安倍首相は、日米首脳会談で、農産品についてはTPP協定など、過去に締結した協定の水準を上回る関税の引き下げには応じない等の歯止めをつけた上で、「日米物品貿易協定」=TAGの締結に向けて2国間交渉を開始することで合意したと述べました。
また米国との二国間交渉(FTA)には応じないとしたことに反した点については、農産品等の「関税に限定」したTAGなので貿易協定とは異なると強調しました。
しかしそんな綺麗ごとで済む筈がありません。現実にトランプ大統領は、
「われわれは今日、FTA交渉開始で合意した。これは日本がこれまで拒否していたものだ」
と記者に向かって明言しています。これこそは少なくとも日米交渉の実態を暗示するものです。
日経新聞は、「TAGはFTAと違うのか 国内配慮との見方」の見出しを打ち、東京新聞は社説で「『実質FTA』日本譲歩 日米関税交渉入り合意」と断じました
28日の各紙の社説は、安倍政権が当初の「日米二国間協議は拒否する」の言明に反して「危険水域に踏み込んだ」ことに、ことごとく危惧の念を示しました。
たとえば神戸新聞は「新通商交渉 理解に苦しむ物品限定」というタイトルで、
「理解に苦しむのは政府の説明だ。TAGは物品取引に限り、投資やサービスも含めたFTAではないと強調する。一方でトランプ政権は最終目標として日米FTAを掲げており、今回の交渉をその入り口とする思惑がうかがえる。一部だけを取り上げてFTAと異なるとする主張に、国民は納得できるだろうか」
と述べています。
因みに、いくつかのタイトルだけを紹介すると以下の通りです。
「日米物品貿易協定 理不尽な要求は回避したい」(宮崎日日新聞)
「日米2国間協議 要求に屈さぬ通商交渉を」(西日本新聞)
「 日米首脳会談 通商交渉 安易な妥協許されない」(愛媛新聞)
「日米首脳会談 互恵的関係と言えるのか」(徳島新聞)
「日米首脳会談 2国間交渉で大丈夫か」(秋田魁新報)
「日米新通商交渉 威圧に屈した方向転換」(北海道新聞)
「日米の新たな貿易交渉 トランプペースを危ぶむ」(毎日新聞)
しんぶん赤旗の主張と天木直人氏のブログを紹介します。
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(主張)日米首脳会談 米の無法な圧力に屈した責任
しんぶん赤旗 2018年9月28日
日米間の閣僚級の貿易協議に続いて、安倍晋三首相がトランプ大統領と首脳会談を開き、農産品など物品貿易協定(TAG)の協議に入ると合意しました。2国間交渉に固執し、日本車の関税を引き上げると脅して農産品などの輸入拡大を迫ったトランプ政権の圧力に屈服した形です。交渉中は自動車関税を引き上げず、農産品の関税引き下げは環太平洋連携協定(TPP)を上限にするとしていますが、TPPそのものが日本の農業に重大な犠牲を押し付けるもので、合意自体守られる保証はありません。アメリカの無法な要求に屈した責任が問われます。
トランプ流の「強制外交」
中国やカナダ、メキシコ、欧州諸国など各国と、アメリカの「利益第一」の立場から激しい「貿易戦争」を繰り広げているトランプ政権の態度は、関税引き上げや制裁で相手を脅して、自らの要求を強引に押し通す、文字通りトランプ流の「強制外交」というべきものです。トランプ大統領は「国内産業保護」のためだといいますが、中国などへの高関税措置が報復を招いてアメリカ国内の産業にも被害を与えているように、国内産業も守ることはできず、自らの政権と一握りの多国籍企業の利益のために相手を脅し上げる、理不尽なものです。
日本に対しても、前政権が推進したTPPから一方的に離脱して、2国間交渉を迫り、鉄鋼やアルミに続いて自動車の関税引き上げで脅迫し、農産品などの市場開放を迫るやり方は、「強制」以外のなにものでもありません。
日本がアメリカから輸入する自動車の関税はゼロなのに、アメリカが日本車に関税を追加することは不当です。安倍首相も国連総会での演説で、日本の自動車会社はアメリカで現地生産を拡大し雇用を提供していると言及したように、トランプ政権の要求はどこから見ても道理がありません。コメや牛肉などの農産品も、一方的なTPP離脱について米国内の生産者から不満が出たため、日本に輸入拡大を迫る身勝手さです。
安倍政権はこれまでトランプ政権にTPPへの復帰を働き掛けるとしてきましたが、茂木敏充経済再生担当相とライトハイザー米通商代表との貿易協議でも相手にされず、2国間交渉を受け入れました。TPPに固執し続けた安倍政権の政策の破綻は明らかです。
TAGの交渉中は自動車関税を引き上げないといっても、交渉が終われば引き上げることになりかねません。農産品の関税などをTPPの合意にとどめるというのも、あくまでも日本としての希望の表明で、アメリカは「尊重」(共同声明)するだけです。TPPそのものがコメや牛肉など重要5品目を含む農産品を関税引き下げや輸入拡大の対象にしており、枠内でも日本農業への打撃は重大です。
国民と国益を守り抜け
安倍首相は先の自民党総裁選の中で「戦後日本外交の総決算」を口にしました。しかしその実態は、アメリカの要求を一方的に受け入れる言いなり外交の見直しとは程遠い限りです。
日本の国益と国民の暮らしを守るためには、アメリカ言いなりをやめることがますます必要です。TPPへの固執はもちろん、事実上の自由貿易協定(FTA)になるTAGなど2国間交渉も直ちに中止すべきです。
安保法に始まり管理貿易で終わった安倍首相の対米売国外交
天木直人のブログ 2018年9月28日
予想通りだの結末だったとはいえ、ここまで譲歩してしまったらお終いだ。
TAG(日米物品貿易協定)という名の管理貿易受け入れの事である。
思えば安倍総理がワシントンを訪れ、日本の総理としてはじめて米国連邦議会の上下両院合同会議において演説を行ったのは2015年4月29だった。
そして、その演説の中で、安倍首相は、日本の国会の承認がないまま(つまり国会で賛否の議論が激しくたたかわされていた中で)、米国に安保法を成立させて見せると約束したのだ。
そのあまりの日本国民無視と憲法違反に、私は怒りを込めて新党憲法9条の結党宣言をHPで公開した。
日米同盟と言う名の対米従属から決別し、憲法9条を日本の国是とすることを正面から訴える政党が日本の政治の中に現れない限り、国民は覚醒せず、日本は永久に米国から自立できないまま衰退していくという警鐘を込めて。
その安倍首相が、それから3年半ほどを経て、今度はニューヨークを訪れ、日本が最も反対して来た管理貿易を、国民の了承どころか、国民にウソをついて、あっさり飲んでしまった。
自由貿易原則からもっとも利益を受けて来たのは日本だ。
戦後の日本経済の復興・成長の源であった。
その日本の国是をかなぐり捨て、米国第一主義のトランプの米国に屈服したのだ。
命(外交・安全保障)と暮らし(経済)を、自らの保身の為に、ここまで米国に差し出した安倍首相は、後にも先にもない本物の売国首相だ。
安倍政権がこのままさらに続くなら日本の未来はない。
いまこそ日米同盟を国是とする安倍自公政権と決別し、憲法9条を国是とする政権を誕生させなければいけない。
しかし、それは容易な事ではない。
戦後70年のこの国の八百長政治によって、国民もまた日米同盟が絶対的だと思い込まされてきたからだ。
しかし、このまま対米従属が進み、在日米軍が日本の国土の固定化され、国民が働いて収めた血税が、国民の為ではなく、米国第一主義の米国にどんどんと注ぎ込まれては、国民生活は疲弊する一方だ。
いまこそ新党憲法9条が必要な時だ。
一人でもいいから新党憲法9条から政治家を国会に送り込む。
そこからすべてが始まる。
そして、強い信念で結ばれた一騎当千の本物の政治家を数名擁するまでに新党憲法9条が発展すれば、どのような政権が出来ようとも、日米同盟一辺倒のこの国の政治に歯止めをかける事ができる。
連立政権の一角を占め、キャスティングボートを占めることすら出来る。
いまこそ新党憲法9条が必要だ。
新党憲法9条こそ、安倍暴政を阻止できる最強の政党である(了)