昨年10月にオープンした豊洲市場は、直後から建物内の空気がよどみ、働く業者から「市場の中に入ると咳が止まらなくなる」「喘息のような発作が出る」「喉が痛い」などの声が相次ぎました。床などには真っ黒な粉状のチリが大量に積もっているということです。
共産党都議団から依頼を受けた渡辺泉・東京農工大学教授がその黒い粉塵の成分を分析したところ、アンチモンが自然界の170倍、亜鉛が同96倍、カドミウムが同12倍などの驚愕の結果が判明しました。アンチモンやカドミウムなどは毒性の強い物質です。
共産党の和泉なおみ東京都議は12日の都議会予算特別委で代表総括質疑に立ち、この事実を明らかにし、「閉鎖型施設で働く市場関係者の健康への影響が心配される。ただちに調査し対策を取るべきだ」と小池百合子知事に迫りました。
小池知事は「報告を受け適切に対応するよう指示している」と述べましたが、和泉議員は「実態把握なしに適切な対応はできない」と重ねて調査を迫りました。
日刊ゲンダイとしんぶん赤旗の記事を紹介します。
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健康被害が続出 豊洲市場の“黒い粉塵”は高濃度の猛毒物質
日刊ゲンダイ 2019年3月13日
黒い粉塵は猛毒物質――。日刊ゲンダイは昨年12月5日付で、豊洲市場に黒い粉塵が舞い、健康被害を訴える業者が相次いでいることを報じた。その黒い粉塵の成分を、共産党都議団から依頼を受けた専門家が分析したところ、驚愕の結果が判明。アンチモンやカドミウムなど毒性の強い物質が、自然界ではあり得ない高濃度で検出されたのだ。
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豊洲市場は昨年10月にオープンしたが、直後から建物内の空気がよどみ、働く業者から「市場の中に入ると咳が止まらなくなる」「喘息のような発作が出る」「喉が痛い」などの声が相次いだ。床などに真っ黒な粉状のチリが大量に積もっていたが、12月の日刊ゲンダイの取材に、都は「成分分析をするまでの段階ではありません」(豊洲市場管理課)と見て見ぬフリだった。
日刊ゲンダイ同様、黒い粉塵を問題視していた共産党都議団が、豊洲市場6街区仲卸棟の4階の駐車場から黒い粉塵を採取し、東京農工大の渡邉泉教授(環境資源科学)に分析を依頼。その結果は渡邉教授が「自然界ではあり得ません。あまりに異常なデータだったため、分析した学生が実験ミスではないかと疑ったほどでした」というものだった。
〈別表〉が自然界の2倍以上の濃度が検出された物質だ。自然界の170倍もの濃度が検出されたアンチモンの毒性は極めて強い。継続して吸うと、肺炎、気管支炎、生殖障害を引き起こす。12倍のカドミウムも毒性が強く、体内に蓄積されると、骨がもろくなり、激痛が走る。4大公害の1つイタイイタイ病の原因物質だ。神経症の原因になる鉛や長期摂取で意識障害を引き起こすビスマスも危険だ。銅、亜鉛、錫など体内に存在する金属でも、過剰摂取は体に支障を来す。
「黒い粉塵はコンクリートやターレのタイヤの成分だと考えられます。築地市場は開放型で絶えず水で洗い流していましたが、豊洲市場は閉鎖型で、水の使用も制約があり、滞留してしまっているようです。強い毒性の成分も含まれ、危険な作業環境です。黒い粉塵の成分が健康被害の原因である可能性も考えられますから、空気清浄など対策を取って、作業環境を一刻も早く改善するべきです。そのためにも、今回は1カ所だけでしたが、大気中も含めた複数箇所の成分を大至急調査して、全容をつかむ必要があります」(渡邉泉教授)
■小池知事「適切に対応」とお茶を濁す
12日の都議会予算特別委員会で、共産の和泉なおみ都議がこの問題を取り上げ、小池百合子知事に調査を迫ったが、小池氏は「適切に対応している」とお茶を濁した。
都は、豊洲市場の大気中の浮遊物含有量を2度調査しているものの、浮遊物が何であるかは分析していない。分析もせずに、どうして適切だと言い切れるのか。
現に健康被害の訴えが相次ぎ、高濃度の猛毒まで検出された。小池氏がこのままスルーを続ければ、歴史に残る公害になりかねない。
物 質
|
豊 洲
|
自然界
|
倍 率
|
アンチモン
|
62.4
|
0.37
|
170
|
亜鉛
|
5750
|
59.9
|
96
|
プラチナ
|
0.0433
|
0.001
|
43
|
錫
|
29.8
|
2.3
|
13
|
カドミニウム
|
3.41
|
0.295
|
12
|
ビスマス
|
2.39
|
0.34
|
7
|
銅
|
132
|
19
|
6.9
|
インジウム
|
0.21
|
0.037
|
5.7
|
カルシウム
|
31400
|
6400
|
4.9
|
鉛
|
83.8
|
17.2
|
4.9
|
モリブデン
|
4.44
|
1.2
|
3.7
|
単位 : mg/kg 乾重量当たり
重金属粉じん ただちに調査・対策を 豊洲市場 和泉議員が質問
しんぶん赤旗 2019年3月14日
日本共産党の和泉なおみ東京都議は12日の都議会予算特別委員会で代表総括質疑に立ち、豊洲市場(江東区)の水産仲卸売場棟内で採取した黒い粉じんに毒性の高い重金属が高濃度で含まれていると明らかにし、「閉鎖型施設で働く市場関係者の健康への影響が心配される。ただちに調査し対策を取るべきだ」と小池百合子知事に迫りました。
粉じんは共産党都議団が昨年12月上旬、水産仲卸売場棟4階で採取したもの。渡辺泉・東京農工大学教授の分析では、アンチモンが自然界の170倍、亜鉛が同96倍、カドミウムが同12倍など重金属を含んでいることが明らかになっています。
和泉氏は、アンチモンは毒性が強く、慢性毒性で気管支炎や胃腸障害、生殖障害、カドミウムは腎臓障害などを引き起こすことを指摘。閉鎖的な市場施設内でこれらの物質が滞留することは「慢性疾患を起こす可能性がある」と述べ、直ちに調査して実態を把握し、対策を取るよう求めました。
村松明典都中央卸売市場長は「法令に基づき大気中の浮遊物質を調査している」と答えましたが、和泉氏が繰り返し「重金属の調査はあるのか」とただしたのに対し、あると答えられず、重金属の調査は行っていないことが明らかとなりました。
小池知事は「報告を受け適切に対応するよう指示している」と述べ、和泉氏は「実態把握なしに適切な対応はできない」と重ねて調査を迫りました。