2019年3月25日月曜日

安倍4選を支持する強固な3割の正体(日刊ゲンダイ)

「安倍4選」に対してはさすがに「反対」がダブルスコアで「賛成」を上回り、安倍首相はいま必死に「3選止まり」を強調しています。彼はこれまでも支持率が急落するたびに低姿勢を演じ、しばらくして回復すると高姿勢に一転することを繰り返しているので、「3選止まり」の強調も当面の便法に過ぎないことは明らかです。
 ところで世論調査の結果を逆に見ると、産経・FNNは4選に「賛成」が31・1%、朝日が同じく27%、ANNが33%と。ほぼ3割前後を維持しています(唯一、時事が9・0%(15日)で「賛成が1割」の見出しが躍りましたが、設問に「上限を設けない」の項があって15・2%だったので実質24・2%と見られます)。驚くべきことです。
 
 これまで支持率が急落した時でも、30%を大幅に下回ることはありませんでした。
 日刊ゲンダイが、「なぜ国民の3割がペテン首相独裁4選を許すのか。ここまで貧者が増えて、それが政権転覆への怒りのエネルギーにならないのは、どうしてなのか」について取り上げました。
 
 日刊ゲンダイは、岩盤支持層3割の正体を探る上で橋本健二・早大教授の分析が示唆に富むとしています。同教授は、拡大した格差が固定化し、次世代に継承される負の連鎖を「階級社会」と捉え「新・日本の階級社会」を著わした人です。
 
 それは、社会学的階級4つの分類 ①資本家(経営者、役員) ②新中間階級(被雇用者管理職、専門職、上級事務職) ③労働者 ④旧中間階級(自営業、農業)― 中の「労働者を正規と「アンダークラス」(パート主婦を除く非正規)に二分して議論を展開するもので、「貧困自己責任」論に関してアンダークラスも含め多くの階級が容認しているものの、アンダークラスの半数以上は「生活に困っている人がいたら、国が面倒をみるべきだ」といった所得再配分政策を支持しているのに対して、新中間階級も正規労働者も所得再分配論を積極的支持する比率は資本家階級と同じ30%台にとどまるという冷淡さが生じていることを明らかにし、それは「新中間層」新中間階級と正規労働者の深層心理に「所得再配分によって利益を得るのは貧者のみ、自分たちは損だ」があるからだとしています。他方 アンダークラス現実への強い不満政治に向かわず「外国人が増えて欲しくない」「中・韓は日本を悪く言いすぎる」といった排外主義に走っているとしています。
 
 本来なら政権に痛めつけられる者同士一致団結すべきであるのに、労働者階級が縮小する所得の配分を巡りいがみ合う結果、貧者が増えても倒閣運動に発展せずに、逆に、アンダークラスの一部がアッパークラスと一緒になって安倍政権の岩盤支持層になっているというものです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
格差容認、中韓嫌い 安倍4選を支持する強固な3割の正体
日刊ゲンダイ 2019年3月23日  
(阿修羅文字起こしより転載)
 まだ3割もいることにギョッとする。安倍首相の党総裁連続4選について、直近の世論調査ではさすがに反対が半数を超えたものの、賛成は3割前後に上る。朝日新聞が賛成27%、反対56%。産経新聞・FNNが賛成31.1%、反対59.3%。ANNが賛成33%、反対51%――。この結果には正直、驚いてしまう。
 
 ただでさえ、自民党は二階幹事長の主導で連続2期6年だった党則を強引に変え、総裁任期を3期9年に延長。安倍が3選を果たしてから、まだ半年だ。早くも延命のために再び勝手に党則を改め、4期12年、2024年まで続投との言説がまかり通ること自体、ルール無用の独裁体制そのもの。安倍4選支持は北朝鮮さながらの独裁国家の容認に等しい。
「百歩譲って、この6年余りで安倍政権がマトモな政治を行ってきたのならまだしも、平然と隠す、ゴマカす、嘘をつく。外交は対ロ、対韓、対朝ともども行き詰まり、一枚看板のアベノミクス成功の宣伝も統計カサ上げの捏造で、3年ぶりに景気判断の下方修正に追い込まれた。それでも、安倍首相の総裁4選を3割も支持するとは、政権内に蔓延する『反知性主義』が少なからぬ国民に伝染してしまったのか、と疑わざるを得ません」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
 
 今の日本は格差拡大が続き、膨大な貧困層が形成されている。所得が国民の平均値の半分に満たない人の割合を示す「相対的貧困率」は、1985年の12.0%から2012年には16.1%に上昇。
 人口に置き換えると、貧困層は1400万人から2050万人に増えたことになる。直近の2015年の貧困率は15・6%と微減したが、依然として高止まり。ひとり親に限れば5割を超える。
 世界3位の経済大国でありながら、7人に1人が貧困にあえいでいるのに、なぜ国民の3割がペテン首相の独裁4選を許すのか。ここまで貧者が増えているのに、それが政権転覆への怒りのエネルギーにならないのは、どうしてなのか。 
 
岩盤支持層はあたかもカルト教団 
 安倍4選支持者の正体を探る上で示唆に富むのが、早大教授の橋本健二氏(社会学)が著した「新・日本の階級社会」だ。格差が固定化し、次世代に継承される負の連鎖を「階級社会」と捉え、この国の危機的現状を最新の社会調査データを基に読み解いていく。
 橋本氏は ①資本家(経営者、役員) 新中間階級(被雇用者管理職、専門職、上級事務職) ③労働者 ④旧中間階級(自営業、農業)――と4つの社会学的階級の分類だけでなく、近年の労働者階級内における正規と非正規の格差拡大に着目。労働者を正規と「アンダークラス」(パート主婦を除く非正規)に二分して議論を展開する。
 
 圧巻は第6章だ。16年首都圏調査(有効回答2351人)に基づき、各階級ごとの格差と排外主義に対する意識の違いを浮き彫りにしている。
 貧困層の増大は、資本家階級が辛うじて半数、アンダークラスでは8割、その他の階級も3分の2が認識しているが、新中間階級は資本家階級と同じく決して「格差が大きすぎる」とは考えていない
 また、「貧困になったのは努力しなかったからだ」などと格差と貧困を正当化する自己責任論は、アンダークラスも含め多くの階級が容認。ただし、アンダークラスの半数以上は「理由はともかく生活に困っている人がいたら、国が面倒をみるべきだ」といった所得再配分政策を支持しているのに、新中間階級も正規労働者も積極的支持は、資本家階級と同じ30%台にとどまる。
 
 この調査から「新中間層」と言うべき新中間階級と正規労働者の深層心理がうかがえる。所得再配分によって利益を得るのは貧者のみ、自分たちは損だという意地汚い考えだ。
 橋本氏は〈むしろ貧困層に対して冷淡であり、アンダークラスに対して敵対的であるように思われる〉と分析した。
「こうした社会的亀裂を一段と進めたのが、アベノミクスです。社会の1%を優位に立たせるため、99%の富を奪うという新自由主義の教科書通り。所得税や法人税の最高税率を引き下げ、その穴埋めのように消費増税で庶民生活を痛めつけるのです。この国の新中間層が自己責任論を振りかざし、貧困層に冷淡なのはアベノミクスの6年で実質賃金が減り続けた影響も大きい目減りした所得から払った税金を貧者に渡したくない、と生活の余裕を失って心がすさんでいる証左ではないでしょうか」(経済アナリスト・菊池英博氏)
 本来なら政権に痛めつけられる者同士、一致団結すべき労働者階級が、縮小する所得の配分を巡り、いがみ合う。
 なるほど、貧者が増えてもエネルギーが分散し、倒閣運動に発展しないわけだ。
 
 さらに橋本氏の著書で興味深いのは、アンダークラスほど所得再分配を支持する傾向が「自分の住む地域に外国人が増えて欲しくない」「中国人・韓国人は日本を悪く言いすぎる」といった排外主義と結びついているとの指摘だ。その他の階級と違って、所得再配分に積極的でかつ排外主義的傾向の強い「格差是正排外主義」が最も多いのが、特徴だという。
 ひと昔前なら貧困層の格差解消と平等への要求が、政治への怒りに直結したのに今は違う。現実への強い不満が政治に向かわず、排外主義とリンクしがちだ。橋本氏は〈追いつめられたアンダークラスの内部に、ファシズムの基盤が芽生え始めているといっては言いすぎだろうか〉と懸念するが、確かに時の政権に所得再配分を懇願する一方で、排外主義まで求める発想は危うい。
 
 前出の菊池英博氏が言う。
「増え続ける非正規労働者が強い不満を抱いていても、経営陣はもちろん、労組も救済の手を差し伸べてくれない。外国人労働者受け入れ拡大策により、自分の職場への流入を警戒し、不安定な雇用を脅かす“敵”に思えるのかも知れません。いずれにせよ、困窮を紛らわすため、日本の戦争責任を問う中韓叩きで留飲を下げる貧困層は確実に増えている。その現状を百も承知で安倍政権は昨年来から意識して韓国バッシングを仕掛け、嫌韓感情をたきつけているとしか思えない。そんな政権を改めて『よくやった』と盲目的に支持する排外主義者が増える悪循環では、ファシズム到来へとまっしぐらです」
 
 橋本氏の著書によると、自民党支持者は格差拡大を明確に認識している人が少なく、自己責任論を肯定する人の比率が高い所得再配分の積極的支持者はたった10・3%。9条改憲や沖縄の米軍基地集中を容認する「軍事重視」の傾向の強さは他の政党支持者を大きく引き離し、排外主義的傾向も強い
 
 橋本氏は〈あたかも自民支持者は、排外主義と軍備重視に凝り固まったカルト集団であるようにも思えてくる〉と断じたが、安倍自民を格差容認の排外主義者が積極的に支持していることはデータからも裏付けられる。まるでヘイト政権だ。
「人為的に引き上げた株高で潤ったホンのわずかなアッパークラスと、排外主義に走るアンダークラスが岩盤支持層というイビツな構造です。だからこそ、排外主義者にこびるように対韓強硬路線をエスカレートさせ、資本家階級が求めるインバウンド需要増のため、観光立国を成長戦略に掲げるチグハグぶり。外国人の観光客も労働者も大量に受け入れながら、排外主義的憎悪をあおるなんて、どうかしています。憎悪は悲劇しか生まず、行き着く先はこの国の孤立化です」(五十嵐仁氏=前出)
 
 厚労省の現職課長がわざわざ韓国に出かけて、ヘイトに暴力。ネット上にも中韓への差別的表現が満ちあふれている。安倍の求めた「美しい国」は今や悪い冗談でしかない。