安倍首相はいまだに北朝鮮首脳との会談のメドが立っていません。首相は世界に向かって「北朝鮮を信用するな」と叫び続けて来たのですから、北が会談に簡単に応じないのは最初から分かっていたことでした。門前払いされた場合にどうするのか、何の打つ手もないのにただ北を非難し続けたというのであれば、児戯に等しいことというしかありません。日朝会談が「実現しないように」という魂胆で、北朝鮮の非難を続けて来たのでしょうか。
拉致被害家族の手前、もういちどトランプ大統領に頼んでみるということにしたようですが、この期に及んでそんなことをするのは、日米二国間通商交渉において日本側の傷を深めるだけの話です。何もかもあまりにも愚かな話です。
米紙ウォールストリート・ジャーナルは6日、トランプ大統領が「貿易赤字の解消のために、日本がどれだけ(米国に)払わなければならないかを伝えた瞬間、晋三との良好な関係は終わる」と語ったと伝えました。11月の中間選挙を控え、日本との貿易赤字の解消も成果にしたい考えであるのは明らかです。
安倍氏とトランプ氏は、23日の夕食に先立って30分ほど通訳だけを交えた密談を行いました。多分、米国の要求を伝えて飲ませるのには、それくらいあれば十分だったのでしょう。
日刊ゲンダイは、「安倍首相に米国製兵器の購入や(農産品などの)輸入関税の引き下げなどを迫ったことは容易に想像できる」としています。
天木直人氏も、トランプ氏が「米国の要求を日本が知ったら、日米同盟は終わるかもしれない」と公言したからには、「大統領の要求は厳しいもの」であった筈で、安倍氏の「大変建設的な議論が出来たと思っている」は大嘘だと述べています。
さらに「対北朝鮮問題」に関する安倍氏の発言もやはり嘘で、現実にトランプ氏は米朝首脳会談に踏み切ることを、安倍氏との会談の直後に明らかにしました。それによって南北戦争終結宣言が行われ、さらに関係国の平和条約の締結に進めば、日本だけが取り残されるのは明らかです。
これについての佐藤優氏の提言も紹介されています。
日刊ゲンダイと天木直人氏のブログ(2本)を紹介します。
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突然の“密室”夕食会…安倍首相はトランプに何を飲まされた
日刊ゲンダイ 2018年9月25日
23日にトランプ大統領との夕食会に臨み“親密さ”をアピールするはずだった安倍首相が、とんだお荷物を押し付けられたとの観測が広がっている。
夕食会は当初、マンハッタンのトランプタワー地下のレストランで行われる予定だったが、トランプは突然、会場をタワー上階にある居室に変更。通訳だけを交えて30分ほど懇談し、約2時間にわたって夕食会を行った。
トランプは安倍首相と会う前に「軍事と貿易の話をする。我々はこれまで日本に多くの支援をしてきた。より互恵的な関係を築きたい」とツイート。安倍首相に米国製兵器の購入や輸入関税の引き下げなどを迫ったことは容易に想像できる。
安倍首相は夕食会後、記者団に「突っ込んだ意見交換ができた」とうそぶくのが精いっぱいだった。総裁3選を果たした安倍首相に、中間選挙で劣勢が伝えられるトランプが早速「オレのために譲歩しろ」と迫ったとの見方も出ている。
一方、当初24日午後(日本時間25日朝)にニューヨークで開かれる予定だった日米閣僚級協議が突然、半日ほど延期されることになった。ライトハイザー米通商代表部代表の都合がつかなくなったためという。
国家同士で決めた日程を直前になって一方的に変更するとは、安倍首相も日本もナメられたもの。完全に米国のペースに巻き込まれている。
トランプ大統領との会談は「建設的だった」と語った安倍首相
天木直人のブログ2018-09-25
安倍首相のどこが問題か。
それは頭が悪い事だ。
しかし頭が悪くても首相は務まる。
側近に優秀な者を集めて政策をつくらせたらいいからだ。
安倍首相の問題は、頭が悪い上に小心なところにある。
小心ゆえに失敗を恐れる。そして失敗がばれる事をおそれる。
だからウソをついてしまうのだ。
きのうニューヨークで行われたトランプ大統領との会談をめぐる発言についてもまた安倍首相はウソをついた。
トランプ大統領と夕食を共にした安倍首相は、終了後ニューヨーク市内のホテルで記者団に語ったという。
「日米関係だけではなく国際社会の様々な問題について、率直に突っ込んだ意見交換ができた」と。
そこまではいい。ウソではないだろう。
しかし懸案の日米通商問題について何と言ったか。
「大変建設的な議論が出来たと思っている」と。そんなわけないだろう。
中国との貿易戦争を見るまでもなく、米国第一主義のトランプ大統領の要求は、国際ルールを無視した制裁一辺倒の理不尽な要求だ。
日本に対しても、既にトランプ大統領は公言している。
米国の要求を日本が知ったら、日米同盟は終わるかもしれない、と。
もはや日本国民だったら誰でも気づいているはずだ。トランプ大統領の要求は厳しいものになると。
だから安倍首相は素直に語るべきだ。
トランプ大統領の要求は厳しいものだったが、国益を第一に首脳間の交渉で最善を尽くすと。
誰が日本の首相であっても、トランプ大統領が突きつけてくる要求は理不尽で、一方的だ。
そして誰が日本の首相であっても、トランプ大統領の米国と交渉する事は難しい。
だから、素直にそれを認めた上で、全力を尽くすと言えばいいのだ。
北方領土問題も拉致問題も対中外交もそうだ。
誰が首相であってもその解決は容易な事ではない。
それを認めた上で、国民に真実を語って、外交をすればいいだけの話だ。
それにもかかわらず、ウソでごまかそうとする。
安倍首相の最大の問題は、まさしく、その小心さゆえのごまかしである。
国民に対して不誠実なところだ。
それにしても、安倍首相の言葉をそのまま報道するだけで、真実を取材、報道しようとしないメディアもまた読者に対して不誠実だ。
メディアが安倍首相を助けている(了)
対北朝鮮外交で米国に後れを取るなと書いた佐藤優
天木直人のブログ 2018-09-25
今度の安倍・トランプ会談では通商問題と並んで議題になったのが対北朝鮮外交だ。
安倍首相はここでもウソをついた。
河野外相が9月14日の定例記者会見で語ったように、朝鮮戦争の終結は「次期尚早だ」とするのが日本の立場だ。
そしてこの日本の立場についてトランプ大統領との会談で日米の緊密な連携が確認されたと安倍首相は語った。まるで非核化まで制裁を緩めない事で一致したと言わんばかりだ。
ところが、首脳会談直後に、トランプ大統領は米朝首脳会談が近く行われると発表した。
トランプ大統領は朝鮮戦争終結に踏み切るということだ。
おりからきょう発売のアサヒ芸能(10月4日号)で佐藤優が書いているのを見つけた。
最近やたらに佐藤優の記事を引用する事の多い私だが、特別の理由があるわけではない。
最近の佐藤優は正しい事を言っているから、それを紹介するまでだ。
彼はまず河野外相の、朝鮮戦争の終結宣言は時期尚早だという発言を厳しく批判する。
どうやら河野氏は朝鮮半島の政治的・軍事的状況が大きく変化し始めていることがわからないようだと。
そして佐藤優は次のように自らの見立てを語っている。
近く第二回米朝首脳会談が行われる。
その結果、朝鮮戦争の終結に向けた動きが始まる可能性がある、と。
佐藤優がこの記事を書いたのは、今度の安倍・トランプ会談の前だ。
そしてトランプ大統領は安倍首相との会談直後に2回目の米朝首脳会談が近く行われる事を発表した。
まさしく佐藤優の予想した通りの展開だ。
佐藤優は最後にこう書いている。
平和条約が結ばれて朝鮮戦争が終結すると、韓国から米軍が撤退するシナリオが現実的になると。
そうなれば北東アジアの戦略的情勢は一変すると。
日本は後手に回り、不利な状況を押し付けられると。
だから、そうならないために安倍首相は一日も早く金正恩氏と会って日朝間の信頼関係を構築する必要があると。
具体的には東京の朝鮮総連本部を北朝鮮連絡事務所に格上げし、日本政府が平壌にあらたに日本政府連絡事務所を設置する事に合意することだと。
日本の取るべき対策はまさしくこれである。
そして安倍首相はそれを狙っているに違いない。
拉致問題の解決にとってこれが最善の策だと胸を張って(了)