2019年3月4日月曜日

米は 早急に日米二国間貿易交渉を開始したいと

 オバマ大統領時代に米国が主導したTPP参加の前段として行われた日米二国間協議で、日本は自動車関税問題をはじめとして、米国の要求を殆どすべてなすすべもなく飲まされました。その屈辱の自覚があったのか、安倍首相は米国を除くTPP11の成立を目指す過程では、米国との二国間協議は拒否すると言い続けて来ました。
 ところが昨年9月の日米首脳会談では、再びなすすべもなく日米自由貿易協定(FTA)の協議の開始を約束させられました。さすがに体裁が悪かったらしく、国内向けに発表した共同声明ではFTAと呼ばずに、ありもしない「物品貿易協定」(TAG)という言葉で誤魔化しましたが、米国は一貫して日米FTA協定との表現を用いています。
( ※ Trade Agreement on goods の頭文字 )
 
 国内では人事権の掌握により官僚への恐怖政治が完成しているので、安倍首相がどんなにデタラメをいっても役人は辻褄を合わせてくれますが、外交関連でそんなことが通用する筈がありません。多分ひとまずそれで当座をしのげれば良いという考えなのでしょうが、愚かなことです。
 何よりも「共同声明(原文)」では「物品以外は対象外」とはなっておらず、「物品およびサービスを含むその他重要分野」といわゆる「非関税障壁」にも言及されています。日本に逃れるすべはありません。
 
 そしてついに恐れていた事態が到来しました。ライトハイザー米通商代表が227米議会で「日本との貿易交渉入りを3月にも始めたいと明言しました。米政権は農産品の市場開放のほか、日本からの自動車輸入の抑制や対米投資拡大、さらには非関税障壁の撤廃、円安操作の禁止(為替条項)を求めています。
 安倍政権がもしも「売国政権」でないというのであれば、それが証明できるのか注目されます。
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米朝合意ならず(安倍首相を待ち受ける不合理な日米交渉)
天木直人のブログ 2019年3月2日
 米朝首脳会談が不調に終わった事については、その後も書くことに事欠かないが、ひとまずこれで終わりにしたい。
 米朝首脳会談が不調に終わった大騒動の裏で、見過ごされている大きな問題がある。
 その一つがライトハイザー米通商代表が2月27日に行った米議会発言だ。日本との貿易交渉入りを3月にも始めたいと明言した。
 菅官房長官は28日の記者会見で、「いつ、どこで開催するか、具体的な調整はこれからだと聞いている」などととぼけているが、大慌てだろう。
 非核化をめぐる米朝交渉は、当分凍結せざるを得なくなった。
 3月1日に終わらせるはずだった米中貿易交渉も、延期に次ぐ延期で、合意のめどが立たないままだ。
 そのいずれも、ロシア疑惑で弱り目のトランプの手には負えない。
 いまのトランプが唯一成果をだせるのは日本との交渉だ。
 
 当初は中国との貿易交渉を終えてから日本を攻めると言い出し、だから日本は呑気に構えていたのに、今度は、いつ終わるかわからなくなった中国との交渉を待たずして、日本との交渉を始めると言い出したのだ。
 それだけならまだいい。
 いまのトランプにとって、何一つ成果を出せない中で、日本との貿易交渉の成功は待ったなしだ。
 中国はもとより、北朝鮮すら一筋縄ではいかなかった。
 
 しかし、日本だけは脅せば何でも言う事を聞く。
 当然ながら米国は日本に目一杯要求をぶつけ、満額回答を迫るだろう。
 単なる農産品開放にとどまらず自動車開放要求は必至だ。
 自動車関税にとどまらず数量規制を求めて来る事は必至だ。
 それどころか為替条項を求めて来る。プラザ合意の二の舞だ。
 それだけではない。中国への技術移転を阻止する様々な規制を日本に求めて来るだろう。
 いわゆるココム、すなわち対共産圏貿易規制の中国版だ。
 米中協議でまとまらなかった問題のツケを日本に押しつけて来る。
 いまの安倍政権ではまともな対米交渉は出来ない。
 安倍外交が窮地に立たされるのは日米経済交渉が始まる時である(了)
 
 
米通商代表、3月にも訪日へ 貿易交渉の早期開始に意欲  
日経新聞 2019年2月28日
【ワシントン=鳳山太成】米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は27日、米議会下院の公聴会で、日本との貿易交渉について3月にも日本を訪れて初会合を開きたい意向を表明した。米国を除く11カ国の環太平洋経済連携協定(TPP11)などが発効して牛肉など米農産品が日本向けの輸出競争で不利になっており、交渉を急ぐ必要があると強調した。
 
ライトハイザー氏は「日本を含むアジア各国で為替の問題がある」と述べ、競争的な通貨切り下げを制限する為替条項を議題に含める可能性を示唆した。茂木敏充経済財政・再生相と開く閣僚級の初会合は、まず交渉範囲を決める見通しだ。
 
2018年12月~19年2月にそれぞれ発効したTPP11や日本・欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)に触れ「日本と交渉を始める緊急性が大きい」と指摘した。米国は議会手続きを終えて19年1月以降いつでも交渉を始められる状態だ。
日本政府は5月下旬のトランプ大統領訪日を前に、4~5月に閣僚級の会合を開く方向で調整している。米政権は農産品の市場開放のほか、日本からの自動車輸入の抑制や対米投資拡大、非関税障壁の撤廃を求めている。