2018年9月4日火曜日

首相の自衛隊訓示は「憲法擁護に反する」 恐るべき改憲への執念

 安倍首相は3日の自衛隊高級幹部会同で、「全ての自衛隊員が強い誇りを持って任務を全うできる環境を整える。これは今を生きる政治家の責任。私は責任をしっかり果たしていく決意だ」との訓示を行いました。
 共産党の小池書記局長は同日の記者会見で「これは憲法9条に自衛隊を明記する自らの主張を述べたもので、憲法尊重擁護義務を土足で踏みにじる暴言だ」と批判しました。
 自民党のベテラン議員も「全く望ましくない。理解に苦しむ」と困惑しています。
 
 憲法99は「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」として、政治に携わる者達に、憲法を守り、さらに「憲法違反行為を予防し、これに抵抗する義務を課していますが、それが安倍首相の念頭には全くないことは明らかです。
「戦争狂時代」というチャップリンの映画がありますが、安倍首相にあっては「改憲狂時代」のただなかにいるかのようです。
 共同通信と産経新聞の記事を紹介します。
 
 それとは別にLITERAが産経新聞の2日付安倍首相インタビュー記事で、「国民には貴重な一票を行使していただきたい。国民が憲法改正の是非を問う国民投票をする権利を奪うことは、国会のサボタージュとなる」と発言したことを取り上げました。
 
 憲法を改正すべきとする国民は、NHKの5月の調査では19%、同じく朝日新聞の調査では11%に過ぎません。それなのに安倍氏は「安倍晋三が嫌だとかではなくて、議論すべきは、憲法のどの条文をどういう必要性があって変えるかということのみだ」と語っています。まさに「改憲狂」と呼ぶしかない発言です。
 そして呆れたことに「改憲は政局的な観点で行われるのは避けるべきで、政権選択の投票ではないと、明確にしないといけない(=国民投票で過半数の賛成票を得られず改憲案が否決されたとしても、それによって自分が退陣することはない)」とも言いました。
 これまでは「もしも改憲を政府自らが発議し国民投票で否決されれば内閣は退陣する」のが当然のけじめとされていましたが、それをあっさりと否定したわけです。
 
 LITERAは、「それは国民投票で改憲案が否決されたとしても、退陣せずに政権を維持し、次の新たな改憲案を出してまた国民投票を行えばいい」と考えているからで、何度死んでも生き返る改憲ゾンビ」だと呼びました。まさにピッタリの評価です。
 LITERAの記事を併せて紹介します。
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首相訓示は「憲法擁護に反する」 野党批判、自民議員も困惑
共同通信 2018年9月3日
 安倍晋三首相の自衛隊高級幹部会同での訓示に関し、野党や有識者から3日、行政府の長として憲法改正に意欲を示した形で問題だと批判が相次いだ。共産党の小池晃書記局長は「憲法99条が定める閣僚らの憲法尊重擁護義務に反している」とした。自民党ベテラン議員も「全く望ましくない。理解に苦しむ」と困惑している。
 首相は同日「全ての自衛隊員が強い誇りを持って任務を全うできる環境を整える。これは今を生きる政治家の責任。私は責任をしっかり果たしていく決意だ」と述べた。
 
 小池氏は記者会見で、会合の性格を考慮すれば、自民党総裁でなく首相としての発言なのは明白だとして非難した。
 
 
共産・小池晃書記局長、首相の自衛隊訓示を批判 
「憲法尊重擁護義務を踏みにじる暴言」
産経新聞 2018年9月3日
 共産党の小池晃書記局長は3日の記者会見で、安倍晋三首相が自衛隊高級幹部会同で「全ての自衛隊員が強い誇りをもって任務を全うできる環境を整える」と訓示したことに関し「憲法9条に自衛隊を明記する自らの主張を述べた。憲法尊重擁護義務を土足で踏みにじる暴言だ」と批判した。立憲民主党の枝野幸男代表は同日の会見で「自衛隊員が誇りを持てるように環境を整えるのは全く同感だ。ことさら憲法につなげる方が不自然だ」と語った。
 
 
安倍首相が総裁選を前に御用新聞の産経、読売でトンデモ“改憲強行論”!
「発議しないのは国会のサポタージュ」とまで
LITERA 2018年9月3日
 陰に陽に安倍陣営による石破茂・元幹事長へのパワハラが繰り広げられている自民党総裁選。相変わらず安倍首相は直接対決を逃げているが、告示前最後の土日となった今月1・2日、安倍首相のインタビューが御用メディアである読売と産経新聞に二日連続で掲載された。
 しかも、そこで安倍首相は憲法改正について言及。だが、これが噴飯ものの内容だったのだ。
 まず、2日付の産経インタビューでは、NHK岩田明子記者や山口敬之・元TBS記者と並んで“安倍首相の太鼓持ち番記者三羽烏”と呼ばれてきた阿比留瑠比記者を相手に、安倍首相はいかにももっともらしく、こう吠えている。
国民には貴重な一票を行使していただきたい。国民が(憲法改正の是非を問う)国民投票をする権利を奪うことは、国会のサボタージュ(怠業)となる
 
「国民投票の権利を国民から奪うのは国会のサボタージュ」って、一体いつ国民が改憲を求めたというのか。現に、JNNが1・2日におこなった世論調査では、安倍首相が秋の臨時国会に自民党改憲案を提出するという考えに対し、53%の人が「反対」と答え、「賛成」は26%にすぎない
 さらに言えば、今年5月にNHKがおこなった「憲法に関する意識調査」では、「いま憲法改正議論を進めるべきか? ほかの問題を優先すべきか?」という質問に「憲法改正の議論を進めるべき」と答えた人はたったの19%。「憲法以外の問題に優先して取り組むべき」という意見が68%にのぼっている。同様に、今年5月の朝日新聞世論調査でも「安倍首相に優先的に取り組んでほしいもの」という複数回答可の質問では、「景気・雇用」60%、「高齢者向けの社会保障」56%、「教育・子育て支援」50%とつづき、「憲法改正」と回答した人は最下位で11%しかなかった。
 つまり、「2020年に改憲するために急がなくちゃ」などと考えているのは安倍首相とそのシンパたちだけで、国民の多くが喫緊の改憲を望んでいるような状況ではまったくないのだ。
 
 にもかかわらず、「改憲のための国民投票を実施しないのは国民の権利を奪っている
「国会のサボタージュ」とは笑止千万。むしろ、省庁の障害者雇用水増しがこれだけ大きな問題になっているのに閉会中審査を拒みつづけている安倍自民党こそが、「国会のサボタージュ」の真っ最中ではないか。
 だが、安倍首相はさらに国民の意見を無視して、こんなことを言い出すのである。
安倍晋三が嫌だとかではなくて、議論すべきは、憲法のどの条文をどういう必要性があって変えるかということのみだ
 端的に言ってバカ丸出しだ。国民が改憲の必要性を感じているならば、こんなことをわざわざ言う前にとっくに議論は盛り上がっているだろう。なのに、そういう状況ではないから「どの条文を変えるかを議論すべき」って、それは変える必要がないという話だ。そういう「なんでもいいから改憲さえできればいい」という目的ありきの姿勢が安倍政権下での改憲に反発する国民を生んでいるのだが、政策批判を受け止める度量がまったくないこの男は、それも「個人攻撃」だと思っているのである。
 
国民投票で否決されても退陣しないと表明、安倍は「改憲ゾンビ」になる
 もはや溜息しか出てこないが、世論を一顧だにせず、根拠もなく国民投票の必要性を訴えておきながら、じつは1日付の読売新聞のインタビューでは、目を疑うような発言もおこなっている。
 読売のインタビューでは、「海外では国民投票が首相退陣につながった例もある。憲法改正への覚悟は」と問われ、安倍首相はこう答えているのだ。
「(改憲は)政局的な観点で行われるのは避けるべきで、政権選択の投票ではないと、明確にしないといけない
 ようするに、国民投票で過半数の賛成票を得られず改憲案が否決されたとしても、それによって自分が退陣することはない、と言っているのである。
 国民が望んでいる景気回復や雇用、社会保障の問題よりも改憲を最優先課題に挙げ、国民投票の実施には約850億円もかかると言われているのに、たとえ否決されても「そんなことでは辞めない」と宣言する──。無責任さはいまにはじまったことではないとはいえ、この段階から保険を打つとは、どこまで姑息なのだろうか。
 しかも、この発言の恐ろしいところは、暗に「一度では諦めない」と宣言していることだろう。国民投票で改憲案が否決されたとしても、退陣せずに総理大臣をつづけ、次の新たな改憲案を出してまた国民投票をおこなえばいい。安倍首相がそう考えていることは明白だ
 何度死んでも生き返る改憲ゾンビ……。考えただけで背筋が凍るが、自分の欲望にここまで固執していることを隠さない安倍首相のこの態度こそ、もっともゾッとする。こうした独裁的主張をツッコミもなく掲載するというメディア状況含め、安倍が総理であるかぎり、この国のディストピア的状況は日に日に進行してゆくことになるだろう。(編集部)