2019年3月7日木曜日

夕刊フジが消費増税を危ぶむ記事を

 経産省が28日発表した1月の鉱工業生産指数速報値(2015年=100)は1008で前月比で37%低下しました(正式値は7日に発表)。この下落幅は近年では昨年1月(4・7%低下)に次ぐもので景気の現状を示す「一致指数速報値」も前月から3ポイント近く下がりました。
 鉱工業生産指数は、鉱工業製品の生産事業所における生産・出荷・在庫状況、製造工業の設備の稼働状況、各種設備の生産能力の動向を捉え、生産の先行き2か月の計画を把握することで、当面の生産活動に基づく景気を予想する上での最重要のファクターです。
 政府は1月の段階で、景気拡大期が戦後最長の74カ月間になったと宣伝しましたが、実は景気は後退局面に入ったというのが実態です。
 
「悪魔の税制」と呼ばれ逆進性を持ち庶民を苦しめるだけ消費税は本来廃止すべきものですが、少なくとも消費税率を10%に上げるなどは狂気の沙汰で、しんぶん赤旗などが頻繁に消費税アップ反対の記事を掲げ、経済学者の植草一秀氏が折にふれて「消費税を増税すれば日本は破壊される」と警告しているところです。
 とても消費税率をアップできる状況ではないことが「景気」の点でも裏付けられました。
 
 世耕経産相は、国会で「税率の引き上げ以上に消費を喚起したい」と答弁しました。1世帯当たりの平均実質所得5年の累計で792万円も減ったというのに、よくそんな絵空事が言えるものです。ない袖は振れないというのが分からないのでしょうか。
 
 読売新聞や産経新聞と同様に政権寄りで知られている夕刊フジが「安倍首相『増税回避』4月にも決断か 10月増税強行で『日本発』世界経済低迷も ~ 」とする記事を出しました。
 現時点で増税を三度延期する確率は半々としながら、「合理的・理性的に考えれば、安倍首相は増税を回避するしかないと思う」とする識者の見解を紹介し、決断のタイミングは(10月の半年前の)4月としています
 官邸筋から観測記事を出すように言われたのでしょうか。
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安倍首相「増税回避」4月にも決断か 10月増税強行で「日本発」世界経済低迷も 識者「現時点で引き上げの可能性は半々」
夕刊フジ / 2019年3月6日
 世界経済の先行き不安が広がりつつある。中国経済の減速は続いており、米中新冷戦が拍車をかけかねない。英国のEU(欧州連合)離脱の破壊的衝撃も懸念される。日本経済は景気拡大局面を続けてきたが、国際情勢の懸念もあって足元は弱含みだ。こうしたなか、政府は今年10月、消費税率10%への引き上げを断行できるのか。永田町には「安倍晋三首相は最終的に増税を回避するのではないか?」と推察する向きも多い
 
 総額で初めて100兆円を上回る2019年度予算案の審議が4日、参院予算委員会で始まった。当然、消費税も議論になった。
 茂木敏充経済再生相は、野党議員から消費税増税を考え直すように迫られて、「16年後半以後の日本経済は、プラス成長で推移するなか、財政再建をしっかりやりながら、(人材に投資する)『人づくり革命』などをするためにも消費税率の引き上げは不可欠だ」と語った。
 今年10月の増税は法律で決められている。このため、閣僚は増税を「既定路線」とした答弁を続けている。
 ただ、世耕弘成経産相は、増税対策について問われて、「国際経済状況が非常に不透明であることを鑑みながら…」と前置きして、「税率の引き上げ以上に消費を喚起したい」と答弁した。
 やはり、世界経済の先行きに不安は隠せない。
 
 中国自動車工業協会が2月中旬に発表した1月の新車販売台数は、前年同月比15・8%減の236万7300台だった。7カ月連続で前年同月水準を下回ったといい、中国経済の減退は深刻だ。
 英国のEU離脱をめぐっては、テリーザ・メイ首相が今月、離脱合意案の下院採決に臨む。1月に続く再否決の場合、大混乱必至の「合意なき離脱」か、先行き不透明な離脱延期が待ち受ける。
 
 内閣府は7日、1月の景気動向指数を発表する。民間エコノミストの間では、同指数が悪化し、景気の基調判断が下方修正されるとの予測が広がっている。中国経済減速などで1月の鉱工業生産指数速報が前月比3・7%低下したのが響いているとの見方だ。
 「リフレ派の論客」として知られる上武大学の田中秀臣(ひでとみ)教授は「地球儀で、経済が不透明ではない場所を探すのが大変なほどだ。こんな状況で、日本が消費税率を引き上げると、日本発で世界経済を低迷させる『危険なシグナル』になりかねない。現時点で、消費税率の引き上げの可能性は半々だと思うが、合理的・理性的に考えれば、安倍首相は増税を回避するしかないと思う」と、夕刊フジの取材に語った。
 田中氏は、安倍首相の看板政策「アベノミクス」を後押しする浜田宏一内閣官房参与(米エール大学名誉教授)の考えに近い。
 
 安倍首相はこれまで2回、消費増税を延期する政治的判断をしてきた。今年10月の増税についても、「08年のリーマン・ショックのようなことがない限り」との条件付きで実施する方針を繰り返してきた。
 この「リーマン・ショックのような」という条件について、菅義偉官房長官に近い、自民党の和田政宗参院議員は次のように語った。
 「世界経済の失速や株価を見ると、私は『今がまさにリーマン・ショック級だ』という認識だ。国民生活向上のために、経済を良くするために、どうすべきか…。安倍首相の決断次第です」
 確かに、安倍首相はまだ、「必ず上げる」とは確約していない。だが、政治的に、簡単な決断ではない。
 政治評論家の伊藤達美氏は「安倍首相が3回目の延期をする場合、増税をやらない『新しい判断』(=理由)を示さねばならない。野党は『増税しないのはアベノミクスが失敗したからだ』と批判・追及してくるはずだ。『増税延期・凍結』の信を問うため、衆参同日選の可能性もあるが、国民に『あまりに党利党略だ』と映る可能性もある。一方で、増税すれば景気の冷え込みは避けられない」と語った。
 
 進むべきか、退くべきか。
 前出の田中氏は「増税を強行すれば、世界中に不安が一気に広がる危険性がある。安倍首相は来年度予算成立後、遅くとも4月には重大決断するのではないか」と語った。