2018年9月30日日曜日

日米の物品貿易協定 言葉で本質ごまかすな(中國新聞)

 安倍首相は、トランプ氏と合意した物品関税協定TAGは、包括的貿易協定FTAとは全く異なると強調しましたが、「日米共同声明」にTAGだけでなくサービス分野でも交渉を開始すると明記されていますTAG協議後は実質的なFTAに発展する可能性は大きく、AP通信など現地メディアは「FTA」と伝えています。
 日本にとって自動車の追加関税を当面回避するためのやむを得ない選択だったという見方もありますが、日本の農業が受ける被害は2兆円に上ると言われているので、それの代わりにこれを出すというような言い訳は通用しません。
 
 交渉が始まる前にTPPのレベルが最大限度の譲歩幅だと断ったのも、TPPに参加しない米国にまで無条件に日本の農産品を開放したに等しいものでした。
 
 中國新聞は、安倍首相トランプ氏との「蜜月」をアピールしてきたのだから、対等な同盟関係を目指して米国の無理難題を突っぱねる覚悟を見せて欲しかったのに、そんな胆力はなく、逆に新たな通商協定の本質を言葉でごまかそうとしていると批判しました。
 彼にはそんな胆力はなく、猛烈な北朝鮮排撃の演説を行って米朝宥和の足を引っ張ったかと思えば、その一方でトランプ氏に日朝首脳会談の口利きを頼むという無様さこそが彼の本性で、そんな虫のいい個人的な借りをトランプ氏に作ったことが、結局この巨大な国益の喪失に結びついたのでした。
 
 中国新聞の社説を紹介します。
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(社説) 日米の物品貿易協定 言葉で本質ごまかすな
中國新聞 2018年9月29日
 米国との2国間の通商交渉をこれまで否定してきた安倍晋三首相が、日米首脳会談で一転して交渉入りを決めた。貿易赤字の削減を掲げ、日本車への追加関税をちらつかせるトランプ大統領に屈した形だ。年明けにも関税引き下げなどの交渉に入るとみられるが、日本農業には大きな打撃となりかねない。
 首をかしげたくなるのは安倍首相の心変わりだろう。2国間交渉は、多国間の協定を重んじてきた従来の政府見解とも、幅広い国々と無理のない貿易自由化を目指す国際社会の流れとも、逆行しているからだ。
 首脳会談に先立って国連総会の一般討論演説でも「日本は自由貿易の旗手だ」と強調した。直後の日米合意を、国際社会はどう受け止めただろう。
 
 トランプ氏との「蜜月」を、安倍首相はアピールしてきた。対等な同盟関係を目指すのなら、米国の無理難題を突っぱねる覚悟を見せてほしかった
 日本に限らずトランプ氏が各国を制裁関税で威嚇するのは、政権の今後を左右する11月の米中間選挙を前に、成果を急いでいるからに他ならない。こうした内向きの政治を戒め、国際秩序や道理を説く役割こそ、安倍首相に求められていたはずだ。
 その胆力が日本政府に感じられなかったどころか、逆に新たな通商協定の本質をごまかすような言動が見受けられた。
 
 象徴的なのは交渉を「物品貿易協定(TAG)」と名付けたことだ。日本側の造語だと伝えられる。交渉項目が多岐にわたる自由貿易協定(FTA)を否定してきた安倍首相としては、これまでの政府見解との整合陛を図ったつもりだろう。
 首相は会談後「日本が結んできた包括的なFTAとは全く異なる」とし、茂木敏充経済再生担当相も「あくまで物品貿易に限定されたものだ」と述べた。しかし2人の説明と、日米の共同声明は異なる内容である。
 共同声明は物品を対象とするTAGだけでなくサービス分野でも交渉を開始すると明記。 TAG協議後は投資分野などでも交渉することも盛り込んだ。実質的なFTAに発展する懸念が拭えず、AP通信など現地メディアは「FTAだ」と伝える。
 
 日本にとっては、自動車の追加関税を当面回避するためのやむを得ない選択だったとの指摘もある。ただ、国内の農業がより厳しい立場に置かれることも忘れてはなるまい。
 環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合との経済連携協定(EPA)が来年にも発効する見通しだ。 TPPを一方的に離脱した米国にまで農産物市場の開放を確約すれば日本の農家にとっては泣きっ面に蜂である。農業を柱とする地域の衰退や、食料安全保障も危ぶまれる。
 
 忘れてならないのは、トランプ氏が「ディール(取引)」を口癖としていることだ。TAG交渉で米国にとって十分な成果が得られていないと判断すれば再び追加関税のカードをちらつかせ、日本に大幅な譲歩を迫ってくる恐れも十分考えられる
 来年は統―地方選や参院選がある。先の自民党総裁選で安倍首相が訴えた「謙虚で丁寧な政権運営」という言葉の重みが改めて問われていよう。政府はTAGの本質を隠す言葉に頭をひねるのではなく、国民に対して正直に真実を伝えるべきだ。