2014年1月以来、3回にわたって沖縄の状況を世界に発信し、沖縄の軍事植民地状態を終わらせることを訴えてきた世界の著名人たちが、今度は沖縄県による埋め立て承認撤回への支持を世界に呼び掛ける声明を発表しました。
今回もノーム・チョムスキー、ジョン・ダワー、ダニエル・エルズバーグ、オリバー・ストーンの各氏らが名を連ねています。
それとは別に、沖縄県知事選を前に、学者や作家でつくる「普天間・辺野古問題を考える会」が7日、衆院第二議員会館で会見し、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する72名の共同声明を発表しました。
作家の赤川次郎さん、瀬戸内寂聴さん、宮本憲一・滋賀大名誉教授が名を連ね、沢地久枝さんは宮本さんと共に会見に出席しました。
琉球新報(2本)と東京新聞の記事を紹介します。
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<社説> 海外識者の新声明 沖縄の民意に力強い支持
琉球新報 2018年9月8日
名護市辺野古の海が土砂投入の危機にさらされる中、改めて世界の目を沖縄に向けるよう促したことを高く評価したい。
2014年1月以来、3回にわたって沖縄の状況を世界に発信し、沖縄の軍事植民地状態を終わらせることを訴えてきた世界の著名人たちが、今度は沖縄県による埋め立て承認撤回への支持を世界に呼び掛ける声明を発表した。
今回もノーム・チョムスキー、ジョン・ダワー、ダニエル・エルズバーグ、オリバー・ストーンの各氏らが名を連ねた。世界の知性と認められる人々が沖縄に深い関心を寄せ続けていることは心強い。
辺野古新基地建設に反対する県民大多数の意思は選挙などで何度も示されてきた。しかし日米両政府は、この民意をないがしろにして工事を強行している。今回の声明は、沖縄の民意は孤立しておらず、世界の良識ある人々から注視され強く支持されているということを改めて示すものである。
14年の最初の声明は、前年末の仲井真弘多知事による埋め立て承認を受けて、103人が新基地建設の中止と普天間飛行場の返還を訴えた。
米国の独立宣言や公民権運動を沖縄に重ねたことは、新鮮な驚きだった。18世紀、英国の植民地支配による「権力の乱用や強奪」を糾弾したのが独立宣言である。また、自由と平等、人間の尊厳を求めた20世紀の公民権運動を挙げて、沖縄の粘り強い非暴力の運動、数万人規模で繰り返される県民大会などへの共感と支持を表明した。
15年1月には、訪米を計画している翁長雄志知事に、承認の取り消しか撤回の意思表示をするよう15人の連名で求めた。同年8月には、県の第三者委員会が埋め立て手続きの瑕疵(かし)を指摘したことを受けて、74人が翁長知事に承認取り消しを訴えた。
今回の声明は、これまでの署名者の多くを含む133人が署名している。「(14年)当時懸念していた状況は良くなるどころか悪化しているので、今再び私たちは声を上げる」として、その後進んでいる南西諸島での自衛隊基地の建設・拡張の中止も求めた。
そして、沖縄の平和、人権、環境保護のための闘いと、翁長知事が表明し謝花喜一郎副知事が遂行した埋め立て承認撤回への支持を表明し、新基地建設中止を主張した。
さらに、世界中の人々と政府に向けても「沖縄の島々を非軍事化し平和に生きるための沖縄の人々の闘いを支持することを求める」と呼び掛けた。
同じ日に東京でも宮本憲一氏ら識者109人による新基地建設のの白紙撤回を求める声明が発表された。今後賛同者が広がりそうだ。
海外でも国内でも沖縄への基地集中政策に批判が強まっている。日米両政府はこの良識の声を受け止め、今こそ新基地建設を断念すべきだ。
沖縄県の承認撤回を「支持」 海外識者133人が声明
ノーム・チョムスキー氏、オリバー・ストーン氏ら
琉球新報 2018年9月8日
ノーム・チョムスキー氏
米国やカナダ、オーストラリアなどの世界的に著名な文化人や識者ら133人が7日、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設を巡り、仲井真弘多前知事の埋め立て承認を県が撤回したことを支持する声明を発表した。新基地建設が「国民主権、自治権といった憲法の原則に反して行われている」と指摘し、トランプ米大統領と安倍晋三首相に対し、新基地建設を即時に中止し、沖縄を非軍事化するよう求めている。新基地建設を巡る海外識者による声明は今回で4回目。
オリバー・ストーン氏
声明は、言語学者のノーム・チョムスキー氏、アカデミー賞受賞の映画監督オリバー・ストーン氏をはじめ、ピュリツァー賞受賞者のジョン・ダワー氏、ノーベル平和賞受賞のマイレード・マグワイア氏ら海外の識者や文化人が名を連ねた。チョムスキー氏らは、2014年1月にも普天間の辺野古移設に反対し、即時無条件返還を求める声明を発表した。
ジョン・ダワー氏
声明では、2014年の声明発表以降も、日米両政府が県民の民意を無視し、土砂投入を予定するなど新基地建設を強硬に進めている現状に「状況は良くなるどころか、悪化しているので、今再び私たちは声を上げる」と表明。辺野古への新基地建設に加え、宮古島や石垣島、奄美大島など南西諸島への自衛隊基地配備を挙げ、「沖縄の『要塞(ようさい)』的役割を考え直し、離島を含めて東シナ海周辺につくるべき非武装共同体での中心的な役割を語り始めるべきだ」と指摘し、沖縄の非軍事化を訴えた。
さらに「新基地建設に対する沖縄県民の反対は一貫しており、その民意は選挙でも繰り返し示されている」とし、9月30日に投開票が行われる県知事選の候補者に対し「沖縄の人々が表明した普天間飛行場閉鎖と、辺野古基地建設中止という民意を実行に移す意思を明確にすることを促したい」と強調した。
「辺野古移設、許せぬ」 学者・作家ら72人が賛同呼び掛け
東京新聞 2018年9月8日
翁長雄志知事の死去に伴う沖縄県知事選(十三日告示、三十日投開票)を前に、学者や作家でつくる「普天間・辺野古問題を考える会」が七日、東京都千代田区の衆院第二議員会館で会見し、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する七十二人の共同声明を発表した。
作家の赤川次郎さんや瀬戸内寂聴さん、同会代表の宮本憲一・滋賀大名誉教授(経済学)らが名を連ねた声明では、政府が計画する辺野古沿岸部の埋め立てについて「貴重な自然の破壊であると同時に沖縄の声を無視している」と指摘。翁長知事の遺志に基づいて八月三十一日に前知事の埋め立て承認を撤回した沖縄県を支持し、「断じて容認できない」と建設中止を求めた。
会見に出席した作家の沢地久枝さんは、基地をめぐる歴史的経緯から「この国は沖縄に対して何をしてもいいと思っている」と批判。宮本名誉教授は知事選後に政府が土砂投入に踏み切る可能性を危ぶみ、「できるだけ多くの賛同を集めたい」と語った。同会はインターネットなどを通じて署名を集め、知事選の投開票日前に政府に提出する方針。(原田遼)