護憲派の文化人らでつくる「九条の会」が14日記者会見し、戦力の不保持と交戦権の否認をうたった憲法9条2項を維持したまま自衛隊を明記する安倍晋三首相の改憲案について「現在の9条を根本から破壊して、日本をアメリカと一緒に海外で『戦争する国』に変えてしまう」と抗議するとともに「安倍9条改憲NO! 全国市民アクション実行委員会」が3千万人を目標にしている署名活動の強化を訴えるアピール文を発表しました。
記者会見の中で、呼びかけ人の一人で作家の澤地久枝さんは今月7日、ハンドバッグに「アベ政治を許さない」と記されたタグをつけて衆院議員会館に入ろうとした際、警備員に外すよう求められたことを明らかにし、「一人一人の有権者が政治についてどう考えようと自由なはず。時勢はどんどん悪くなり、憲法を守ろうという意見は後景に退いてしまっている」と、憤激を表明しました。
それとは別に、市民団体「鎌倉ピースパレード」が6月と8月に、憲法9条改正の反対などを訴えながらJR鎌倉駅周辺を歩くデモを企画し、参加者の集合場所にするため、市に6月11日と8月23日に市役所前庭の使用許可を申請しましたが、鎌倉市は「特定の思想、信条、宗教の普及を目的とする行為」に当たるとし、6月14日と8月31日付でいずれも不許可と決定し団体に通知したということです。
市の公的不動産活用課は、デモの告知チラシに記された「民主主義を取り戻そう!」「9条改憲は戦争への道!」などの文言について、「改憲や政治的な動きについて述べている部分が、特定の政治的信条に該当すると判断した」と説明しました。
護憲運動が偏った考え方だとは驚くべき判断です。もって回った言い方をしているものの、改憲に向けて目の色を変えている安倍首相への忖度に基づくものとしか考えられません。
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九条の会 「時勢はどんどん悪くなる」会見で澤地久枝さん
毎日新聞 2018年9月14日
憲法改正に反対する「九条の会」の記者会見が14日、参院議員会館で行われた。マイクを握った8人のうち、呼びかけ人の一人で作家の澤地久枝さん(88)は今月7日、ハンドバッグに「アベ政治を許さない」と記されたタグをつけて衆院議員会館に入ろうとした際、警備員に「そのまま入らないでください」と呼び止められ、外すよう求められたことを明らかにした。
澤地さんはこの日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移転に反対する記者会見に出席するため衆院議員会館を訪れた。警備員にとがめられた澤地さんが、今年2月に死去した俳人、金子兜太(とうた)さんが揮毫(きごう)した「アベ政治を許さない」のタグを示して、「これがいけないんですか」と問うと、「そうです」と言われたという。
澤地さんは「あえて逆らわずにバッグにしまいましたが、一人一人の有権者が(政治について)どう考えようと自由なはず。時勢はどんどん悪くなり、憲法を守ろうという意見は後景に退いてしまっている」と述べた。
澤地さんは敗戦を旧満州(現中国東北部)で迎え、1年間にわたり置き去りにされた「難民経験」を持つ。戦争を題材にした数多くのノンフィクションを世に問い、2004年に九条の会が発足した時は、9人の呼びかけ人の一人になった。
九条の会の記者会見や集会ではいつも、この国の未来に対する「希望」を語ってきたが、衆院議員会館でタグを外すよう言われてから、「決してやってはならないが、一つの方法として、国会前での焼身自殺を考えた」と言う。
澤地さんは「言論を封圧されて、焼身自殺をまじめに考えましたが、決してやってはいけないと思い直した。みんなで手をつないで政治を変えていく方法を考えなければ」と語った。
憲法を巡っては、護憲集会の開催場所として、自治体が公共施設の使用を拒否するなどの事例が各地で相次いでいる。
九条の会はこの日の記者会見で、自民党総裁選後の臨時国会で9条改憲の動きが加速することを懸念するアピール文を発表。自衛隊を憲法に明記することにより、「9条を根本から破壊して、日本をアメリカと一緒に海外で『戦争をする国』に変えてしまう」と訴えた。
改憲反対デモ、鎌倉市庁舎集合は「政治的」申請を不許可
神奈川新聞 2018年9月16日
鎌倉市の市民団体が、改憲反対を訴えるデモの集合場所として市役所前庭を使用するため、市に6月と8月の2回、許可申請をしたところ、市が「特定の政治的信条の普及を目的とする行為」に当たるとして、いずれも不許可にしていたことが分かった。市民団体は「『憲法を守りたい』と語ることが、なぜ『政治的』とみなされるのか」などと反発している。
市民団体「鎌倉ピースパレード」は6月17日と今月17日、憲法9条改正の反対などを訴えながら、JR鎌倉駅周辺を歩くデモを企画。参加者の集合場所にするため、市に6月11日と8月23日、市役所前庭の使用許可を申請した。
市は庁舎管理規則に基づく「庁舎内行為許可に係る審査基準」に照らし、「特定の思想、信条、宗教の普及を目的とする行為」に当たるとし、6月14日と8月31日付でいずれも不許可と決定。団体に書類で通知した。
不許可の理由について、庁舎管理を担当する市公的不動産活用課は、デモの告知チラシに記された「民主主義を取り戻そう!」「9条改憲は戦争への道!」などの文言を挙げ、「改憲や政治的な動きについて述べている部分が一般的にどう受け止められるかを考え、特定の政治的信条に該当すると判断した」と説明。「対立する両方の意見があるものについて、市として中立性を保つ必要がある」とも述べ、「個人の考えや活動を否定するつもりはない」と強調した。
松尾崇市長は神奈川新聞社の取材に「政治的事案を主目的とするパレードに関しては、市庁舎内の秩序の維持などにより安全に庁舎を管理する立場から、多くの不特定多数の市民らが行き来する場の使用を許可することは適当ではないと判断した」とのコメントを出した。
これに対し、市民団体の小堀論共同代表(69)は「集会ではなく、集合場所に使いたいだけ」と説明した上で、「市民活動であるパレードを通し、憲法について日常的に考え、語ることが、なぜ『特定の政治的信条』とみなされるのか」と反論。「公共の福祉に反しない限り、誰もが自由に使えるようにしてほしい」と訴えた。不許可の決定を受け、市民団体は集合場所をいずれも市役所前の歩道に変更した。
同課によると、庁舎使用の申請は本年度、14日までに17件あり、この2件以外は許可された。