日刊ゲンダイの連載記事:「徹底比較 安倍晋三と石破茂 (15)」を紹介します。
回が進むにつれて、いわば両者の人間的な、あるいは性格的な違いが明らかになってきました。
対談者の鈴木哲夫氏、野上忠興氏のプロフィールについては、連載1回目
を参照ください。
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徹底比較 安倍晋三と石破茂 (15)
安倍の不誠実は筋金入り 石破は現実的な舞台回しできるか
日刊ゲンダイ 2018年9月14日
鈴木 安倍は「実利主義」ということですが、石破は永田町的な実利を追求せず、青臭い。それは格好いい側面はあるけれども、ではそれで組織が回せるのか、官僚が回せるのか、という懸念はある。例えば、石破が自民党総裁になった時にどんな人事をやるだろうかと考えると、総裁選で徹底的に戦った細田派や二階派などが果たして協力してくれるのだろうか。役所は、さすがに総理には協力するだろうけど、現実的なところでの舞台回しが石破にできるのかな、という不安はある。
――石破の方が戦争しやすい国になってしまうのでは?
鈴木 私はそれは逆だと思います。安倍よりはペースは遅い。いい例が憲法改正への考え方。石破は9条改正は後回しでいいと言っている。まず議論をしましょうと。国民の理解がなければ、改憲はできないのだから、議論が先だと。誤解を招くのは、石破の説明責任の問題もあるのでしょうが。
――石破はかつて「デモはテロ」とブログに書いたことがある。
鈴木 あれは特定秘密保護法案の審議が行われていた2013年のことですね。議員会館の部屋でブログを書いていた時にデモの声が聞こえてきた。当時、幹事長として官邸からは何が何でも通すと。しかし、石破は安倍首相のそうした姿勢ではなく、まだまだ議論も必要と考えていたので、板挟みになって精神的に参っていて、そして冷静さを失って書いてしまったと。それでも、あの発言は許されるものではない。石破は後で、ものすごく後悔し、反省していたが、批判は当然受けなければなりませんね。
野上 安倍の危うさ……。3選はレガシーづくりの最後の機会となりますからね。憲法改正にこだわる背景です。でも、世論調査結果を見ても、そこに国民目線があるとも思えないのです。
鈴木 秋の臨時国会で自民党案を示したい、という意向です。
野上 その臨時国会については安倍は、本音では開きたくないようです。モリ・カケに加え、「赤坂自民亭」酒席参加問題まで野党に攻め材料があるからなのでしょうね。何でも敵と味方に分ける安倍にとっては、野党もまた「敵」なのでしょう。野党の後ろにいる国民の存在を意識していないということにもなりますね。国会での質疑や党首討論での不誠実・傲慢と指摘される答弁の態度は実は、筋金入りなのです。例えば、2003年正月に地元紙・山口新聞のインタビューで安倍は、こう話しています。
〈変に相手をたてずに、国会答弁もけんか腰でやってきましたし。でもそのほうが、国民に対して正直で誠実だと思うんです。討論相手に親切であったり、誠実である必要はない〉
政治家としての「成長過程期」がないまま、安倍は一足飛びで首相に上り詰めた。主流派内にすら「安倍は右から左までの包括政党=国民政党・自民党、言えば『自民党民主主義』を変貌させ、独裁政党にしてしまった」との声があると聞きますが、確かに、野党が指摘する強引な政治手法、懐の狭さ、外交的な稚拙さ、品性を欠くヤジには、トップリーダーとして疑問符が付けられても無理からぬところは、ありますね。(つづく・敬称略)