2019年3月7日木曜日

NHKの国会報道が安倍首相のPR動画状態に

 NHKは常に政府側の非を隠蔽するか目立たないように報道すること腐心していて、公共放送であるにもかかわらず事実上政府の広報機関の役割果たしています。
 このことは多くの識者が指摘していることですが、最近では醍醐聰・東大名誉教授1月28日、NHKのニュース報道のあり方について、個人として意見書を出しています
 同教授が問題にしたのは、1月25日の「ニュース7」と「ニュースウオッチ9」で、前日の両院の閉会中審査で、厚労省の「不正調査」問題 特別監察委員会の調査のデタラメさが明らかになり、根本厚労相が再調査を約束する事態に追い込まれた件について、報道する順番が6番めと下位で、内容も「不適切な調査」の核心にあたる具体的事実を一切伝えなかったことです。
 
 このことに関してLITERAが、4日、5日のNHKの報道について詳しく検証した記事を出しました。その実態は著しく政府寄りに偏向したもので、そんな報道を公共放送の名で四六時中流されていては国民は真実とは異なる認識しか持てなくなります。
 官邸は数年も前から、国会審議の放送では必ず政府側の答弁を以て閉じるようにとNHKに要求してきましたが、ついにここまでNHKを政権に追従させることに成功しました。
 LITERAの記事を紹介します。
 
(追記)政府は3月5日、NHKがすべての番組をテレビやラジオ放送と同時に流す、常時同時配信を可能にする放送法の改正案を閣議決定し国会に提出しました。
 これは安倍首相がかねてから狙っていたインターネット放送を定着させるために、まず思い通りに動かせるNHKを使おうとするもので、彼にはインターネット放送を自分に有利に活用しようという目論見があると見られています。
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NHKの国会報道が安倍首相のPR動画状態に! 
辺野古、統計不正追及を報じず自民党質問への勇ましい答弁を大々的に紹介
LITERA 2019.03.06
  さすがにこれはひどいのではないか──。今週から国会では参院予算委員会がはじまったが、衆院予算委につづき、不正統計や辺野古新基地建設工事をめぐって安倍首相が無責任極まりない答弁を連発している。だが、そんな安倍首相のひどさに輪をかけて露骨に醜いことになっているのが、NHKの報道だ。
 
 たとえば、4日の『NHKニュース7』のトップニュースは「即位祝う一般参賀5月4日に」、つづく2番目の話題も「大戸屋 不適切動画で一斉休業」というもので、国会の話題は4番目。さらに目を剥いたのはその内容だ。
 国会では軟弱地盤が大きな問題となっている辺野古新基地建設工事について野党から質問が飛んだというのに、一切無視代わりに大々的に取り上げたのは、身内である自民党・堀井巌議員の質問に対する安倍首相の答弁だった。
 安倍首相が「日朝の首脳間の対話に結びつけていきたい」と答弁したことを受け、「拉致問題解決へ“日朝首脳会談 実現させたい”」と見出しに掲げたのである。
 また、この4日の放送では、続けて安倍首相がレーダー照射問題で「我々は真実を語っているし、真実を語るほうが必ず強い」と述べたことを紹介、「北朝鮮への対応は日米・日米韓の緊密な連携が極めて重要」という答弁を放送したのだが、これも実は、自民党・有村治子議員の質問に答えたものだった。NHKは有村議員の質問であることを隠していたが、ようするに、身内の与党の質問に、安倍首相が堂々と答えるシーンばかりを流したのだ。
 
 国会とは本来、政権や与党の暴走を野党がチェックする場であるはずなのに、与党の質問と安倍首相のPRのような答弁だけを流す。これは、国民の知る権利を妨害しているのはもちろん、放送法4条やNHK国内番組基準で謳っている「政治的公平」「不偏不党」にも反しているのではないか。
 昨日5日の『NHKニュース7』も同様だった。日産自動車のゴーン前会長の保釈を認める決定が出されたことがトップなのはまだしも、その後も探査機「はやぶさ」や来年の都知事選をめぐる二階俊博幹事長の発言の話題がつづき、やはり国会は4 番目の扱いで、しかも画面に映し出された見出しテロップは「米国が拉致問題重視“キム委員長も理解”」。さわりでさすがに統計不正問題の質疑を取り上げたが、特別監察委員会の委員長人事について共産党の小池晃議員に質問されたのに対し、「適格性に疑念を抱かせるようなものではない」「厚労省に手心を加えてくれるかもしれないから選んだのではなく、中立性を疑われることはない」と安倍首相が答弁した部分を紹介しただけで、小池議員の発言は一切放送しなかった
 
 そして、その後は拉致問題に話題が移り、安倍首相が日朝首脳会談でトランプ大統領が夕食会で拉致問題を提起したとして「金正恩・朝鮮労働党委員長もアメリカが拉致問題を重視していることを理解したと思っている」と成果を強調した部分や、「小泉総理が2002年に訪朝したときに5人の被害者が帰還できた。そうしたさまざまな経験も生かしながらあらゆるチャンスを逃さずに解決にあたっていきたい」という、嘘っぱちの“俺の手柄”自慢を放送してコーナーが締めくくられたのだ。
 辺野古の問題を取り上げないどころか、拉致問題における安倍首相の“やるやる詐欺”答弁を主題にして伝える──。これでは安倍首相のプロモーションビデオではないか。
 
安倍首相「私の方針だ」「気にくわないのか」暴言も報道しなかったNHK
 実際、昨日の国会では、NHKが報じなかった部分にこそ審議の核心があった
 たとえば、立憲民主党の福山哲郎議員の質疑では、沖縄の県民投票の結果にかかわらず土砂を投入することが安倍首相と岩屋毅防衛相とのあいだで決まっていたことが明らかになった。これは民主的手続きを踏んで実施された県民投票を愚弄する行為であり、「結果は真摯に受け止める」という説明は一体何なのかという話だ。
 だが、安倍首相は「結果については論評する立場にない」と壊れたテープレコーダーのように繰り返し、「普天間基地の全面返還を1日も早く実現するというのが安倍政権の基本方針。そのためには辺野古の基地が建設されなければならない。この方針を私は決めている」と答弁。つまり、この国では「私が決めた方針」が最優先されると言い放ったのである。
 
 しかも、統計不正問題では、NHKが取り上げた小池議員の質疑で安倍首相は信じがたい暴言を吐いたのだ。
 昨日5日の『ニュース7』では、共産党の小池晃議員が特別監察委員会の樋口美雄委員長の公正・中立性を問題視し、前述したように安倍首相が“樋口委員長は統計の専門家だから適格だ”と主張して終わったが、実際にはつづきがある。小池議員はこのあと「質問に答えてない」「国民からみて中立なのかということを訊いている」と追及したのだが、対して安倍首相はやはり同じ主張を繰り返す始末。これに野党理事たちが反発し審議は一時ストップしたのだが、再開されると、安倍首相はこう述べたのだ。
「私はお答えをしているつもりですよ? 私のお答えがですね、小池議員の気に食わないのかもしれませんが、私は誠実にお答えさせていただいていますよ!」
 質問に答えていないから追及されているのに、「気に食わないんだろう」と決め付ける。国会審議を冒涜する、総理大臣としてあるまじき暴言であり、これには金子原二郎・参院予算委員長も「言葉に注意してわかりやすく丁寧に答弁を」と注意をおこなったが、こうした国会審議に対する安倍首相の姿勢が如実にあらわれた部分を、NHKはニュースで伝えようとはしないのだ。
 
 いや、NHKは安倍首相にとって不都合な審議内容、答弁をカットしているだけではない。
 昨日の午前中の審議では、福山議員が参考人の樋口委員長に対して、特別監察委による追加報告書でおこなわれた自治体へのヒアリングの人数や対象者について質問したが、樋口委員長はまったく答えになっていない答弁を何度も繰り返した。それによって審議は何度もストップしたのだが、NHKは12時からの『NHKニュース』で、こう伝えたのだ。
「午前中の委員会では、福山氏が厚生労働省の統計問題をめぐる参考人の答弁に納得せず、たびたび質疑が中断しました」
 樋口委員長が質問に答えないから中断したのに、それがなぜか福山議員が納得せずに中断したと伝える。これではフェイクニュースではないか。
 
野党議員の水飲むシーンだけ切り取ったNHK『ニュースウオッチ9』
 じつは、NHKの報道をめぐっては、先週1日に放送された『ニュースウオッチ9』にもネット上で疑義を呈する声があがっている。それは根本匠厚労相の大臣不信任決議案で無所属の小川淳也議員がおこなった趣旨弁明の伝え方についてだ。
 小川議員は統計不正問題で追及の先頭に立ったひとりで、賃金伸び率が引き上げられた2018年の「毎月勤労統計」調査で日雇い労働者を調査対象から外していたことなど重要な指摘をおこなってきた。この日も、小川議員は約2時間にわたり、統計不正の問題点から不正が起こる組織のあり方にいたるまで、濃密な内容の趣旨弁明を展開した
 しかし、『ニュースウオッチ9』では、全体の内容とはかけ離れた切り取り方で報道。小川議員は趣旨弁明の冒頭で、総務省が最近おこなった統計の標語募集に対しネット上に寄せられた“皮肉の投稿”を読み上げたのだが、その部分だけをクローズアップし、挙げ句、小川議員が水を飲むシーンを挿入。「途中、何度も水を飲む姿に議長は」とナレーションを入れ、「少し早めて結論に導いてください」という議長の注意を紹介。結局、小川議員の趣旨説明は「ネットの書き込み」を読んだ部分だけが使われ、その上、自民党・丹羽秀樹議員による「審議引き延ばしのためのパフォーマンスだ」「国民の誰ひとりとして無駄な時間の浪費を望んでいない。どうして気付かないのか」という野党批判をつづけて放送したのである。
 約2時間も趣旨弁明をおこなったのだから、水を何度か飲むのは当然だろうが、NHKはあたかも小川議員がネットの書き込みを紹介しつづけるような中身のない話をしつづけ、水を飲むことで時間を稼いでいたかのように切り取った。そして、それに自民党議員の野党批判を重ねることで、「無駄な時間の浪費」がおこなわれたと印象付けたのだ。
 
 何かあると安倍首相は野党や民主党政権時代の批判をおこなうが、NHKがやっていることもそれと同じ。そのやり口は、産経新聞やネトウヨまとめサイトとほとんど一緒だ。これがこの国の公共放送の報道だというのだから、開いた口が塞がらない。
 しかも、こうした露骨な安倍政権擁護の報道姿勢は、夏の参院選に向けてますます強まっていくのは間違いない。最近では安倍首相の自民党総裁4選の噂も流れているが、国会審議さえまともに伝えられず、公共放送のニュース番組が安倍首相のPRに成り下がっている現実をみれば、そうなっても少しも不思議ではないだろう。 (編集部)