憲法違反の安保法制=戦争法が施行されてから29日で3年を迎えました(制定は15年9月19日)。
自衛隊が米軍の艦船などを「防護」する「武器等防護」は2018年には16件に達しました。これは米軍の防護を口実にいつでも攻撃国と戦火を交えるもので、直ちに「平時」から「戦時」に移行することになります。
政府が先に打ちだした長距離巡航ミサイルの導入は、国是とされている専守防衛を逸脱するものです。
岩屋毅防衛相は「いずも」型護衛艦を「空母」に改修するに当たり、戦闘作戦行動に発進準備中の米軍のF35Bが「いずも」で給油や整備を受けることも「排除されない」としました。戦争への実質的な参加です。
危険な南スーダンから撤退して以降PKO派兵がゼロになったことに焦った政府は、「シナイ半島多国籍軍・監視団(MFO)」への司令部要員の派遣を決定しました。
こうした姿勢は、トランプ大統領が経費節減のため、イラクやアフガニスタンなどからの撤退や縮小を模索しているのと対照的です。
19年度予算案では、トランプ氏の求めに応じて米国製兵器の購入に過去最高の7千億円超を計上しました。安倍首相はトランプ氏の経費節減志向をこそ見習うべきです。
安保法制は憲法9条で禁じられている集団的自衛権の行使を容認する最悪の違憲立法でしたが、政府はそれをテコに米軍との完全な一体化を進め、まっしぐらに軍事国家への道を歩んでいます。
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日米の軍事一体化 加速 昨年米軍防護16件
見えぬ実態 戦争法施行3年
しんぶん赤旗 2019年3月30日
違憲の安保法制=戦争法が施行されてから29日で3年を迎えました。自衛隊が米軍を「防護」する武器等防護の実施が2018年には16件に達し、17年の2件から8倍になるなど、日米の軍事一体化が加速しています。
防衛省によると、18年は初めて弾道ミサイル警戒を含む情報収集・警戒監視活動中の米艦艇に対する防護が3回行われました。このほかは共同訓練中の防護で、航空機に対して10回、艦艇に対して3回でした。
米軍などの「武器等防護」を規定した自衛隊法95条の2では、自衛隊と連携して訓練や警戒監視を行っている米軍が攻撃を受けたときは、武器を使用して反撃できます。状況によっては、一気に「平時」から「戦時」に移行する危険があります。武器使用の判断は現場の自衛官が行うため、文民統制の観点からも検証が不可欠です。
しかし、武器等防護に関する運用指針では、防衛相は前年の活動実績を国家安全保障会議(NSC)に報告し、公開すると規定していますが、具体的な日時・場所は非公開となっています。
また、「戦争司令部」とされる「同盟調整メカニズム」もすでに運用されていますが、北朝鮮の弾道ミサイル発射や核実験を受けての日米局長級テレビ会議(16年9月、17年8月)が公表された以外、開催状況は「米軍との関係や事柄の性質上、答えを差し控える」(防衛省)との立場。国民の監視を逃れて、日米の一体化が加速しています。
問われる9条改憲 「空母」化改修
安倍政権が新防衛大綱に基づいて決定した「いずも」型護衛艦の「空母」化改修が、安保法制=戦争法に基づく日米一体化をさらに加速させる危険があります。
政府は米国から、垂直着陸・短距離離陸が可能なF35Bステルス戦闘機42機を購入し、「いずも」甲板での運用を狙っています。同時に、「いずも」から米軍F35Bの出撃も狙われています。
岩屋毅防衛相は8日の衆院安保委員会で、日本共産党の宮本徹議員に対して、安保法制に基づく「重要影響事態」や「国際平和共同対処事態」(=いずれも米軍主導の海外での戦争)で、戦闘作戦行動に発進準備中の米軍のF35Bが「いずも」で給油や整備を受けることも「排除されない」と認めました。
そうした事態を想定し、米海兵隊岩国基地(山口県)に配備されているF35Bが、共同訓練で「いずも」からの離着陸訓練を繰り返す危険もあります。
“派兵先”探し
安保法制の核心部分は、自衛隊がイラク・アフガニスタンのような米軍主導の先制攻撃戦争に参加することにあります。しかし、海外での武力行使を禁じた憲法9条が“制約”となり、海外派兵路線は深刻な矛盾に直面しています。
日本政府は米軍主導の多国籍軍参加への突破口として、92年から国連平和維持活動(PKО)への派兵を開始。南スーダンでは、安保法制に基づき、海外での武器使用要件を大幅に拡大した「駆け付け警護」任務を付与しました。自衛隊が海外で「殺し・殺される」危険が高まりましたが、自衛隊の宿営地をはさんで戦闘が発生。「紛争当事者間の停戦合意」など、憲法9条に基づいて設定された「PKO参加5原則」が崩壊し、撤退を余儀なくされました。
その結果、PKO派兵は初めてゼロになりました。焦る政府は新たな派兵先を模索し、「シナイ半島多国籍軍・監視団(MFO)」への派遣を決定。安保法制に基づく「国際連携平和安全活動」の初適用となります。国連が統括しない多国籍軍へ派遣する形で、米軍主導の多国籍軍参加への突破口とする狙いですが、現時点で司令部要員のみです。
また、米軍はイラクやアフガニスタンで「対テロ」作戦を継続していますが、縮少・撤退を模索しています。
安保法制は憲法9条で禁じられている集団的自衛権の行使を容認する最悪の違憲立法ですが、それでも9条の制約は残っています。だからこそ、自らの“原点”である「血の同盟」を実現するためには、9条を変え、海外に送り込む自衛官を確保しなければならない―。それが、安倍晋三首相が改憲に執念を燃やす最大の動機です。
9条改憲で海外での無制限の武力行使を可能にし、自衛官の戦地派兵を許すのかどうか。統一地方選と参院選の重大争点です。(竹下岳)
社説 安保法施行3年/専守防衛の逸脱どこまで
神戸新聞 2019年3月30日
自衛隊の任務を大幅に拡大した安全保障関連法の施行から、きのうで3年となった。
情報公開が不十分なまま、国の基本姿勢である「専守防衛」からの逸脱が進む。国民の懸念をよそに既成事実を積み上げる動きは、加速する一方だ。
説明に後ろ向きな安倍政権の姿勢は不誠実というしかない。
端的な例が、自衛隊が米軍の艦船などを守る「武器等防護」である。2017年に米海軍の補給艦に初めて実施された。
その年は2件にとどまったが、18年度は16件に急増した。
なのに防衛省は「日本防衛のための共同訓練に参加した米艦艇、米航空機」などと示すのみで、具体的な状況は明らかにしていない。「米軍の運用に直結する内容」との理由からだ。
安倍晋三首相は当初、「可能な限り最大限開示し丁寧に説明する」と語っていた。実際は、国民の知らないところで米軍との一体化が強まっている。
自衛隊活動が際限なく拡大する懸念が募る。政府は説明責任をきちんと果たすべきだ。
「武器等防護」の他にも政府はこの3年間、南スーダン国連平和維持活動の「駆け付け警護」など、安保法の新任務を相次いで自衛隊に付与してきた。
4月にはエジプト・シナイ半島に自衛隊員2人を派遣する。これも「国際連携平和安全活動」という新任務で、停戦監視に当たる「多国籍軍・監視団」の司令部要員を務める。さらなる実績作りが狙いだろう。
これらと並行して、政府はヘリコプター搭載型自衛艦「いずも」の事実上の空母化や、敵基地攻撃能力の保有につながる長距離巡航ミサイルの導入を打ち出した。いずれも憲法の制約を逸脱する恐れがあり、歴代政権が踏み込まなかった領域だ。
一方、政府はトランプ米大統領の求めに応じて米国製装備品を大量購入する。19年度予算案では過去最高の7千億円超を計上したが、米側の要請はさらに増える可能性がある。
主権者の国民には語らず、米国には大盤振る舞いする。そうでないと言うのなら、いったん動きを止めて、国民の納得が得られるまで徹底的に議論すべきだ。このままでは「平和主義」までが形骸化しかねない。