国際ジャーナリストの春名幹男氏は
「安倍首相とトランプ大統領の“友情”はとうに破綻しています。昨年末に動き始めた北朝鮮を巡る国際情勢の変化に安倍首相はまったくついて行けず、米国の対北融和路線には口を挟むくせに、米朝首脳会談が決まるたびに拉致問題解決の口利きを頼み込むという具合で、大統領からは〈アベはオレに何をしてくれた?〉と不信感を募らせる結果になりました」(日刊ゲンダイ)と述べています。
一方で韓国の文在寅大統領は24日、トランプ米大統領と会談し、俄かに機運が高まってきた2回目の米朝首脳会談の日時や場所に加えて、韓国と北朝鮮が年内の実現を目指す朝鮮戦争の終戦宣言についても突っ込んだ議論をしたと伝えられています。
北朝鮮が要求している「終戦宣言」は、非核化の進展に向けて北朝鮮が米国に要求している「相応の措置」に当たるので、非核化の促進につながるものです。
トランプ氏は文氏との会談の冒頭、記者団に、金正恩委員長との2度目の首脳会談を実施することで一致したとの認識を示すとともに、金氏について「率直に言って、非常にあけすけで素晴らしい」と称賛したということです。
文大統領も記者団を前に声明を読み上げ、金正恩氏が今月の南北首脳会談で「進展があった」とした上で、金氏からトランプ氏あての書簡を携えてきたことを明らかにすると共に、トランプ氏に対し「金委員長はあなたに揺るぎない信頼と期待を抱いている」と語り、「この問題を解決できる人物は、正にあなたしかいない」と誉め讃えました。
これが目下の流れであって、安倍首相のように十年一日のごとく、「核問題が解決するまでは北との宥和をすべきではない」という主張を繰り返すだけでは、話になりません。
そのうえ、文大統領から「金委員長は安倍首相と会う用意がある」と伝えられたにもかかわらず、またしてもトランプ氏に日朝会談の口利きを頼み込めば、「米国は日本を助けるために多くのことをしているのだから、もっと互恵的な関係を築きたい」とツイートしたトランプ大統領を一層強気にさせるだけです。つくづく自分では何もできない人間です。
高野孟氏の記事「日本政府は朝鮮和平を妨害するだけの対北外交でいいのか」を紹介します。
追記)「日々雑感氏」は26日付ブログ「北朝鮮の非核化を叫ぶなら まず魁より始めよ」で、要旨次のように述べ、核保有国の傲慢さ・理不尽さを批判しています。
「トランプ氏は国連総会で演説して北朝鮮の完全非核化を世界へ訴えた。しかし、それは米国の都合でしかない。世界は、核保有国のすべてに非核化を求めている。
自分の核は問題でなく、北朝鮮の核は問題だ、というトランプ氏の判断基準は、核兵器保有の可否を決める資格があるとでもいうのだろうか。あるとしたら、核兵器を保有しても良い国と、保有してはならない国との資格について説明して頂きたい」
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永田町の裏を読む
日本政府は朝鮮和平を妨害するだけの対北外交でいいのか
高野孟 日刊ゲンダイ 2018年9月27日
「『朝鮮戦争終戦』を警戒」という9月24日付東京新聞3面の見出しには、当初、我が目を疑った。世界中の人々が朝鮮戦争の再発を警戒し、その危険を除去するための南北、米朝の対話が成功して、1953年の休戦協定が恒久的な平和協定に置き換えられる日が来ることを祈念しているさなかに、朝鮮戦争の終戦を警戒している人がいる? ということは、朝鮮戦争が休戦状態のままで、いつ戦闘が再開されるか分からないという状態が続く方がいいと思っている人がいる? さて何のこっちゃ。そういう人がいるとすれば誰なんだ――と思いつつ記事を読むと、驚くべきことに、それは「日本政府」なのだという。
同紙によると「日本政府は朝鮮戦争の『終戦宣言』に神経をとがらせている。朝鮮半島の非核化が後回しにされ、安全保障への悪影響も考えられるためだ。安倍晋三首相は訪米中、トランプ大統領に懸念を伝え、安易に宣言に応じないよう働きかけるとみられる」という。
これって、朝鮮和平に対する妨害行為ですよね。南北が軸となり、中国やロシアも支援して、トランプが気まぐれを起こしてちゃぶ台返しの挙に出ないように、ガラス細工を積み上げるように息を詰めて真剣な作業に取り組んでいるというのに、安倍はトランプが簡単に和平に応じないよう足を引っ張るという粗暴行為に出たのである。
もちろん北と米国との間に、終戦宣言が先か非核化が先かという駆け引きが続いているのは事実である。しかし、私に言わせれば、米国がこの駆け引きにこだわっていること自体が奇妙で、終戦宣言とはお互いに戦争手段に訴えることをしないと言葉の上で約束を交わした上で、その後の面倒な交渉事を心静かに進めていこうという趣旨のものであるから、さっさと振り出せばいいし、一度振り出したら取り返しがつかないというものでもない。
非核化は、ネジクギを1本ずつ外して巨大な構造物を解体していくような、気の遠くなるほど時間のかかる作業で、その間、何年でも「ちゃんとやらないと軍事攻撃するからな」と脅し続けるのは理不尽だろう。向こうの立場からすれば「やっていられないよ」となってしまう。日本の対北外交は不信感を煽り立てることにだけ熱心で、これでは日朝首脳会談など遠のくばかりである。
高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。