日刊ゲンダイの連載記事:「徹底比較 安倍晋三と石破茂 (10)」を紹介します。
対談者の鈴木哲夫氏、野上忠興氏のプロフィールについては、連載1回目
を参照ください。
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徹底比較 安倍晋三と石破茂 (10)
安倍の周りは“単色”のオトモダチ 石破に集うのは父性集団
日刊ゲンダイ 2018年9月6日
野上 安倍の父・晋太郎は私に「晋三は政治家に必要な情というものがない」と漏らしていましたし、安倍も「父から〈おまえは人として、相手への思いやりが足りない〉とよく怒られました」と明かしています。対人関係はそこに尽きるように思えますね。養育係だった久保ウメが話したように、安倍は「ワガママで自己チュー」、つまり「自分絶対主義者」なわけです。突き詰めれば、人の言葉に耳を傾けず批判を許さず――そんなタイプとなりますか。「男・田中真紀子」といわれるほど敵と味方を峻別するとみられていますから、推して知るべし。晋太郎の小言の意味がよく分かります。
鈴木 逆もまた真なりで、石破は論理的に説明できないことを嫌う性格ですから、情と利害が複雑に絡み合う永田町で人望を集めるのは苦手でしょうね。仲間ということでは、安倍の周りにいる人は似ていますよね。多彩な印象がない。
野上 安倍を知る自民党長老が「政治家、学者、文化人、ジャーナリスト、周りはみんな同じタイプばかりだな」とか言ったことがありましたが、安倍も含めて“単色”と言いたかったのでしょうね。小泉政権の官房副長官時代、講演先で「憲法上は原子爆弾だって問題ではない。小型であればですね」とブッて物議を醸す舌禍事件を起こしています。官邸や党幹部からクギを刺されもしましたが、一部の議員の間で株を上げたんです。若手時代の安倍はひょろっとした優男で、近寄りやすい風貌だったこともあって、「若手タカ派の旗手」だとか、「タカ派の貴公子」とヨイショされた。このとき安倍を担いだタカ派議員の仲間が今の「オトモダチ」の原型と見る向きがありますね。
鈴木 石破も自分に似たタイプの人間が自然に集まってくるのに任せている感じですかね。子分を集めてメシを食わせたりということもあまりやらない。石破を政界に引き入れた田中角栄は、そういう点で天才的なものを持ち合わせていて、石破も非常に尊敬している。だったら真似すればいいものを、自分はあそこまでできない、中途半端になるからやらない、と。政策で集まればいいと考えている。総裁選出馬を見据えて、2015年9月に石破派と呼ばれる「水月会」を立ち上げたのですが、情や利害で動く母性的な永田町と対照的な父性集団です。
野上 ベタベタしない?
鈴木 しない、しない。総裁選出馬にあたって、派閥の仲間が飲み会をセットして会合を重ねていますが、いまそれをやるべきだからやらなければ、という感じがある。〈石破さんと初めて飲んでイメージが変わりました〉と参加者からの評判は悪くないんだけど、石破は崩れた飲み会を生真面目にやっている印象ですね。
野上 政治家は表と裏があるというか、腹に一物あって動くところがあるじゃないですか。安倍の周辺には、安倍が有する権力・権威を笠に着て、安倍を持ち上げながらうまく立ち回ろうとする人が少なくないようです。一方の安倍はそういうヨイショに乗ってしまうところがあり、何かにつけて利用されてしまう。世間の目が視野に入らないわけです。西日本豪雨の時に「赤坂自民亭」の酒宴に参加して批判を浴びましたが、その典型ではないでしょうか。 (つづく・敬称略)