政府が20日に公表した3月の月例経済報告は、景気全体については「このところ輸出や生産の一部に弱さもみられるが、緩やかに回復している」というもので、「生産」については「一部に弱さがみられ、おおむね横ばいとなっている」というものでした。
いずれも前回の報告と比べると「下方に」修正された表現になってはいますが、『緩やかに回復している』の文言は死守しました。しかし言葉を取り繕ってみても実態に即していなければ何の意味もありません。
共産党の志位委員長は街頭演説先で記者の質問に答え、「いまの経済情勢からしても、消費税10%増税は自殺行為になる」、「消費税増税の方針は八方ふさがりの状態だ」、「経済の足腰を壊してしまうような増税はいよいよもってしてはならない」と述べました。
基本的には政府寄りの「現代ビジネス」にも、「このまま消費増税をすれば『日本経済の底が抜ける』 ~ 」と題した記事が載りました。
安倍政権は、参院選の前に選挙戦術として消費税増税延期を打ち出すのではないかという見方は依然としてありますが・・・
しんぶん赤旗と現代ビジネスの記事を紹介します。
(関係記事)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
景気悪化の可能性 消費税10%増税は自殺行為
月例経済報告 志位委員長が強調
しんぶん赤旗 2019年3月22日
日本共産党の志位和夫委員長は21日、政府の月例経済報告(20日発表)が景気全体の判断を3年ぶりに下方修正したことについて、「内閣府の景気動向指数が3カ月連続悪化し、景気判断を下方修正したことに続いて、月例経済報告でも、3年ぶりに景気判断が下方修正となり、政府自身が景気悪化の可能性を認めた。いまの経済情勢からしても、消費税10%増税は自殺行為になるということを強く言いたい」と、消費税10%増税中止を求めました。
横浜市内での街頭演説後、記者団に問われて答えました。
志位氏は、国内景気、とくに家計消費が冷えこみ、実質賃金もマイナスであることに加えて、中国、EU、米国と世界の景気が減速状態になっているもとで「消費税増税の方針は八方ふさがりの状態だ」と強調。「この状況のもとでやるべきは、外需頼みをやめて、内需を活発にする。とくに内需の中心である家計を応援し、経済の足腰を強くする。そういう政策をとるべきであって、この足腰を壊してしまうような増税はいよいよもってしてはならない」と強調しました。
このまま消費増税をすれば「日本経済の底が抜ける」3つの論拠
消費冷え込み、企業も減収トレンドへ
磯山 友幸 現代ビジネス 2019年3月21日
経済ジャーナリスト
今年10月が最後のチャンスか
10月からの消費増税を控えて、日本の国内消費が一向に改善しない。それどころか、これまで消費を下支えしてきた訪日外国人観光客による「インバウンド消費」にも陰りがみられ、高級品消費なども落ち込んでいる。
給与がなかなか増えない中で、若年層の可処分所得が思ったように増えず、消費に結びついていないのだ。このまま消費増税を行えば、日本経済の底が抜けることになりかねない。
消費増税を行うとすれば、2019年10月のタイミングしかない――。首相官邸も財務省もそう考えてきた。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、建設需要などが底堅いうえ、増税による消費の反動減が起こっても、オリンピックを目がけてやってくる外国人観光客の「特需」で吸収できる、というわけだ。
さらに、プレミアム付き商品券の発行など反動減対策を行えば、消費増税の影響を小さくできる、というわけである。
ところが、増税を待たずに、消費が腰折れしそうな気配なのだ。普通ならば増税前の駆け込みで消費が膨らみそうなものだが、実施まで半年に迫ったのに駆け込みが本格的に始まらないのである。
日本百貨店協会が発表した1月の「外国人観光客の売上高・来店動向」によると、全国の百貨店で免税手続きをして購入した客数は42万人と前年同月比0.8%増えた。2013年2月から72カ月連続の増加だが、伸び率は大幅に鈍化している。
また、免税で購入された品物の総売上高は262億7000万円と、7・7%も減った。対前年同月比でマイナスになったのは、2016年11月以来、26カ月ぶりのことだ。
前月の2018年12月は免税売上高が302億円に達していたので、これと比べると13%減の大幅マイナスである。
中国特需、はげ落ちる
いったい何が起こったのか。ひとつは中国の景気減速で、日本にやってくる中国人観光客が頭打ちになってきたこと。もうひとつ大きな事は、中国政府が国内に持ち込む免税品の規制を強化したことである。
これまで中国からの訪日客の中には、他人から頼まれた商品を日本で買って帰る代理購入をする人が少なからずいた。それを専門の商売としている人もおり、「爆買い」の大きな要因になっていたのだ。
今年1月から、空港での荷物チェックなどを一気に厳格化したことから、日本に代理購入を目当てにやってくる人も減少、日本の百貨店での免税売り上げも大きく落ち込んだというわけだ。
百貨店で免税購入した人の、ひとり当たり単価も、昨年12月の6万8000円から、6万3000円に急減した。これも「爆買い」減少の影響とみられる。
もっとも、この規制強化に関係なく、免税手続き売上高の伸びは、昨年秋ごろから鈍化していた。2018年8月までは前年同月比2ケタの伸びが続いていたのだが、9月以降12月まで1ケタの伸びになっていた。そして1月に遂にマイナスになったわけだ。
これには昨年後半からの中国経済の鈍化が影を落としている。米国との貿易戦争によって、中国の輸出企業が大きな影響を受け、生産を減らすなどの対応を取っている。これによって、中国の経済成長が急速に鈍化しているのだ。
その影響は、むしろ日本国内の製造業に表れている。財務省が発表している貿易統計の2018年12月分で、中国向けの輸出が11月の前年同月比0・3%増から一転して7・0%減へと急ブレーキがかかったのだ。
中でも、半導体製造装置の輸出は数量ベースで42・1%減、金額ベースで34・3%と大きく落ち込んだ。中国製造業の「異変」が日本の統計数字に表れたのである。
また、機械受注統計をみても、「外需」は10月の9・5%増、11月の17・6%増と好調に推移していたものが、12月と1月はともに18・1%減と大きくマイナスになった。2月の統計数値が発表されている工作機械受注は29・3%減となり、5カ月連続のマイナスになった。外需産業を中心に国内企業の景気が一気に悪化しているのである。
企業は3期ぶりに減益へ
日本経済新聞社の昨年秋段階の集計では、2019年3月期の企業収益は、かろうじて増益になるとされていたが、2月以降の集計では、3期ぶりの減益になるとの見方に変わっている。
企業収益の悪化は、給与の伸び率の低下などに直結する。安倍首相が目指してきた「経済の好循環」、企業収益の伸びの結果、給与が増え、それが消費増につながるという期待が、水をさされる結果になりつつある。
1月の百貨店売上高をみると、大阪が3・8%減と大きくマイナスになっている。前述のようにインバウンド消費が落ち込んでいることが大きい。天候が悪かった昨年7月や、関西空港が一時閉鎖になった9月を除くと、マイナスになったのは2016年12月以来。完全に潮目が変わったとみていいだろう。
もっとも、インバウンド消費の落ち込みだけが、消費減退の原因ではない。
百貨店売上高から免税売上高を引いた「実質国内売上高」を比較しても、1月は4・3%の減少と大きく落ち込んでいる。
ここ数年堅調だったハンドバッグなどの「身の回り品」が2.4%減、時計や宝石といった「美術・宝飾・貴金属」が2・2%減とマイナスに転じていることが目を引いた。
百貨店売り上げで見る限り、消費には一向に明るさが見えて来ないのだ。
果たして、このまま10月の消費増税に踏み切って、大丈夫なのであろうか。財布のひモが今よりも固くなり、本格的に消費が減退することになれば、経済の好循環ならぬ、経済の逆転悪循環が始まることになりかねない。