2019年3月29日金曜日

辺野古土砂投入を強行しても展望はない

  北海道新聞が「辺野古土砂投入 強行しても展望はない」とする社説を掲げました。
 安倍政権は、住民投票の結果に基づいて、辺野古新基地立て工事を一旦中止し、話し合いに応じるように求めた玉城知事の要請を拒否し、土砂の投入を強行していますが、先行きの見通しは皆無です。
 
 住民の70%余の反対を押し切って強行すること自体が間違いですが、海底の一部に海面下70m以深に及ぶ軟弱地盤があって、技術的にそこまで杭(⇒砂杭)が打てないために地盤改良ができないという問題があります。それは以前から分かっていたことですが、そのことを公表しないまま着工し工事を既成事実化しようとしたのでした。しかし、地盤改良が出来ないまま滑走路を仕上げてみても、その個所は激しく地盤沈下するので使い物になりません。
 
 本来は深部に軟弱地盤があり地盤改良が出来ないことが分かった時点で、計画自体を中止し別の方策を探るべきでした。それを「隠蔽」したまま工事を開始し、軟弱地盤の問題が明らかになると、今度はN値は信頼できないとして、70m以深は強固な地盤だと言い張りました。その根拠は数百m離れた3点の土質を分析して推定したというもので、実測したN値よりもその方が信頼できるとはまさに前代未聞の話です。
 いくら隠蔽、捏造、偽装に長けた政権とは言え、そんなことが土木工学の分野で通用する筈がありません。
 
 国は、この先工事を進めるためには設計変更を行って沖縄県の承認を得る必要がありますが、そんなデタラメな経緯で、技術的に完成する見込みもないものを県が承認する筈がありません。
 この件でも安倍政権の正体が端的に示されました。
 先行きの展望は全くなく、仮に工事を強行することで米国に対して得意の「やってる感」を示そうとしても、そんなことでは事態は何も解決しません。
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社説  辺野古土砂投入 強行しても展望はない
北海道新聞 2019年3月27日
 政府が米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先とする名護市辺野古沿岸部で、新たな工区への土砂投入を始めた。
 先月の県民投票で7割超が移設に反対した中での強行は、沖縄との対立を激化させるだけで、基地問題の解決に何らつながらない
 玉城デニー知事が「民主主義を踏みにじり、地方自治を破壊する」と批判するのも当然だ。
 
 移設計画を巡っては、最深が90メートルもある軟弱地盤の存在が明らかになり、防衛省は約7万7千本のくいを打つ追加工事を予定する。
 世界的にも例がない難工事が必至となる中、防衛省は最深部のボーリング調査をせずに、国内で施工実績のある水面下約70メートルまでの地盤改良をすれば安定性が確保できると国会で答弁していた。
 あまりにずさんで、計画自体の実現性を疑わざるを得ない。
 
 基地問題は政府と県の対話なくして解決はない。その環境を整えるためにも、まずは政府が工事を止める必要がある
 新たに土砂投入が始まった区域は埋め立て海域の南側で、広さは33ヘクタールある。現在埋め立て中の区域と合わせ、予定地全体の4分の1を来年夏まで陸地化する計画だ。
 しかし、予定地東側の軟弱地盤の問題を解決しなければ基地は運用できない。政府は地盤改良について十分な説明をしておらず、総工費も示していない。
 現状では県が追加工事を承認する可能性はなく、移設計画がいずれ行き詰まるのは明らかだ。
 
 看過できないのは、岩屋毅防衛相が県民投票の結果を受け、先月の記者会見で「沖縄には沖縄の民主主義があり、国には国の民主主義がある。それぞれの民意に責任を負う」と述べたことだ。
 沖縄の民意を無視すると言ったに等しい。今月初めの共同通信の全国世論調査で、県民投票の結果について、政府が「尊重すべきだ」とした回答は68%に上った。
 政府の強行姿勢は県外でも理解を得られまい。
 
 玉城氏は先週、安倍晋三首相と会い、土砂投入中止と1カ月程度の話し合いを求め、国との訴訟を取り下げる譲歩案も示した。
 だが、首相は拒否し、県は埋め立て承認撤回の効力を国土交通相が一時停止したのは違法だとして福岡高裁那覇支部に提訴した。
 法廷闘争と工事の強行を繰り返す対立の連鎖は絶たねばならない。それには、政府が県と対話する姿勢にかじを切り、辺野古の代替案を探ることが欠かせない。