の胆振地方を震度7の地震が襲うと、政府はその1分後に対策本部を設置したとして、以後は地震の実態や国の対応について、安倍首相のたどたどしい口調で説明されることが繰り返されました。これは巨大地震という大震災が“現職総理”に有利に働くことを見越しての、総裁選に向けた政治利用という見方が広がっています(日刊ゲンダイ)。
「総裁選で石破茂氏と一対一の討論になれば、安倍氏に勝ち目はない。ディベートで撃破されることを恐れて、安倍氏は石破氏とのディベート機会を極力減少させようとしてきた。
自然災害で実質的なディベート機会が減少することは安倍氏にとっては大歓迎なのだ。
本来は、総裁選日程を変更して、候補者の政見を有権者にしっかりと示すことが必要不可欠である」と批判しています。
日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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総裁選わずか6日間 安倍首相「北海道地震」政治利用の醜悪
日刊ゲンダイ 2018年9月7日
総裁選告示(7日)直前に発生した北海道の巨大地震。「これで圧勝は決まった」――と安倍応援団に楽観ムードが広がっている。大災害の発生は、“現職総理”に有利に働くからだ。安倍首相本人も地震を徹底的に政治利用している。
■石破陣営の「延期」要求も完全無視
「まさか直前に地震が起きるとは」「安倍さんはホントに悪運が強い」――石破陣営が悲鳴を上げている。石破陣営にとって誤算だったのは、北海道地震によって総裁選の日程が大幅に変更されたことだ。
総裁選のスケジュールは7日告示、20日投開票だ。しかし、震災に対応するため、自民党は7日の告示から3日間の活動自粛を決定。そのうえ、安倍首相が10日からロシアを訪問するため、選挙戦は事実上6日間に短縮されてしまった。
7~9日に予定されていた安倍首相と石破氏との合同会見や街頭演説、テレビ出演も中止となった。石破氏は政策論争になれば絶対に負けない自信をもっていたが、出はなをくじかれた形だ。
石破陣営は、総裁選の「延期」を要求したが、安倍1強にひれ伏す自民党の選挙管理委員会は完全に無視している。
「安倍応援団は神風が吹いたとニンマリしています。政策論争になったら、石破さんに勝てませんからね。絶対に討論を避けたかった。とくにアベノミクスが争点になったら、失敗だったことが党員にバレてしまう。7~9日に組まれていた討論会などは、安倍首相がロシアから帰国する14日以降に行われる予定ですが、14日以降に行われてもほとんど意味がない。全国の自民党員は11日ごろまでには郵送で投票を済ませてしまうからです。事実上、政策論争をしないまま総裁選は終わることになります」(自民党関係者)
■シンパのメディアもフル活用
石破氏が頼みの綱にしていた小泉進次郎氏も、地震によって動きを封じられた形だ。記者団に総裁選への対応を聞かれて、「いまは災害対策なんじゃないですか」と答えている。さすがに「災害対策最優先」と答えるしかなかったのだろう。
さらに、安倍応援団は、NHKを筆頭とする安倍首相シンパのメディアを使って、「総裁選をやっている場合じゃない」というムードをつくっていく算段だという。すでにNHKは、震災対応をする安倍首相を大きく報じている。
しかし、総裁選を有利に進めるために震災を政治利用するなど許されるのか。政治評論家の本澤二郎氏が言う。
「北海道地震の発生が深夜だったのにもかかわらず、安倍首相は直後から動き始め、“停電復旧を急ぐ”などと陣頭指揮を執っていますが、どこまで本気で被災者のことを考えているのか疑わしいですよ。西日本豪雨の時は、被災者を見捨てて、総裁選の票固めのために“赤坂自民亭”と称する酒宴で酒盛りを続けていましたからね。その後も、野党が“被災者のために臨時国会を開いて補正予算を組むべきだ”と訴えても無視していた。ホンネでは被災者など、どうでもいいのでしょう。今回、“震災対応最優先”としているのも、すべて総裁選のためなのはミエミエです。もし、違うなら石破の要求に従って総裁選を延期すべきです」
こんな男にあと3年も首相をやらせていいのか、自民党員はよく考えた方がいい。