2019年3月20日水曜日

“玉砕”なのにひた隠し 大本営発表と化した日銀の国民騙し

 景気が急速に悪化し、経済指標は少なくとも6カ月~9カ月先まで、さらに悪化することを示しているということです。経済指標だけでな輸出も、消費も、急速に落ち込みはじめ訪日客鈍化し、春闘も低調でした
 景気後退局面に入った可能性が高く、もはやアベノミクスが失敗に終わったことは明らかです。政権側のメディアである日経新聞までアベノミクスに懐疑的な論調を載せはじめました。
 それなのに政府も日銀も、いまだに「景気の拡大基調はつづいている」と言い張っていて、日銀の黒田総裁15日、「設備投資は順調」「消費も堅調に推移している」「所得と支出の好循環がつづくシナリオは変わっていない」と述べました。正に戦前の大本営発表そのものです。
 
 日刊ゲンダイが「“玉砕”なのにひた隠し 大本営発表と化した日銀の国民騙し」とする記事を掲げました。
 
 アベノミクス失敗に終わ景気急速に悪化していることを、政府も日銀も分からない筈がありません。アベノミクスの失敗を認めて異次元緩和をやめれば、国債も株価も暴落し日銀は債務超過に陥るので動きが取れないのでしょうが、このままアベノミクスを続ければどんどん傷を広げるだけで、いずれ破綻して未曽有の経済危機を引き起こすことになります。
 もともと異次元緩和が最終段階でそうした事態に至ることは、当初から識者たちが指摘していたことです。安倍政権はそれを覚悟の上で踏み込んだ筈であり、そうでないのであれば驚くべき無能集団です。
 いずれにしても今更それが怖くて動きが取れないなどとは許されないことです。
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“玉砕”なのにひた隠し 大本営発表と化した日銀の国民騙し
 日刊ゲンダイ 2019年3月18日
 (阿修羅文字起こしより転載)
 予想されたことだが、足元の景気が急速に悪化している。先週発表された経済指標は軒並み落ち込んでいた。
 大企業の1~3月期の景況判断指数は、マイナス1.7と3四半期ぶりのマイナス。前回調査の10~12月期はプラス4.3だったのに、いきなり6ポイントのダウンである。
 
 1月の機械受注も、前月比5.4%のダウンだった。マイナスは3カ月連続。減少幅は市場の事前予測(1.7%ダウン)を大幅に上回ってしまった。景気の牽引役だった設備投資がガクンと落ち込んでいる形である。機械受注は、6カ月~9カ月先を示す先行指標とされるだけに、これから景気はさらに悪化する恐れが強い
 7日に発表された1月の景気動向指数も3カ月連続で悪化し、基調判断も「足踏み」から「下方への局面変化」へ下方修正されている。景気は後退局面に入った可能性が高いということだ。
 
 もはや、アベノミクスが失敗に終わったことは明らかだ。とうとう、日経新聞までアベノミクスに懐疑的な論調を載せはじめている。16日の1面トップ記事は衝撃的だった。「マイナス金利 経済冷やす?」の見出しをつけ、日銀の異次元緩和に疑問符をつけているのである。
<中央銀行が経済を刺激するために政策金利を0%未満にする「マイナス金利政策」に世界の有力な学者やエコノミストが疑問を投げかけている。導入した欧州と日本で経済の回復が弱いうえに、金融緩和として物価を上げる効果すら疑う説が出てきたためだ>と、異次元緩和を切り捨てているのだ。
 さらに、マイナス金利を導入したスウェーデンの例を挙げ、<預金の多い銀行ほど貸し出しが鈍ったという。金利がマイナス0.5%になると貸出金利は0.15%上昇し、国内総生産(GDP)は0.07%押し下げられるとした>と、日銀が導入しているマイナス金利にケチをつけている。
 
 アベノミクスの応援団である日経新聞が、ここまで批判するのはよほどのことだ。経済評論家の斎藤満氏が言う。
「マイナス金利は景気に悪影響という認識は正しいと思います。マイナス金利は銀行の経営を直撃しますからね。経営が悪化した銀行は、収益を上げるために貸出金利を上げざるを得ない。実際、ヨーロッパの銀行は上げています。結果的に引き締め政策になってしまう。日本の銀行は当局を恐れて貸出金利を上げていませんが、体力を消耗し、貸し出し余力を失っています」
 さすがに、日経新聞も景気の現状をみて、不況の元凶となるマイナス金利を放置できなくなったのではないか。 
 
アベノミクスを拡大することもやめることもできない 
 悪化しているのは、前述の経済指標だけではない。輸出も、消費も、急速に落ち込みはじめている訪日客需要も鈍化し、春闘も低調だった。いますぐアベノミクスを見直し、急いで手を打たないと日本経済は大変なことになる。
 ところが、政府も日銀も、景気悪化を認めず、いまだに「景気の拡大基調はつづいている」と言い張っているのだから、どうかしている。
 なかでもヒドイのが、日銀の黒田総裁だ。日銀の政策決定会合が開かれた15日、記者会見を聞いた国民は耳を疑ったに違いない。
「設備投資は順調だ」「消費も堅調に推移している」「所得と支出の好循環がつづくシナリオは変わっていない」「マイナス金利は効果を上げている」
 日経新聞まで「マイナス金利 経済冷やす?」と、疑問符をつけているのに、よくもヌケヌケと「マイナス金利は効果を上げている」などと口にできたものだ。経済指標が軒並み悪化しているのに、どうして「設備投資は順調」「消費も堅調」などと胸を張れるのか。
 
 政府と日銀の景気見通しは、本当は玉砕なのに「勝った」「勝った」と国民をだましつづけた戦前の大本営発表と同じだ。統計を偽装してまでアベノミクスが成功しているように見せているのも、戦前と変わらない。
 しかし「景気悪化」という事実を認めないと、正しい対策を打つこともできない。不況をこじらせるだけだ。どうして、安倍政権も黒田日銀も「景気悪化」を認めないのか。
 
「戦前、軍部の上層部が『この戦争には勝てない』と覚悟していたように、政府も日銀も『アベノミクスは失敗に終わった』『景気は急速に悪化している』と分かっているはずです。でも、戦前と同じように、いまさら間違いを認められないのでしょう。景気悪化を認めても、政府日銀には打つ手がない、という事情もあります。これ以上、異次元緩和を拡大したら副作用が大きすぎて、もっと景気を悪化させてしまう。かといって、アベノミクスの失敗を認めて異次元緩和をやめたら、国債も株価も暴落してしまう。前にも後にも進めない。だから『好循環はつづいている』と、現状を肯定するしかないのだと思います」(斎藤満氏=前出)
 戦前、日本は「勝った」「勝った」と大本営が嘘を発表しつづけ、焼け野原となった。このままでは、また同じ過ちを犯してしまう。
 
6年続けても庶民に恩恵はなかった 
 総裁もアベノミクスの失敗を認めるべきだ。ここまで経済指標が悪化しているのに、「景気拡大はつづいている」などと口にするのは許されない。そもそも、異次元緩和は2年の短期決戦だったはずである。6年もつづけているのは、失敗した証拠だろう。あの戦争も1年という短期決戦の予定ではじめたが、やめ時を見失い、ずるずると4年もつづけたため、原爆を2発も投下され、国土は焦土となってしまった。アベノミクスも、つづければつづけるほど傷を大きくするだけだ。いずれ、異次元緩和は限界に達し、ハイパーインフレなど、未曽有の経済危機を引き起こすのは目に見えている。
 なにより、6年もアベノミクスをつづけたのに、庶民の暮らしは少しもよくなっていない。「トリクルダウン」など、最初からなかったのだ。結局、儲かったのは、大企業と富裕層だけである。
 
 安倍首相は二言目には「雇用が改善した」と成果を誇っているが、求人が増えたのはアベノミクスの効果ではなく、急速な少子高齢化で働き手が減ったためだ。株高にしたって、公的資金で爆買いしているだけのことだろう。
 
 筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)がこう言う。
「アベノミクスの結果は、国民の85%が『景気回復を実感していない』と答えていることに表れています。ポイントは労働者の実質賃金が減っているということです。アベノミクスが失敗した原因は、6年たっても第3の矢である“成長戦略”を打ち出せなかったことと、国民の将来不安を解消できなかったことです。成長戦略が“原発輸出”なのだから話になりません。将来不安さえ解消できれば、国民は安心して消費するのに、安倍政権は福祉を削り、格差を拡大させ、逆に将来不安を強めているのだから最悪。消費性向は69%までダウンしています。失敗が分かっているのに、『アベノミクス、この道しかない』と突き進む安倍首相は、勝てない戦争に突き進んだ戦前の軍部と同じです」
 
 中国の景気が冷え込んだため、ボロ儲けしてきた大企業の収益も悪化しはじめている。庶民はアベノミクスの恩恵を受けないまま、深刻な不況に直面する可能性が高い。