自民党の公約・政策等評価委員会(委員長・岸田政調会長)は7日、「2017年衆院選政権公約の検証結果」について、全257項目の9割超・240項目で成果が上がっていると総括しました。耳を疑う話です。詳細が公表されず客観性を欠いた検証に党内からも「自画自賛だ」という声が上がっています。
会合で「大事なことは夏の参院選にどう生かしていくのかだ」と強調した岸田氏から報告を受けた安倍首相は、「画期的だ」と評価し、夏に予定されている参院選の公約策定作業に早期に入るように指示したということです。
語るに落ちた話で、参院選で詳細の説明はないままに「衆院選挙公約の90%以上を達成した」と大宣伝するであろうことは目に見えています。
それにしてもいまも国会で賃金やGDPなど、アベノミクスの偽装が様々にあばかれている中で、よくも鉄面皮なことが出来たものです。自民党の自己評価は、傲慢と無恥であざなわれるもののようです。
LITERAと時事通信の記事を紹介します。
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安倍自民党が「公約の9割成果」と厚顔無恥の発表!
ならば、2017年総選挙の公約と結果を検証しよう
LITERA 2019年3月14日
「アベノミクス偽装」が発覚し、安倍政権が喧伝してきた「アベノミクスによる好景気」への不信感が高まる昨今。内閣府の「景気動向指数」も3カ月連続で悪化、景気は後退局面に入ったと見られているが、安倍首相はなおも「全国津々浦々に景気回復の暖かい風が届き始めており、確実に経済の好循環が生まれている」などと強弁している。
そんななか、目を疑うようなニュースを時事通信が11(7?)日に報じた。自民党が2017年の衆院選で掲げた政権公約を検証した結果、公約の9割超で成果が上がったとし、岸田文雄政調会長がその結果を安倍首相に報告。安倍首相は「画期的だ」と評価し、夏に予定されている参院選の公約策定作業に早期に入るように指示したというのだ。
選挙公約の9割で成果を出した……? それが事実なら「画期的」だが、ほんとうなのか。そこで2017年総選挙での自民党の選挙公約を確認したのだが、あらためて見てみると、国民を騙す詐術に溢れるツッコミどころが満載だったのだ。
そもそも、2017年の総選挙は、突如、安倍首相が「北朝鮮の脅威」「少子高齢化」が「国難だ」と宣言し、臨時国会冒頭で衆院を解散するという「大義なき解散」によって実施された。もちろん、自民党が選挙公約パンフレットで、いの一番に掲げたのも、「北朝鮮の脅威から、国民を守り抜きます」というもの。その中身は、こうだ。
〈北朝鮮に対する国際社会による圧力強化を主導し、完全で検証可能かつ不可逆的な方法ですべての核・弾道ミサイル計画を放棄させることを目指すとともに、拉致問題の解決に全力を尽くします。〉
いまとなっては笑うしかない、痛すぎる公約だろう。たしかに安倍首相は韓国大統領府が文在寅大統領と金正恩委員長の南北首脳会談合意を発表したときでさえ、国会で「圧力を最大限に高める」と言い放った。だが、国際社会は対話路線を選択し、日本だけが「蚊帳の外」に置かれるという赤っ恥をかく始末。もはやこの公約は安倍政権に「外交センス」が決定的に欠如していることを証明するものでしかなく、もしこれを「成果を出した」公約のなかにカウントしているとしたら、とんだお笑い草だ。
いや、もっと醜いのは、選挙公約で2番目に掲げた「アベノミクスの加速で、景気回復・デフレ脱却を実現します」だろう。
このとき、安倍自民党は「アベノミクス5年間の実績」として、デカデカと〈名目GDP過去最高50兆円増加〉と謳っているが、国会でも取り上げられたように、2016年12月にGDPの計算方法を変更し、それによって名目GDPを大幅にかさ上げしたのが現実。ようするにこの公約は「アベノミクスを偽装することで加速しているように見せかけ、景気回復・デフレ脱却を演出します」の間違いだったわけだ。だいたい、公約パンフでは具体的に〈力強い消費を実現し、経済の好循環を完遂します〉とも書いているが、2018年の家計消費支出は増税前の2013年の水準を下回っている状態。公約はまったく実現していない。
また、はっきりとした「公約」違反は、これだけではない。その筆頭が、「さらに復興加速へ」というものだ。
この公約では、福島県について〈国が前面に立って中長期的、計画的な見通しのもとに支援を継続し、避難しておられる方々が安心して帰還できるよう取り組みます〉と書いているが、実際にやっていることは今月末で自主避難者への家賃補助を打ち切るなど、切り捨て政策によって帰還を促すだけ。戻るにも、放射線量の問題や病院・商業施設などの整備が進まないことの不安から帰還できない人が多いのが実態で、もし安倍自民党が強引な避難指示解除による帰還をもって「公約を実現した」と言うのであれば、信じがたい鬼畜だ。
嘘だらけの成果宣伝で参院選勝利、そして安倍4選のシナリオが
ついでに触れておくと、自民党は2017年に「みんなへの約束」という子ども向けの絵本調パンフも作成しているのだが、このなかでは〈世界的にも有名な日本の自然環境を守〉るだの、〈いつ起こるかわからないあらゆる自然災害への対策を完璧に〉だのと綴っている。沖縄の民意を無視して辺野古の海に土砂を投入したり、災害が起こっている最中に「赤坂自民亭」なる身内の宴会を開き、参加議員いわく「酒飲んでワァー」としたり、非常災害対策本部をなかなか設置しなかったことは、はたして子どもたちへの公約違反には当たらないのだろうか。
選挙公約のなかには、たしかに「働き方改革」のように実行したものもある。だが、それも公約では〈働く皆さんの様々な声に耳を傾け(中略)「働き方改革」を実行します〉と書いている。「働き方改革」のなかの「高度プロフェッショナル制度の創設」では、労働者へのヒアリングはたったの12名、そのうち9名は後付けでおこなっていたことが発覚したように、「様々な声に耳を傾け」などしなかった。しかし、これも安倍自民党は「公約の実現」というのだろう。
もちろん、「憲法改正」をはじめ、自民党の選挙公約には実現などしなくていい公約も山ほどあるが、偽装された数字の上に打ち立てられた経済政策や、「蚊帳の外」の失敗外交まで「成果を上げた」とするのは、国民を騙した上にまた騙すようなものだ。
しかも、安倍首相が「画期的だ」と自画自賛したように、「成果を上げた公約」の内訳は明かさないまま、夏の参院選で「自民党は9割も公約を実現した」「安倍首相ならではのスピード感」などとでっち上げる可能性も十分考えられるだろう。
「安倍総裁4選」などという恐怖のシナリオを封じるためにも、選挙公約の嘘や詐術を見破り周知徹底させることは重要だ。参院選に向けて、これ以上、安倍自民党に騙されないための「安倍自民党の嘘」キャンペーンが必要だ。 (編集部)
衆院選公約、9割超で「成果」 検証に冷めた声も-自民
時事通信 2019年3月7日
自民党は7日、公約・政策等評価委員会(委員長・岸田文雄政調会長)の会合を開き、2017年衆院選で掲げた政権公約の検証結果をまとめた。全257項目の9割超について成果が上がっていると総括。ただ、詳細は公表せず、客観性を欠いた検証に党内からも「自画自賛だ」(中堅)と冷めた声が漏れている。
岸田氏は会合で「大事なことは夏の参院選にどう生かしていくのかだ」と強調。同党は近く、作業チームを発足させ、参院選公約策定に着手する。
評価委では、公約を「完了または、さらなる成長が見込まれる」から「未着手または効果不十分」までS、AA、A、B、Cの5段階で評価。達成度とは別に、各部会が力を入れる項目にはG評価を与えた。
その結果、「変化・影響・成果が出始めている」としたA以上とGを合わせると計240項目に上り、全体の93.4%を占めた。成果不十分と位置付けたB判定以下は、計17項目だった。具体的に、どの公約をどう判定したかは明らかにしておらず、新藤義孝政調会長代理は「あくまで内部資料だ」と説明した。