2019年3月30日土曜日

失踪実習生759人、不正被害 最低賃金割れや過大控除

 人手不足が強まる中、経済界の強い要求に基づいて制定された外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管難民法が4月に施行されます。
 既に実施されている外国人技能実習生制度の実際の目的は安価な働き手の導入でした。実習生たちは初めての国にきて言葉も不自由ななかで、多くは不当労働行為を強いられ甚だしきは雇い主による性的被害を受けた女性実習生もいました、
 
 彼らが置かれた劣悪な労働環境などの実態は昨年の野党の合同ヒアリング等によって明らかにされました。
 実は政府はそれまでも「失踪者」を対象に実態調査を行っていて、そうした実態を把握していたのですが、例によって隠蔽し、野党が調査結果の開示を求めても「個人の秘密」に係わるからと応じませんでした。
 挙句にしぶしぶ山下法相が開示した失踪の理由は、「より高い賃金を求めて失踪する者が約87%」などという実態を偽装するものでした。
 
 このほど、外国人技能実習生の失踪や死亡について調査をしていた法務省のプロジェクトチームが、2017年1月~18年9月に入管当局に摘発された失踪実習生5218人のうち、少なくとも721人に最低賃金違反など実習先による不正行為の疑いがあったなどとする報告書を公表しました。
 報告書には「制度運用が不十分だった点を真摯に反省する」として、失踪防止など改善に向けた方策も明記してあるということですが、何よりも外国人労働者に正しく労働基準法が適用され、人権侵害等が決して起きないような対策を至急に講じるべきです。
 
 東京新聞が調査報告の概要を報じました。
 読売新聞の記事も併せて紹介します。
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失踪実習生759人、不正被害 最低賃金割れや過大控除
東京新聞 2019年3月29日
 
  技能実習生に関する調査結果のポイント
  
  失踪した実習生のうち759人が最低賃金を下回るなどの不正行為を受けていた疑い
 
  2017年までの6年間で171人が死亡
 
  死亡したうち4人は違法な時間外労働をさせられるか休日不足の疑い
 
  18年の失踪者は9052人
 
 法務省は二十九日、実習先から失踪した外国人技能実習生五千二百十八人に関する調査結果を公表した。約15%に当たる七百五十九人が最低賃金を下回るといった不正行為に遭っていた疑いがあった。二〇一二~一七年に事故や病気などで実習生百七十一人が死亡し、うち四人は違法な時間外労働をさせられるか休日不足の疑いがあったことも分かった。
 四月の外国人就労拡大新制度開始を前に、実習生を取り巻く劣悪な労働環境が改めて浮き彫りになった。法務省は対応の不備を認め、実習生の支援や保護、実習先の監督の強化を図るとした。山下貴司法相は閣議後の記者会見で「適正な運用に努めたい」と述べた。
 実習生の失踪は年々増え、一八年は前年から千九百六十三人増の九千五十二人だった。一八年末時点の実習生は三十二万八千三百六十人。
 失踪実習生の調査は、失踪後に一七年一月~一八年九月に摘発され、入国警備官が聴取票を作成した五千二百十八人と、企業など四千二百八十の実習先が対象。まだ日本にいた実習生七十四人のほか、実習先に直接または電話などで聴取したが、協力拒否や倒産などで調査できなかった実習先も三百八十三あった。
 主な結果を見ると、重複を含め、最低賃金を下回っていた疑いが五十八人、契約賃金を下回っていた疑いが六十九人、賃金から食費名目などで過大に控除されていた疑いが九十二人、時間外労働などへの割増賃金不払いの疑いが百九十五人、時間外労働の際に労使で結ぶ必要がある「三六協定」の未締結または違反の疑いが二百三十一人。労働関係法令違反の疑いがあるものは労働基準監督署などに通報した。
 
 死亡実習生の調査は、記録が保存されていた六年間分が対象。四十三人の死亡を把握していなかったことが新たに判明し、計百七十一人について調べた。内訳は足場からの転落など実習中の事故死が二十八人、レジャーなど実習外の事故死が五十三人、病死が五十九人、自殺が十七人、殺人や傷害致死による死亡が九人などだった
 病死のうち三人は「三六協定」に違反して働かされていた疑い、自殺のうち一人は三カ月半で休みが四日だけだった疑いがあり、既に労基署に通報するなどしていた。
 
 
法務省の調査結果
 
失踪技能実習生への主な不正行為
 
最低賃金違反
58人
 
契約賃金違反
69人
 
賃金からの過大な控除
92人
 
時間外労働等の割増賃金不払い
195人
 
残業時間等不適正
231人
 
その他の人権侵害
36人
 
 
(重複含む)
 
 
 
 
技能実習生171人の死因
 
実習中の事故死
28人
 
実習外の事故死
53人
 
病  死
59人
 
自  殺
17人
 
殺人または傷害致死による死亡
9人
 
そ の 他
5人
 
 
 
外国人実習生、6年で171人死亡…事故28人 
読売新聞 2019年3月28日
 法務省は29日午前、2012~17年に死亡した外国人技能実習生は171人だったとの調査結果を公表した。死因は、病死が59人と最多で、実習中の事故28人、自殺17人などだった。技能実習生については、劣悪な労働環境が問題となっている。政府が死者数を公式に発表するのは初めて。
 
 技能実習生は最長5年間、国内で実習を受けることができる。実習生の人数は12年は約15万人だったが、年々増加し、17年は約27万人となった。
 実習中の事故の例としては、漁船転覆による溺死や大型資材による圧死などがあった。病死・自殺のうち企業による不法な長時間労働が原因、または疑いがあるケースが4人いた。自殺については「20~30代の日本人の自殺率より低い」(法務省)という。
 
 途中で失踪した実習生の人数も増加傾向にあり、18年は9052人だった。17年1月~18年9月に入管当局が聴取した失踪した技能実習生5218人のうち、新たに721人について、〈1〉最低賃金違反〈2〉残業時間違反〈3〉外出制限や暴行など人権侵害――などの違法労働の疑いがあることが分かった。同省は聴取した失踪実習生のうち、38人の違法労働を確認していたが、違法行為が大幅に拡大する可能性が出てきた。
 
 技能実習生の待遇は、外国人受け入れを拡大する改正出入国管理・難民認定法の国会審議で問題視された。安倍首相は29日午前、関係閣僚会議で「技能実習生の失踪などが問題になっている。技能実習制度の適正な運用を確実に行ってほしい」と指示した。