2018年9月19日水曜日

南シナ海で中国に対し「武力の威嚇」をする日本

 政府2015年に成立した安保関連法によって付与された海外活動の新任務にあたるという口実で、上自衛隊員2名を、シナイ半島エジプト東部でイスラエル、エジプト両軍の活動を監視している多国籍監視軍(PKOとは異なる)に派遣することを検討しているということです。
 そこは最も安全なところと言われているので、先遣陣によって安全が確認できたと言う口実で、その後部隊の派遣に切り替える可能性は大いにあります。
 
 一方 海上自衛隊は17日、潜水艦「くろしお」がヘリコプター搭載型護衛艦「かが」など3隻と南シナ海で対潜水艦戦の訓練を実施したと発表しました。そこは中国が領海と称する「九段線」の内側で、日本からはるかに離れた曰く付きの場所です。そこでの訓練について異例と言われる潜水艦参加の公表までしたのは、中国海軍の潜水艦を敵想定した訓練で、軍事拠点化を進める中国をけん制する狙いがあると言われています。
「世に倦む日々」氏は、もしもそこで中国の潜水艦と遭遇したり、中国の戦闘機が接近したりしたら一体どうなっただろうかと、その危険性を警告しました。
 
 そもそも自衛隊は憲法9条に拠って海外で海外での活動を禁止制約されています。政府は、シナイ半島への派遣も含めて、この訓練を新安保関連法で合法化しようとしますが、そもそもその法律自体が9条に違反するものです。
 中国の主張する「九段線」には何の合法性もないとはいえ、わざわざそんなところで訓練を行って中国を刺激する必要は全くありません。いわんや この10月に日中平和友好条約40周年で安倍首相の訪中が決まっているこの段階に於いてをや です。
 いま異常な関税を掛けて中国と経済戦争の真っ最中にあるトランプ大統領に、仮にけしかけられたにしても、それは行ってはならないことでした。
 
 柳条湖事件から87年になる189・18歴史博物館」で開かれた記念式典には、昨年同様、中国共産党幹部や政府高官の出席はな、中国側の対日関係改善を重視する姿勢が示されまし
 中国の方がはるかに大人びていて紳士的な対応です。
 
 近く訪中するから ・・・ 云々というのは勿論枝葉末節の問題であって、こんな風に安倍首相が一貫して「戦争」に前のめりになっていることこそが大問題であるのはいうまでもありません。
 ブログ「世に倦む日々」を紹介します。
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南シナ海での中国に対する「武力の威嚇」 - 反発も警戒もない世論 
世に倦む日々 2018年9月18日
今日18日の朝日の1面トップには、「陸自、多国籍軍へ派遣検討」の見出しが打たれていて、シナイ半島で監視活動をする多国籍軍に陸自隊員を派遣するという記事が出ている。2015年に成立した安保法制の中の「国際連携平和安全活動」を適用するとある。国連PKOとは無関係な多国籍軍の活動に、この制度を適用して陸自を派遣するのは初めてのことで、要するに実績作りが目的らしい。昨日17日には、同じく朝日の1面トップに「海自潜水艦、南シナ海で訓練」の見出しが躍っていた。南沙諸島付近の海域で、海自の潜水艦と護衛艦が中国の潜水艦を敵として想定した軍事訓練を行い、中国を牽制したことを発表していた。二日連続で自衛隊の海外派遣が朝日の1面トップで報道されている。どちらも、決して朝日が政府に都合の悪い情報をスッパ抜いたということではなく、政府が自らマスコミに撒かせて国民に告知しているもので、いわゆる大本営発表の軍事宣伝である。朝日がそれに積極的に協力して紙面を作っていて、読者としてどうにも憂鬱な気分にさせられる。南シナ海の海自の訓練の件は、17日のNHK7時のニュース、NW9、報ステと、番組のトップで伝えられた。 
 
陸自のシナイ半島多国籍軍への派遣については、政府とマスコミは安保法制の根拠法を示している。海自が南シナ海で行った対中国潜水艦戦の軍事演習は、果たしてどういう法制度が適用されたのだろうか。この活動を合法化する根拠法は何なのか。マスコミは解説しておらず、昨夜(17日)総裁選の生討論のために報ステに出演した安倍晋三の口からも、その説明はなかった。富川悠太は、おそらく無知で関心がなかったからだろうが、その質問を発さなかった。安倍晋三の話によれば、この訓練はすでに何度も行っていて、公表するのが今回初めてなのだと言う。であるとすれば、問題はなおさら重大かつ深刻で、秘密裏に中国を威嚇・挑発する軍事演習を、中国に近い公海上 - 中国が領海だと主張して国際紛争下にある海域 - に出張って実行していたことになる。もし、その現場に偶然、中国軍の潜水艦が航行していたり、中国軍の戦闘機が接近していたらどうなっていただろう。不測の接触事故が発生したらどうなっていたのか。安倍晋三は、相手も分かっていることだからと嘯いて言い逃げたが、この海自の軍事行動は事前に中国側に通告して行ったものではない。
 
相手も分かっていることだからという言い繕いは、いつもの安倍晋三のその場凌ぎの口から出まかせである。ウラジオの全体会議での失態を後でごまかそうとした嘘と同じだ。富川悠太は、中国側に事前に通告していたのか、中国側が海自の演習を予め探知して黙認していたという証拠はあるのかと訊くべきだった。もとより、自衛隊は憲法9条によって海外での活動を禁止・制約されている。政府が自衛隊を国連PKO以外で海外に派遣する場合は、これまで、必ず場所と任務を明確にした時限立法を制定してきた。インド洋上の米軍艦隻に給油するテロ特措法(2001年)がそうであり、イラク戦争時に米英軍(有志連合)に参加協力したイラク特措法(2004年)がそうである。今回の海自艦隊の南シナ海派遣は、果たしてどういう法律政令で合法化される任務なのだろう。公開上の訓練とはいえ、中国海軍の潜水艦を敵想定したもので、明らかに海外での軍事挑発行動である。中国への軍事的牽制が目的だと政府関係者が認め、朝日やNHKに報道させている。どう考えても憲法9条違反であり、こんなことが許されていいはずがない。南シナ海は尖閣沖とは違う。しかも、中国にとっては自国の主権の内側だ。
 
憲法9条の第1項には、武力による威嚇は国際紛争を解決する手段として永久に放棄すると明記している。艦隊を派遣しての中国を標的とした対潜水艦軍事訓練は、明らかに中国への「武力による威嚇」ではないか。日本政府の論理は、国際法と国際社会の秩序を守らず、南シナ海を不当に占拠して航行の自由を妨害する中国を牽制し、この海域では常に海自の潜水艦が監視活動しているぞと中国側に示威することが狙いだと認めている。明白に「武力による威嚇」に他ならない。日中戦争のときの「暴支膺懲」の論理と同じであり、その大義名分での軍事行動である。訓練には多額の税金を使っている。第1項については、安倍晋三も石破茂もしばき隊も立憲民主党もそのまま残すと言っていて、削除するとは誰も言っていない。とすれば、第1項に抵触する今回の自衛隊の行動を政府はどう説明するのだろうか。北太平洋で合同で行うリムパックとは性格が異なる。現時点で(志位和夫のTwを除いて)野党から批判や抗議は出ておらず、マスコミは政府リークをそのまま肯定的に流すだけで、この軍事行動を危険な挑発だと非難し警告する声は上がっていない。野党もマスコミもネット左翼も、この「暴支膺懲」を黙過している。
 
敢えて、それを法的根拠と言えるかどうかは別にして、根拠となり前提となるものは、2015年に改定された日米新ガイドライン(日米防衛協力のための指針)だろう。この新ガイドラインの策定を受けて、国内法整備である安保法案が2015年夏に上程され審議成立したが、この成文の中に自衛隊による南シナ海での海自の監視偵察活動と米軍後方支援を定めた項目があった。そして、反対世論が渦巻く中、報ステに登場した米シンクタンクの幹部が、新ガイドラインと安保法制の米国側の思惑として、能力の高い海自に南シナ海で中国海軍と戦闘してもらいたいのだと率直に語っていた。日中戦争のための新ガイドラインであり、日米両軍が共同して中国海空軍を平時に封じ込め、有事の際は制圧することが目的だと吐露していた。言うまでもなく、新ガイドラインはオバマのリバランス政策が軍事プログラムとして指針化されたものであり、第3次アーミテージレポートが現場任務編としてマニュアル化されたものである。その後、2016年に米大統領選があり、TPPを含めてオバマの政策を悉く覆すトランプが当選就任、対中国もディールが基本となり、南シナ海有事を仕掛けて中国を叩き潰す路線は後退したかに見えていた。
 
現在、米国が政情不安で、中間選挙を睨んでの「トランプ降ろし」が活発に展開されている。民主党系のマスコミや論者だけでなく、政権内にトランプの失脚を狙う者がいて、マスコミに醜聞を密告して扇動を広げ、トランプの支持率を下落させている。オバマのリバランス政策(中国封じ込め)を推進してきた軍産複合体や、CIAや、ジャパンハンドラーズとその手下である日本の属米右翼エリートは、この機にトランプをDCから追放するか、トランプのアジア政策を旋回させて、再びリバランス政策(暴支膺懲)の軌道定置を図りたいだろう。10月に日中平和友好条約40周年で訪中するはずの安倍晋三が、その直前にかかる中国挑発の軍事行動に出て、中国側の神経を逆撫でしたことは意外だが、あるいは、DCとホワイトハウスでの権力闘争の影響が、この海自の軍事演習の裏に介在しているのかもしれない。トランプの力が弱まり、ボルトンのような反中反共のタカ派の力が強まっている。また、対中貿易戦争の攻勢の延長上で、トランプとマティスが南シナ海で中国を刺激したという可能性も考えられる。いずれにせよ、安倍晋三や防衛省が単独で起こした行動ではない点は間違いない。どのように対立を収拾するか不明だが、米中関係の険悪は冗談ではない水準に達している。
 
総裁選の日程とタイミングを合わせたマスコミ報道で、次々と周到に計画的に布石され、反発もなく既成事実化されてゆく自衛隊の海外軍事行動に、恐ろしい時代の病理の進行を感じて戦慄せざるを得ない。