2019年3月22日金曜日

取手中3女子自殺、いじめと認定 「担任の言動が助長」

 茨城県取手市立中学3年の中島菜保子さん(当時15歳)は、1511月、自宅でみずから命を絶ちました。5日後、両親が見つけた彼女の日記には「いじめられたくない」「(ひとり)ぼっちはいやだ」などと、いじめをうかがわせる内容が記されていました。両親はその日記の内容を学校に報告して調査を依頼しました。
 
 しかし、学校と市の教育委員会は生徒へのアンケートや聞き取り調査を行いましたが、出された結論は、いじめの事実は確認できなかったというものでした
 その後、両親からの求めに応じる形で市教育委は、16年3月、自殺の背景を調査するための第三者委員会を設置することを決めましたが、その際、教育委は「いじめ防止対策推進法」に基づいた「いじめによる重大事態に該当しない」と議決しいました。要するに結論を与えた上での第三者委員会設置であったわけで、それでは何の意味もありません。自分達の保身のためにそうしたとしか考えられません。
 
 うした対応に不信感を募らせた両親は文科省に対して、教育委員会を指導するよう要請しました。それを受けて市の教育委は、17年5月、「いじめによる重大事態に該当しない」という議決を撤回し遺族に謝罪しましたが、遺族の追及に対して満足な回答が出来ず。殆ど無言だったということです。
 このケースでは、両親に文科省に直接訴えようという発想とその能力があったことが、事実の解明に向けて「曲がり切った軌道」を修正する要因となりました。もしもそうしなかったならば、多くのケースと同様に真実は埋もれたまま、死に追いやった関係者たちはその後ものうのうと過ごしたことでしょう。
 
 その後市の第三者委員会は解散され、特例として17年12月に茨城県が調査委員会を設置し、大学教授や弁護士など6人の委員が1年以上にわたって遺族や当時の生徒、学校関係者などに聞き取り調査を行い、報告書をまとめました。
 
 東京新聞は報告書の要点をつぎのようにまとめています(原文は写真版)。
 
調査報告書のポイント
・いじめがなければ自殺はなかったと推認され、双方には因果関係がある
担任教諭の学級運営や指導等の言動はいじめを誘発、助長し、生徒のいじめと一体的に補完し合いながら心理的に追い詰めた
いじめ防止対策推進法上の「重大事態」に該当しないと議決し、調査委員会を設置しなかった取手市教育委員会の対応は違法
・市教委が設置していた第三者委員会は解散時に記録をすべて廃棄しており、断じてあってはならない行為であった
 
 担任教師と市教育委を明確に断罪しています。
 菜保子さんに対する女子同級生3人組によるいじめは殆ど連日にわたる執拗なものでしたが、担任教師は3人を制止することはせずに、逆に菜保子さんに辛く当たり、いじめを助長しました。担任の教師は事件後に転任した市立中学校で、女性ながら現在剣道部の顧問をしているということです(体育会系?)。
 機を見るに敏な人間であったようで、3人組を手強いと見て、彼女らに迎合するかのように菜保子さんに対してことごとに辛く当たりました。県の調査委が敢えて明確に担任教師を断罪したのは、それなりのことがあったからです。
 
 15年11月10日、3人組は自分たちでガラスを割っておきながら菜保子さんが割ったと担任に言いつけ、担任は、当人が必死に否定するのを無視して、わざわざ自宅に電話して両親にガラスの修理代を請求しました。泣きながら帰宅した彼女は、その日にみずからの命を断ちました。
 
 なお、ネット記事によると市教育委の委員長(女性)は、会見で記者たちから質問を浴びると号泣したということです。自らの痛みにはそれだけ敏感な人間が、はじめの段階でいじめはなかったと認定しただけでなく、第三者委員会に調査を委託するに当たっても「いじめによる重大事態に該当しない」とわざわざ議決した際の責任者であったとは、理解しがたい話です。
         (参考記事)
13年2月3日) 教育委は深甚な反省を
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取手中3自殺、いじめ認定 茨城県調査委「担任の言動が助長」
東京新聞 2019年3月21日
 茨城県取手市で二〇一五年十一月、市立中学三年の中島菜保子さん=当時(15)=が自殺した問題で、県の調査委員会は二十日、同級生によるいじめと自殺との因果関係を認める報告書を公表した。報告書では「担任の言動がいじめを誘発し助長した」とも指摘した。
 
 報告書によると同級生の女子生徒三人が菜保子さんを連日のように「くさや」と呼び、他の生徒に「臭くない?」と告げるなど、複数の行為をいじめと認定した。
 
 自殺当日には、いじめていた生徒が教室のガラスを割ったのに、担任が事実関係を調べないまま、無関係な菜保子さんも連帯責任として指導。「いじめで心理的に追い詰められていた菜保子さんをさらに深い苦しみに陥れ、自殺の引き金になったといえる」とした。
 
 いじめた生徒と菜保子さんが遅刻した際には菜保子さんだけをしかるなど、それまでの担任の言動がいじめを助長したと指摘。いじめた生徒と一体的に「菜保子さんの心理に影響を与えていった」と認定した。
 
 当初調査した取手市教育委員会はいじめを確認できず、一六年三月、いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」に該当しないと議決していた。県調査委委員長の栗山博史弁護士は「両親は最初からいじめによる自殺を訴えており、法律などから重大事態は明らか。ここまで違法な市教委の対応は珍しい」と批判した。 (鈴木学)
 
<取手市立中3女子生徒いじめ自殺> 2015年11月、市立中学3年の中島菜保子さん=当時(15)=が日記に「いじめられたくない」などと書き残して自殺した。市教委は、いじめ防止対策推進法の「重大事態」に当たらないと議決したうえで、第三者委員会を設置した。
 疑念を抱いた両親は17年5月、文部科学省に、市教委の調査の中止と第三者委の解散を申し入れた。市教委は直後に議決を撤回。同年12月、両親の求めに応じ、県が新たな第三者委を設置し、いじめと自殺の因果関係を調べていた