2019年3月6日水曜日

「辺野古問題」について全国で議論を

 琉球新報が3日に報じた「沖縄県民投票・全国知事アンケート結果」は極めて残念なものでした。
 回答を得た43人の知事中、「日米政府は結果を尊重すべき」と思うと回答したのは静岡県の川勝平太知事1人(回答準備中で締め切りに間に合わなかった岩手県の達増拓也知事は2月28日の会見で「投票結果を重く受け止めるべきだ」と述べました)でした。
「普天間飛行場の移設受け入れを検討できる」と回答した知事はいませんでした。
 
 琉球新報はこの結果を「残念だ」として、「全国の知事の態度は、沖縄県民が示した新基地建設反対の民意に向き合っているとは言い難い」と述べました。
 そして辺野古移設問題のボールは日米両政府や本土の国民に投げられたものの、安倍政権は埋め立て工事強行していることに、「こうした態度を示す政府を支えているのは本土の有権者だ。安倍政権を選挙で選んだ責任がある。 今、工事の強行を黙殺することはなおさら許されない」と述べました。
 
 本土の人たちは「結局は他人事と感じている」ことを暗に、しかも厳しく指摘するものです。
 琉球新報の社説を紹介します。
 
 それとは別に辺野古の新基地建設で、立石雅昭新潟大名誉教授ら専門家十数人の調査により、活断層がある可能性が高いことが分かりました。
 立石氏は辺野古弾薬庫に触れ「基地に保管、貯蔵される軍事物資の中身によっては、住民の命が脅かされる。安全性を含め住民の合意を得ることが基本だ」と工事を強行している政府を批判しました。
 それに関する琉球新報の記事を併せて紹介します。
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<社説> 県民投票の県外反応 「辺野古」全国で議論を
琉球新報 2019年3月5日
 本土の国民の意識が問われる番である。
 
 名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票で投票者の7割超が反対の意思を示した。沖縄を除く46都道府県知事を対象に本紙が実施したアンケートで日米政府は結果を尊重すべきかを聞いたところ、回答を得た知事43人中「そう思う」と答えたのは静岡県の川勝平太知事、1人だけだった。
 未回答の岩手県の達増拓也知事は会見で「(結果を)重く受け止めるべきだ」と述べたものの、28人は回答を控え、14人は「どちらとも言えない」と答えた。
 米軍普天間飛行場の代替施設の受け入れを検討できるかとの問いに「検討できる」と回答した知事はいなかった
 
 残念だ。全国の知事の態度は、過重な米軍基地負担を背景に県民が示した新基地建設反対の明確な民意に向き合っているとは言い難い。民主主義の担い手であるはずの都道府県トップの政治家がこのような意識でいいのか。
 そもそも知事選や国政選挙など節目の選挙で辺野古新基地反対の民意を示してきた県民が、県民投票で改めて意思を示さなければならなかったのは、普天間飛行場の代替施設を本土側が受け入れないことが大きな理由の一つだ。
 
 複雑な心情や分断の痛みを伴いながら県民投票を実施した大きな狙いの一つは、明確な民意を示すことによって全国的な議論を喚起することだった。
 玉城デニー知事は1日の日本外国特派員協会での会見で国民全体で議論するよう呼び掛けた。辺野古移設問題のボールは日米両政府や本土の国民に投げられたのだ
 ところが安倍晋三首相は結果を「真摯(しんし)に受け止める」と述べながら、埋め立て工事は強行したままだ。言行不一致も甚だしい。岩屋毅防衛相に至っては、国会の答弁で「一部に反対のご意見があることも承知している」と述べ、7割超が反対した民意を「一部」と断じ、矮小(わいしょう)化した。
 こうした態度を示す政府を支えているのは本土の有権者だ。安倍政権を選挙で選んだ責任がある。無理解・無関心は無責任だ。県民投票で沖縄の明確な民意が示された今、工事の強行を黙殺することはなおさら許されない。
 
 憲法学者の小林節慶応大名誉教授は「県民投票には憲法上の拘束力がある。政府は憲法の趣旨に従って『少なくとも県外への移設』を追求すべき義務がある」と述べている。重要な指摘だ。政府も本土の国民も、この憲法上の拘束力を認識すべきだ。
 
 一方、東京都の小金井と小平の両市議会は普天間の代替施設の必要性や移設先について国民的議論を求める意見書を可決した。この動きが全国に広がってほしい。一人一人が沖縄の基地問題をわが事として捉え、活発な議論を繰り広げることで、全国で理解が深まることを切望する。
 
 
辺野古、活断層の存在明確に 地層、隆起から専門家が判断
琉球新報 2019年3月5日
 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、立石雅昭新潟大名誉教授(地質学)ら専門家十数人の調査団が1日から4日間、建設現場周辺の地質を調査した結果、活断層がある可能性が高いことが分かった。米軍キャンプ・シュワブを挟んで東側の大浦・安部地域と西側の辺野古・豊原地域の地層が異なっていることや地形の隆起状況から、両地域の境に活断層がある可能性が高いことも判明した。立石氏は「存在の証しを得られた」と述べており、活断層の存在が、より明確になった。
 
 これまで新基地建設予定地の近くの陸上部には「辺野古断層」と「楚久断層」の断層2本の存在が指摘されてきた。県は昨年8月に埋め立て承認を撤回した際、活断層の存在を根拠の一つに挙げた。立石氏は、活断層が海域まで延びていることを確認する本格的調査を県に求める考えだ。
 
 立石氏は、活断層とみられる断層の活動度はA~Cの3段階のうちB級(千年当たりの平均的なずれが10センチ以上1メートル未満)と推測する。数千年周期で動くレベルだとした上で、今後の周期などを詳細に調べる必要があると指摘した。
 
 新潟県の原発の安全に関する技術委員も務める立石氏は辺野古弾薬庫に触れ「基地に保管、貯蔵される軍事物資の中身によっては、(活断層の活動による被害で)住民の命が脅かされる。安全性を含め住民の合意を得ることが基本だ」と工事を強行している政府を批判した。一方、東北大講師の遅沢壮一氏(地質学)は「辺野古断層」は、2万年前かそれよりも新しい時期に動いたもので、今後動く可能性が高い「極めて危険な活断層」と指摘している。