日本が1910年に朝鮮を植民地化したことは教科書などに記載され、国民は比較的認識していますが、それ以前に琉球国を植民地化し、日本の沖縄県にした経過はあまり知られていません。
140年前の27日、日本政府は琉球併合を行い沖縄県を設置しました。それは武力を背景にしたもので、実態は「琉球処分」という名の琉球国の植民地化でした。
照屋寛徳衆院議員は「国際法の観点からも、おかしなやり方で併合した。新基地で政府が行政不服審査法を乱用したことと通じる」と指摘しています。
1947年9月に、昭和天皇は「米軍が沖縄や琉球列島のその他の島に米軍が占領状態を50年間より更にもっと長期間継続させることを希望する」という考えを示し、それを側近の寺崎英成が占領軍政治顧問に伝えた記録が残されています。
現実に。1952年のサンフランシスコ条約で日本が独立したときに、沖縄はそのまま米軍の占領下に置かれました。
沖縄県には、琉球民族独立総合研究学会(独立学会)があり、10日に第21回公開シンポジウム「いわゆる『琉球処分』140年を問う」(略称)を開いています。
基地問題を独自の動画で全国に発信している多嘉山侑三さん(34)は「政府の都合で沖縄を利用し、人々をないがしろにしている点で現在の辺野古新基地建設と通じている」と述べ、独立学会の親川志奈子共同代表(38)は「政府は他の地域には決して沖縄と同じ態度は取らない。140年前から続く植民地主義だ」と指摘しています。
時計の針を戻すことは出来ませんが、そうした歴史的事実に対する謙虚さと忸怩たる思いを国民、取り分け沖縄基地問題を扱う為政者は持つべきです。
かつての政治家、橋本龍太郎、野中広務、梶山静六、古賀誠らは何度も沖縄に行き話を聞いていますが、現政権にはそれがありません。逆に沖縄蔑視が顕著だとされています。
瀬長亀次郎の資料を展示する「不屈館」の内村千尋館長(74)は「今は米統治下よりも物事が強行に進められている」と語っています。
琉球民族独立総合研究学会(独立学会)第21回公開シンポジウムに関する記事を含め、琉球新報の2本の記事を紹介します。
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「今も続く植民地主義」研究者、自己決定権回復訴え 琉球処分から140年
琉球新報 2019年3月27日
1879年に琉球王国が滅亡してから、27日で140年。松田道之琉球処分官が、熊本鎮台兵(日本軍)や武装警官ら約600人を連れて首里城へ入り、琉球国王・尚泰に廃藩置県の通達を突き付けた。日本政府の武力を背景にした琉球併合(琉球処分)で首里城は明け渡され、沖縄県が設置された。沖縄の自己決定権や米軍基地問題について発信している人々は「辺野古新基地建設に通じる」「日本の植民地主義は140年前から続いている」などと訴えている。
基地問題を独自の動画で全国に発信しているユーチューバーの多嘉山侑三さん(34)は「政府の都合で沖縄を利用し、人々をないがしろにしている点で現在の辺野古新基地建設と通じている」と指摘する。
国会で照屋寛徳衆院議員が併合以前の琉球の政治的地位を質問した際、政府が明確に答えられなかったことを挙げて「国際法の観点からも、おかしなやり方で併合した。新基地で政府が行政不服審査法を乱用したことと通じる」と指摘した。
琉球民族独立総合研究学会の親川志奈子共同代表(38)は「政府は他の地域には決して沖縄と同じ態度は取らない。140年前から続く植民地主義だ」と指摘する。「人権問題として国際社会に訴えていくことが大事だ」と強調した。沖縄は1952年、サンフランシスコ講和条約で日本から切り離された。「第2の琉球処分」とも言われる。
瀬長亀次郎の資料を展示する「不屈館」の内村千尋館長(74)は米統治下、沖縄の人々が保革に分断されたことを挙げて「沖縄の人が争うことで(民衆の)力がそがれてしまう。亀次郎は皆をいかに団結させるかに常に心を砕いた」と語る。「今は米統治下よりも物事が強行に進められている。当時の闘いを思い起こし、県民は団結すべきだ」と話した。(宮城隆尋)
植民地主義 問い直す 琉球処分140年シンポジウム
琉球新報 2019年3月11日
琉球民族独立総合研究学会(独立学会)は10日、第21回公開シンポジウム「ヤマト政府による琉球国武力併合(いわゆる「琉球処分」)140年を問う」を沖縄県宜野湾市立中央公民館で開いた。後田多(しいただ)敦神奈川大学准教授、音楽講師でユーチューバーの多嘉山侑三さん、松島泰勝龍谷大学教授が登壇した。日本が武力を背景に琉球国を滅ぼした1879年の琉球併合(琉球処分)、沖縄戦を経て現在の辺野古新基地建設に至る歴史を振り返り、日本の植民地主義を問うた。約230人が聞いた。
後田多さんは琉球併合について「日本にとって初めての植民地獲得で、現在も沖縄は植民地だ。日本は民主主義国の中で数少ない、植民地を手放していない国だ」と指摘。「3度目の米朝首脳会談を沖縄で開くよう求めるべきだ。沖縄が進む道を考えるステップになる」と提起した。
多嘉山さんは自身の先祖である尚真王との関わりを説明し「独自の歴史や文化を復興し、植民地から脱却するには琉球の自立、独立が必要だ」と強調。「ウチナーンチュのアイデンティティーが確立されるには一人一人の発信が重要だ。わかりやすく明確な根拠をもち、娯楽性も追求して発信していきたい」と述べた。
松島さんは「日本政府は武力をもって琉球を併合したことを認めず、謝罪も賠償もしていない」と批判。琉球国が米国など3カ国と結んだ修好条約の原本を外務省が持っていることについて「返還を求める訴訟を起こすべきだ。琉球国はもうないが、琉球人の子孫には返還を求める権利がある」と訴えた。