2018年9月14日金曜日

外交で破綻した安倍首相を続投させて良いのか(五十嵐仁氏)

 米紙ウォールストリート・ジャーナルは6日、トランプ大統領が同紙コラムニストとの電話で、貿易赤字の解消のために「日本がどれだけ米国に払わなければならないかを伝えた瞬間、安倍氏との良好な関係は終わる」と語ったと伝えました(朝日新聞)安倍氏が良好な関係だと自画自賛していたものの実態がこれです。政府は、目下トランプ氏と25日に首脳会談を行う方向で調整中ということですが、トランプ氏の要求をキチンと断るためのものとはとても思われません。
 
 プーチン大統領とはこの10日にロシアで首脳会談を行いましたが、北方領土返還問題でもその他の面でも何の成果もありませんでした。これまでの22回もの日ロ首脳会談は一体何だったのかという声が上がっています。
 さらに12安倍首相が各国首脳の前で北方領土返還の話も交えた講演をした司会者に促されたプーチン大統領「今思いついたのだが」として、日本と「前提条件なしの平和条約締結」北方領土返還の合意なしでまず平和条約締結を提案するという爆弾発言を行ないました。
 56年の共同宣言(2島返還)を日本が拒否したのだから」、プーチン氏がこれまでの協議を根本から覆す姿勢を示したのにはそれなりの理はあるのですが、安倍氏に取っては踏んだり蹴ったりの対応でした。
 大きなショックをうけた筈の安倍首相がその場で何の反論もしなかったことに、野党からは勿論 与党からも批判の声が上がりました。安倍氏や同氏の取り巻きにとっては、北方領土の返還は憲法改正と並んで最重要の目標なので当然です。
 安倍氏が、先に3000億円を投じるなどして必死にプーチン大統領と親交を深めようとのも、すべては北方領土の返還を進めたいがためでした。
 
 いずれにしてもそんな提案に対して無言だったというのでは、とても「外交の安倍」とは言えません。
 五十嵐仁氏が、「得意とされる外交で破綻してしまった安倍首相を続投させても良いのか」というブログを発表しました。
 「得意とされる外交で・・・云々」と言うのが、五十嵐氏の皮肉であるのは言うまでもありません。そもそも「外交の安倍」と評価する人は、安倍首相の取り巻きやネトウヨ以外にはほとんどいないのではないでしょうか。
 NHK NEWS WEBも併せて紹介します。
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得意とされる外交で破綻してしまった安倍首相を続投させても良いのか
五十嵐仁の転成仁語 2018年9月13日
 「やっぱり、そうだったのか」と思いました。「ロシア極東ウラジオストクで開かれていた東方経済フォーラムで12日、プーチン大統領が突然、日本との『年内の平和条約締結』を求めた」というニュースを目にしたときです。
 「『北方四島の帰属を解決し、平和条約を結ぶ』という、日本が領土交渉の前提としてきた考えを飛び越えた発言に、衝撃が広がった」と、今日の『朝日新聞』は伝えていますが、「衝撃」を受ける方がおかしいんじゃないでしょうか。プーチン大統領が、北方領土の実効支配を強めて領土問題の棚上げを狙っており、騙された安倍首相がそれに協力させられているということは、2年前に山口県長門市で開かれた日露首脳会談の時から明らかだったのですから。
 
 私は憲法会議発行の『月刊 憲法運動』』に掲載された「国際政治の歴史的転換と日本の選択―いよいよ『活憲の時代』が始まる」(8月11~13日付のブログ)という論攷で米朝首脳会談を振り返り、「今回の米朝首脳会談をめぐる一連の経過において、もし『敗者』がいたとすれば、それは日本の安倍首相ではないでしょうか」と指摘して、次のように書きました。
 「『圧力』一辺倒で首脳会談実現の足を引っ張ったあげく、トランプ米大統領に貿易面で裏切られ、ロシアのプーチン大統領にも領土問題で騙され、北朝鮮の金正恩委員長からは相手にされず、韓国の文在寅大統領とはギクシャクしたままで、中国の習近平主席からも適当にあしらわれるという醜態を演じ、『蚊帳の外ではない』と叫びながら蚊帳の外で飛び回っている『一匹の蚊』のようになってしまった」と。その後の経過は、私がここに書いた通りになっているように見えます。
 とりわけ、日露関係について「ロシアのプーチン大統領にも領土問題で騙され」ているとの指摘を、今回のプーチン発言は裏付ける形になりました。「突然、思いついた」などというのは、偽りにすぎません。
 
 この問題について、山口県での日露首脳会談を前にした2016年11月24日付のブログ「無残というしかない安倍外交における破産の数々」で、私は「12月の首脳会談に向けて領土問題で大きな進展があるのではないかとの観測は幻に終わりそうです」と書いて、次のように指摘しました。
 「安倍首相は日露間の経済協力の拡大をテコに領土問題を打開し、それを成果として解散・総選挙に打って出るのではないかと見られていました。しかし、この戦略にも狂いが生じているようです。
 プーチン大統領は領土問題で日本に譲歩する意志はないようで、経済協力だけを『食い逃げ』するかもしれないからです。これも、安倍外交の失敗となる可能性が強まっています。」
 やっぱり「食い逃げ」するつもりだったということが、今回のプーチン大統領の発言で明らかになったというわけです。結局、安倍首相は騙されていたということになるでしょう。
 
 今たたかわれている自民党の総裁選挙で、安倍首相の3選を支持する自民党議員の大きな理由の一つが外交手腕にあるそうです。安倍首相自身も外交を得意だとし、それによって支持の拡大を図ってきた側面があります。
 しかし、それはテレビなどで報じられる外見にすぎず、安倍首相が得意としていたのは外交そのものではなく「やっているふり」「進んでいるポーズ」によって国民を欺くというやり方の方でした。
 その「化けの皮」が、最近になって次第に剥がれつつあります。外交政策が破たんして漂流を始めた安倍政権を続投させれば、日本の前途には暗雲が漂うばかりではありませんか。
 
 外交破たんによって無能ぶりが露わになった安倍首相を退陣させなければなりません。安倍政権の打倒こそが、日本の外交を救う唯一の道なのです。
 
 
プーチン大統領 「年内に平和条約を」
NHK NEWS WEB 2018年9月12日
ロシア極東のウラジオストクで開かれている国際会議の全体会合で、ロシアのプーチン大統領は安倍総理大臣に対して、ことしの年末までに、前提条件をつけずに平和条約を締結することを提案しました。プーチン大統領としては、困難な北方領土問題の解決を棚上げにして、平和条約を速やかに結びたい考えを示したものと見られます。
 
ロシアのウラジオストクで開かれている国際会議、「東方経済フォーラム」は12日午後、全体会合が行われ、プーチン大統領や安倍総理大臣、中国の習近平国家主席が、それぞれ演説しました。
この中で、安倍総理大臣の演説後、司会者に発言を求められたプーチン大統領は、戦後70年以上、日ロ間で北方領土問題が解決できずにいることに触れたうえで「今思いついた。まず平和条約を締結しよう。今すぐにとは言わないが、ことしの年末までに。いかなる前提条件も付けずに」と述べました
 
発言を受けて会場から拍手が起こると、プーチン大統領は「拍手をお願いしたわけではないが、支持してくれてありがとう」と述べたうえで、「その後、この平和条約をもとに、友人として、すべての係争中の問題について話し合いを続けよう。そうすれば70年間、克服できていない、あらゆる問題の解決がたやすくなるだろう」と述べました。
プーチン大統領としては、困難な北方領土問題の解決を棚上げにして、平和条約を速やかに結びたい考えを示したものと見られます。
(後  略)