この春、業界団体ごとに主要企業が横並びで牛乳や即席麺、清涼飲料、冷凍食品などの値上げを発表しています(値上げは3月1日、4月1日、6月1日等)。この一斉値上げの音頭を取っているのが安倍政権であることが、20日の共産党・山下芳生参院議員の追及で明かにされました。
消費税増税前の駆け込み購入は、消費者の知恵というよりは止むを得ない自己防衛なのですが、消費税増税前の「駆け込み需要を防ぐため」に、事前に値上げしておくことを政府自身が推奨していたのでした。安倍首相が認めました。
いわば業界カルテル的な値上げを、政府自身が自分たちの都合から業界に推奨したもので違法行為です。しかもその値上げ率は2~20%にも及び消費税のアップ分2%をはるかに上回ります。仮に税率アップ実施時に2%値下げしたにしても、その実態は政府主導の大幅値上げです。
それをこともあろうに倹約するには限度がある飲食料品で行うというのは、なによりも庶民を苦しめるもので、重ね重ね許されないことです。物価上昇をめざすアベノミクスが最悪の形で暮らしを破壊しようとしています。
逆進性が強く弱者をいじめる消費税は廃止されるべきもので、その税率をアップすることは許されません。政府は消費税率をアップさせる口実に、増税分は全額社会保障に回すという言い方をしますが、それは全くのデタラメです。
経済学者・植草一秀氏の指摘によれば、消費税が初めて導入された1989年度と2016年度の税収構造を比較すると、所得税収、法人税収、諸費税収の推移は下記の通りです。
所得税 21.4兆円 → 17.6兆円 ( 3.8兆円 減 )
法人税 19.0兆円 → 10.3兆円 ( 8.7兆円 減 )
消費税 3.3兆円 → 17.2兆円 (13.9兆円 増 )
法人税と所得税は合計で12.5兆円減り、消費税だけが14兆円近く増えています。つまりこの27年間、消費税率がアップして税収が増えた分、法人税と所得税を減税してきたということで、それこそが消費税を創設し、その税率を定期的にアップしようとする目的なのです。
本来、政治には経済の奔流を堰き止める機能が託されている以上、庶民への思いが欠如し庶民生活について無知な人間は政治家になるべきではありません。安倍内閣にこれ以上政権を委ねることは出来ません。
しんぶん赤旗の記事を紹介します。
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増税前の一斉値上げ 安倍政権が音頭 欧州企業の値上げ絶賛
首相、推進認める
しんぶん赤旗 2019年3月29日
安倍晋三首相が消費税率10%への増税前の商品値上げを推奨していることを国会で認めました。「駆け込み需要を防ぐため」に増税前に商品の価格を引き上げておくという欧州企業の「工夫」を絶賛した上で、「わが国でもそういう対応をとっている」と答弁したのです(20日、参院総務委員会)。この春、業界団体ごとに主要企業が横並びで飲食料品を値上げする事態となっています。この異常な一斉値上げの音頭を取っているのは安倍政権であることが明白になりました。(清水渡、杉本恒如)
政府と財界一体
首相の見解をただしたのは日本共産党の山下芳生参院議員です。牛乳や即席麺、清涼飲料、冷凍食品などの値上げ発表が相次いでいると指摘。政府が昨年11月に「消費税率の引上げに伴う価格設定」についてのガイドライン(指針=別項)を出して増税前の値上げを推奨しているのは「消費者に大打撃」になると批判しました。安倍首相は次のように答え、「国」が増税前値上げの旗振り役を務めてきたことを全面的に認めました。
「(欧州では増税前の)駆け込み需要を防ぐためにある意味価格を引き上げ、そして消費税が上がった後もその価格を維持することによって消費が落ちないような、そういう工夫をそれぞれ(企業が)自主的な判断で行っているということに鑑み、わが国でもそういう対応をとっている」
本紙の調べでは ▽日本乳業協会8社が4月1日に牛乳などを値上げ ▽日本アイスクリーム協会5社が3月1日に値上げ ▽日本即席食品工業協会10社が6月1日に即席麺などを値上げ ▽全国清涼飲料連合会4社が5月1日にペットボトル飲料を値上げ ▽日本冷凍食品協会2社が3月1日に値上げ ― という業界横並びの一斉値上げが発表されています。各業界団体は会員企業に対して政府の価格改定指針を周知したことを認めています。
経団連は昨年12月、会員企業に「お知らせ」を出し、政府指針の「趣旨を踏まえた対応」を求めました。その際、関係省庁からの「協力依頼」文書も公表しました。文書は「駆込み需要・反動減といった経済変動を可能な限り抑制する観点から」政府指針を周知するよう「格別の」協力を求めています。
政府・財界が一体になって消費税増税前の一斉値上げを推進しているのです。
消費税増税と二重負担
値上げが発表されている飲食料品は、消費税増税が強行されても、税率が8%に据え置かれる可能性が高いものばかりです。値上げ幅は2~20%にも及びます。政府指針が便乗値上げを促した疑いがあります。
飲食料品の大幅値上げと、それ以外の商品の消費税増税という、二重の負担増が消費者に襲いかかります。
内閣府の景気ウオッチャー調査(2月調査)によると、多くの事業者が値上げの影響を不安視しています。
「今春より各食品メーカーが値上げを発表する。閉塞(へいそく)感は強まるばかりである」(コンビニ店舗管理)
「食料品等の値上げが報道されており、商店街の客層である高齢年金生活者の消費が一段と落ち込むことを危惧している」(商店街代表者)
「生活必需品の値上げが止まらない。収入は増えないのに、物価だけが上がっていく」(スーパー開発担当)
「いろいろな商品で値上げがあり、サービス業にも影響が出るとみている。特に、宴会等は客が若干控え気味になるのではないか」(都市型ホテル営業)
物価上昇をめざすアベノミクスが最悪の形で暮らしと営業を壊そうとしています。
連続選挙 審判必ず
消費税をなくす全国の会事務局長 木口力さん
安倍首相がヨーロッパの例をあげて値上げを推進しているのはとんでもない話です。政府の役割は物価を安定させて国民生活を守ることです。物価上昇を政府の目標にすること自体が許されません。
飲食料品の値上げと消費税率10%への増税で国民には二重の負担増になります。統一地方選と参院選で増税勢力に厳しい審判をくださなければなりません。かつて5%の売上税を掲げた中曽根内閣は地方選で惨敗し、売上税を断念して退陣に追い込まれました。地方選にもそれだけの力があります。
内閣官房、公正取引委員会、消費者庁、財務省、経済産業省、中小企業庁が連名で2018年11月28日に公表した「消費税率の引上げに伴う価格設定について(ガイドライン)」(抜粋)は以下の通り。
■消費税率の引上げに伴う価格設定について
○1960年代から1970年代前半に付加価値税が導入され、税率引上げの経験を積み重ねてきている欧州諸国では、税率引上げに当たり、どのようなタイミングでどのように価格を設定するかは、事業者がそれぞれ自由に判断しています。このため、税率引上げの日に一律一斉に税込価格の引上げが行われることはなく、税率引上げ前後に大きな駆け込み需要・反動減も発生していません。
○消費税転嫁対策特別措置法により、「消費税はいただいていません」「消費税還元セール」など、消費税と直接関連した形で宣伝・広告を行うことは禁止されていますが、これは事業者の価格設定のタイミングや値引きセールなどの宣伝・広告自体を規制するものではありません。例えば、「10月1日以降○%値下げ」「10月1日以降○%ポイント付与」などと表示することは問題ありません。
○従来、消費税率の引上げを理由として、それ以上の値上げを行うことは「便乗値上げ」として抑制を求めてきましたが、これは消費税率引上げ前に需要に応じて値上げを行うなど経営判断に基づく自由な価格設定を行うことを何ら妨げるものではありません。
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庶民生活わかってない 首相訪問の商店街怒る
キャッシュレスをアピールするために安倍晋三首相が2月2日に訪問した戸越銀座商店街(東京・品川区)。労働組合や民主商工会などでつくる品川の消費税廃止各界連絡会は25日、同商店街で宣伝・署名に取り組みました。
安倍首相が訪問した日は政府関係者や警備員、報道陣でごった返しました。買い物客からは「安倍、帰れ!」の声がかかりました。
安倍内閣が旗を振る食品値上げは、家計を直撃します。各界連の署名に応じた女性(83)は医者にかかった帰りに商店街によりました。「毎日、安いものを探してお店を回っている。テレビでサバ缶が体にいいと聞きました。値段もお手頃なのでよく使っています。今回値上がりすると聞いてがっかり。消費税を上げておいて、トランプ米大統領の言いなりに、ノーベル平和賞の推薦だとか武器の購入とかしている。太鼓持ちね」
70歳の男性は署名を書きながら、安倍首相は「庶民の暮らしがわかっていない」と怒ります。「毎日の生活をやりくりするので必死です。消費税増税されたらどうすればいいのか」
女性は(82)は「いまは詐欺みたいな政治が横行している。消費税は福祉などに使うといってきたのに、年金が減っているのはおかしい。増税はやめてほしい」と怒り顔でした。
「増税対策」 混乱が心配
東京・品川 戸越銀座商栄会商店街振興組合理事長 小谷野敬子さん
日本共産党・おくの晋治品川区議会議員は25日、地元の戸越銀座商店街で商栄会商店街振興組合の小谷野敬子理事長(電器店経営)と懇談。おくの区議が前回消費税増税時の影響について尋ねると、「増税前に電池や電球を多めに買う人が目立った。増税後は売り上げに影響した」と話します。
10%への増税については「増税対策で混乱するのではないか」と不安が広がります。「ポイント還元がいわれていますが、年配の利用者が中心の当店ではほとんど現金での支払い。周りのお店も対応していないところが多い。軽減税率も店内飲食と持ち帰りで変わるのでは、計算がややこしくなるのではないか」と話しました。