沖縄県の玉城デニー知事は19日、安倍首相と官邸で会談し、辺野古の米軍新基地建設で、政府が25日にも予定している新たな区域での土砂投入の中止を求めるとともに、工事を中断して約1カ月間、県と政府で協議する場を設けるよう要請しました。
玉城知事は、「対話のための環境づくり」として、国が岩礁破砕許可を得ずに埋め立て工事を進めるのは違法とした工事差止め訴訟を取り下げるよう指示したことを伝え、県による埋め立て承認撤回の効力を国土交通相が停止したことは違法だとした訴訟については、協議への政府の対応をみて検討すると述べました。
東京新聞は硬軟織り交ぜた知事の姿勢と評価しましたが、天木直人氏は安倍首相にはそんな配慮は全く通じないと批判しています。
その通りかもしれませんが、ここは沖縄のことを何一つ理解できない人間を相手にするという、気の滅入る会談に敢えて挑戦した知事の労を多とすべきでしょう。
首相は「さまざまな協議や確認を経て現在進めている」として新基地建設に固執し、1カ月間の協議については回答を避けました。そして「翁長雄志前知事との間でも協議期間を設けたが結果的に工事を進めることになった」と述べました。
知事の要請をまともに取り合おうとしない首相の本心がありありです。「結果的に工事を進めることになった」のは、安倍首相の無理解と非誠実によるものであるという自覚がない以上、この会談の行く末も明るくはありません。
東京新聞と、ジュゴンの死を取り上げた日刊ゲンダイの記事を紹介します。
併せて「辺野古埋め立て工事の中止」を政府に求める請願を、岩手県総務委が採択したことに関する「岩手日報」の記事を紹介します。
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沖縄県知事・玉城氏、硬軟織り交ぜ主張 辺野古巡り首相と会談
東京新聞 2019年3月20日
沖縄県の玉城(たまき)デニー知事は十九日、安倍晋三首相と官邸で会談し、米軍普天間(ふてんま)飛行場(同県宜野湾(ぎのわん)市)への移設に伴う名護市辺野古(へのこ)の新基地建設を巡り、政府が二十五日にも予定する新たな海域での土砂投入中止を要請した。工事差し止めを求めた訴訟の上告を取り下げる方針も伝え、埋め立てを止めた上で一カ月程度の協議も求めた。硬軟織り交ぜ、政府との対話で問題解決を図る姿勢を示したが、首相から明確な回答はなかった。 (島袋良太)
玉城氏の主張の背景には、強硬姿勢だけでは政府方針は変えられないとの判断がある。
玉城氏は会談で、二月の県民投票で反対の民意が示されたことや、防衛省が埋め立て予定海域の軟弱地盤改良工事に三年八カ月を要するとした報告書を公表したことに言及。新たな海域に土砂を投入すれば「ますます県民からの反発は膨らむ」と中止を迫った。
同時に、訴訟の上告取り下げも伝え、政府を対話のテーブルに着かせようと努めた。玉城氏は取り下げについて、記者団に「訴訟合戦ではなく、対話のための環境づくりに努めたい」と説明した。
沖縄県は、政府が県漁業調整規則に反し、無許可で海底の岩礁破砕を伴う工事をしているとして提訴。福岡高裁那覇支部の棄却を受け、最高裁に上告していた。
県は、埋め立て承認撤回の効力停止の取り消しを求める訴訟も検討中だが、玉城氏は、政府の対応を見極めて判断する構えだ。
一方、首相は「辺野古移設は、さまざまな協議や確認を経て進めている」と新基地建設方針は変わらない考えを伝達。訴訟に関する県側の対応に言及しなかった。菅義偉(すがよしひで)官房長官も記者会見で「県側の判断であり、コメントは差し控えたい」と評価を避けた。
首相は会談で「折を見て話をさせていただきたい」と対話を継続すると説明。普天間飛行場の安全対策や騒音問題を話し合う協議会の開催も「日程調整をしている」と応じたが、玉城氏が求める日米両政府と県の三者協議については、明確に回答しなかった。
死骸で発見のジュゴンは…辺野古埋め立てで行方不明だった
日刊ゲンダイ 2019年3月20日
「残りの2頭は大丈夫?」――。沖縄県今帰仁村の漁港でジュゴンの死骸が見つかったニュースにこう思った人もいるだろう。死亡したジュゴンは体長が約3メートルで漁港の防波堤付近に浮かんでいた。
沖縄というと、ジュゴンがウヨウヨいるようなイメージを抱いてしまうが、生存が確認されていたジュゴンは3頭にすぎない。そもそもが国の天然記念物で絶滅危惧種なのだ。
今回死亡したジュゴンは今帰仁村に近い古宇利島付近に生息し、「個体B」と呼ばれていた。
古宇利島は基地の埋め立て工事が進む辺野古とは海を隔てて離れており、個体Bの死因はいまだに分かっていない。
気になるのは辺野古が面している大浦湾に出没していた残りの「個体A」と「個体C」だ。実はこの2頭は行方不明になっており、その原因が15年に始まった埋め立て工事ではないかとみられているのだ。
「個体Cが最後に目撃されたのは15年7月、個体Aは18年9月でした。それ以来、ぷっつりと姿を消したのです」とは地元関係者だ。
■残りの2頭の生存も危惧
「この2頭は辺野古沖の浅瀬に来て海藻を食べていましたが、工事が始まってから姿が確認されなくなったことになります。専門家によると、ジュゴンは音に敏感なため、トラックや重機が地響きを立てる工事を嫌って、どこかに避難したのではないかというのです。住み慣れた場所を離れたせいで漁船に混獲されるのではないかと心配する声も上がっています」
19日、沖縄県の玉城デニー知事は官邸で安倍首相と会談。ジュゴンの死骸が発見されたことを伝え、辺野古の土砂投入を中止するよう求めた。安倍首相は「残念だ」と応じたが、工事を中止するそぶりはない。
沖縄事情に詳しいノンフィクション作家の奥野修司氏が言う。
「やっぱり、という印象です。ジュゴンは海水が澄み切って水温が高く、エサが豊富な浅瀬を好みます。地元では辺野古の工事が始まる前から『土砂投入で海が汚れたら、ジュゴンがいなくなるのは間違いない』という声が上がっていたのです。個体Bの死によって残りの2頭の生存が危惧され、あらためて埋め立ての無謀さがはっきりしました」
3頭しかいない絶滅危惧種が死んだのに、国は今日もジュゴンの安住の地に土砂をガンガン投入している。
辺野古中止の請願採択 県議会総務委
岩手日報 2019年3月20日
県議会2月定例会は19日、総務、環境福祉、商工文教、農林水産、県土整備の5常任委員会を開いた。総務委は辺野古埋め立て工事の中止を政府に求める請願を採択した。25日の最終本会議に政府や国会への意見書提出を発議する。
請願の提出者は県内の市民グループで「沖縄県民投票の結果を踏まえ、辺野古埋め立て工事を中止し、同県と誠意を持って協議を行う」ことを求める。質疑で佐藤ケイ子氏(改革岩手)は「工事完了後も地盤沈下の可能性があり、基地の移転効果はないのではないか」と賛同した。
川村伸浩氏(自民クラブ)は「危険な状況の普天間基地周辺の安全が最優先だ。県民投票に法的拘束力はない」と異を唱えた。
採決は軽石義則委員長(改革岩手)を除く8人で行い、改革岩手3人と創成いわて1人が賛成、自民クラブ2人、いわて県民クラブと無所属の各1人が反対。可否同数となり、委員長裁決で採択とした。