カルロス・ゴーン前日産会長が108日ぶりに保釈されることになりました。被告が全否認を貫いている中では異例なことと言われます。
折しも海外では、ゴーン被告の家族の弁護士が4日、被告の長期勾留を巡り国連の恣意的拘束に関する作業部会に人権侵害を申し立てたと明らかにしたばかりでした。同弁護士は記者会見で、「勾留やその厳しい環境は自白を強制するためのもので、推定無罪の原則は最初から踏みにじられてきた」と述べました。
保釈が認められたことは本人のためには勿論、海外における日本の司法制度への批判をこれ以上激しくしないうえでも喜ばしいことでした。
ゴーン前会長は、家族の仏代理人を通じて以下の声明を発表しました。
「厳しい試練の間、私を支援してくれた家族や友人たちに深く感謝します。推定無罪の原則と、公正な裁判のために闘ってくれた、日本や世界各地のNGO、人権活動家に感謝します。私は無実であり、いわれのない罪に対して、私自身をしっかりと守るために裁判に断固とした決意で臨みます。」
しかし保釈の条件は、保釈金10億円に加えて
「住居は日本国内に制限され海外への渡航は禁止。日産やルノーの取締役会には裁判所の許可があれば出席できる。住居の入り口に防犯カメラを設置し、録画の内容は定期的に裁判所に提出する。携帯電話はインターネットに接続せず、通話先の記録は裁判所に提出する」
などという極めて厳しいものです。
海外への逃亡や証拠隠滅を防止する必要はあるでしょうが、あまりにも個人の生活に干渉し、細事に渡るまでプライバシーを侵害するのはどうなのでしょうか。
検察は、被告に有利な証拠(内容を被告に開示することはありません)も含めて「あらゆる関係資料を証拠として没収」し起訴状をまとめます。それに対して、自己に有利な証拠資料を失った被告には保釈後も一切の「防御活動」を制限するというのは、「被告は推定無罪」の原則からいっても不公平です。
保釈の条件は形式的には裁判所が決めますが、日本には「判検一体(判事と検事は一体)」というあり得べからざる実態があるので、常に検察側に立った決定がなされます。
こうした問題も放置されることなく照明を当てられるべきです。
NHKのニュースを紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ゴーン前会長 約100日ぶり保釈へ 保釈金10億円納付で
NHK NEWS WEB 2019年3月6日
特別背任などの罪で起訴されている日産自動車のカルロス・ゴーン前会長について、東京地方裁判所は5日夜、検察の準抗告を退け、改めて保釈を認める決定をしました。保釈金は10億円で納付手続きが終われば、およそ100日ぶりに保釈される見通しです。
日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)は、みずからの報酬を有価証券報告書に少なく記載した金融商品取引法違反の罪や、日産の資金を不正に支出させた特別背任の罪で起訴され、去年11月の最初の逮捕以降、6日まで108日間にわたって身柄を拘束されています。
これに対し、ゴーン前会長の弁護士は先月、3回目となる保釈を請求していましたが、東京地方裁判所は5日正午ごろ、ゴーン前会長の保釈を認める決定を出し、5日夜、保釈に反対する検察の準抗告も退けました。
保釈金は10億円で、弁護士などによりますと、海外への渡航禁止や事件の関係者との接触禁止のほか、都内の住居の入り口に防犯カメラを設置し録画の内容は定期的に裁判所に提出することや、携帯電話はインターネットに接続せず、通話先の記録を裁判所に提出することなどの条件がつけられたということです。
また、日産やルノーの取締役会の出席については、裁判所の事前の許可が必要という条件がついたということです。
弁護士によりますと、10億円の保釈金は5日は納付できなかったということで、保釈金の納付手続きが終われば保釈される見通しです。
ゴーン前会長は、これまで全面的に無罪を主張していますが、勾留が長期化するなか、ことし1月にはルノーの経営トップを辞任し、みずからが築き上げた日産、ルノー、三菱自動車の3社連合の経営トップを退いていました。
ゴーン前会長「私は無実」 仏代理人を通じ声明
NHK NEWS WEB 2019年3月6日
日産自動車のカルロス・ゴーン前会長は、保釈を認める決定を受け、フランスの代理人を通じて声明を発表しました。このなかでゴーン前会長は、「私は無実だ」として、裁判でみずからの潔白を主張する姿勢を強調しています。
特別背任などの罪で起訴されている日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)について、東京地方裁判所は5日、保釈を認める決定を出し、保釈金の納付手続きが終わればおよそ100日ぶりに保釈される見通しです。これを受けて、ゴーン前会長は、家族の代理人を通じて声明を発表しました。
声明では、「厳しい試練の間、私を支援してくれた家族や友人たちに深く感謝します。推定無罪の原則と、公正な裁判のために闘ってくれた、日本や世界各地のNGO、人権活動家に感謝します」と感謝のことばを述べています。
そのうえで「私は無実であり、いわれのない罪に対して、私自身をしっかりと守るために裁判に断固とした決意で臨みます」として、裁判で、みずからの潔白を主張する姿勢を強調しています。
ゴーン前会長の保釈の決定をめぐっては、フランスのベルベ司法相が、「重要なのは、前会長が公正な裁判を受けることで、自由になることがより助けになるのであれば、よいことだと思う」と述べるなど、フランス政府からは歓迎の声が聞かれます。
一方で、ゴーン前会長がCEO兼会長を務めていたルノーのスナール会長は、日産などとの「アライアンスの協議にはなんの影響もない」と、冷静な受け止めを示しています。
(中 略)
仏閣僚「歓迎できる」「よいことだ」
カルロス・ゴーン前会長がCEO兼会長を務めていた自動車メーカー、ルノーの筆頭株主であるフランス政府の閣僚も保釈の決定について、コメントしました。
このうちルメール経済相は、地元ラジオ局のインタビューで、「自由の身になり、よりよく自分を守ることができるということは人道的な観点から歓迎できることだ」と述べました。
また、ベルベ司法相は、地元のテレビ局に対し、「重要なのはゴーン前会長が公正な裁判を受けることだ。そのために自由になることがより助けになるのであれば、よいことだと思う」と述べました。