2019年3月1日金曜日

総理秘書官による“闇支配”の暗黒

 国会で毎月勤労統計に関する不正の追及を受けて、内閣参事官総理秘書官の暗躍が暴かれ、官邸の関与が日々明らかになってきました。事態は「モリカケ問題」とまったく同じ展開になっています。
モリカケ問題」では、文書なり録音データなりの明々白々の証拠でも出ない限りは、首相は首相夫妻の関与を認めないだろうというのが国民の感覚でした。しかし蓋を開けてみると関連の公文書で夫妻が関与した部分がすべて書き換えられ、証拠が消されていました。
 この前代未聞の事態は、要するに官僚による首相の防御体制が確立していたということです。そして安倍首相は何の反省もないまま、「財務省にウミを出し切らせる」という理解不能の発言をして、その場を乗り切ったのでした。
 
 歴代の政権でかつてこのような事態は生じませんでした。何故 安倍政権になってからこんな風になったのでしょうか。
 元文科官僚寺脇研京都造形芸大客員教授は、「14年に内閣人事局ができ、覚えのめでたい役人は登用され、一方で、事務次官候補でも飛ばされた。人事でこうした状況を目の当たりにし、秘書官を通じて官邸の意向が見えれば、役人はピリピリして忖度するようになっていった総理秘書官のいうことを役人は総理の命令だと忖度し、それに対応する安倍首相は『自分乃至官邸は関与していない』で突っぱねられる。安倍政権である限りまっとうな行政は戻らない(要旨)と述べています。
 
 元経産官僚の古賀茂明氏も、「過去の政権と安倍政権で違うのは、『政と官の関係』です。以前は持ちつ持たれつでありながら、時に牽制し合う面もあった。しかし、安倍首相は官僚の中でも別格の内閣法制局長官に自分の意をくむ外務官僚OBを就け外務省OBの田中均氏に外交を批判されると『彼に外交を語る資格はない』と個人攻撃し、官僚を驚愕せた
 安倍首相はキレると尋常じゃなくなる。役人と政治家の間の『一線は越えない』という暗黙のルールが通用しない恐ろしい首相だということが分かり、役人は安倍首相に従うしかなくなった(要旨)と述べています。
 
 かくして総理秘書官による闇支配の暗黒と官僚の異様な忖度は、安倍首相を辞めさせない限り続き、政治は果てしのない堕落・腐敗に向かうことになります。
 
 日刊ゲンダイの「総理秘書官“闇支配”の暗黒 官邸圧力公然と否定の驚き」を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
総理秘書官“闇支配”の暗黒 「官邸圧力」公然と否定の驚き
 日刊ゲンダイ 2019/02/27
阿修羅文字起こしより転載
 国会では相変わらず、安倍首相が子どもの喧嘩のような答弁を繰り広げている。
 25日の衆院予算委員会では、立憲民主党会派の小川淳也議員に対し、ヒステリックに色をなして反論した。テーマはもちろん、主要議題となっている毎月勤労統計の調査手法変更に関する“アベノミクス偽装”問題だ。“渦中の人物”は、厚労省の姉崎猛統計情報部長(当時)に「問題意識」を伝えた中江元哉・元総理秘書官(現財務省関税局長)なのだが、またしても「官邸の意向」と「忖度」。一昨年と昨年の国会で大論争となった森友・加計問題を思い出さざるを得ない。
 
 モリカケ問題を念頭に小川が、「安倍政権になって総理秘書官が暗躍するケースが目立つ。うそをつき、事実をないものにするような答弁が多い。権限がなく責任を負わないのに事実上の影響力を行使している」と批判すると、安倍は「(秘書官に)全く責任がないかのような言動には驚く。総理を支えるというとても大きな責任がある。使命感の下に夜遅くまで働いている」と猛抗議だった。
 だが、小川が問題視しているのは、厚労省の統計の担当者でもなく権限も責任もない総理秘書官が口出しすることによって政策が歪められる危険性なのに、安倍の答弁は秘書官の「責任」の一般論であり、情緒に訴えるすり替え以外の何ものでもない。安倍は“図星”の時に異常なほどムキになる。
 
■モリカケ問題と同じ光景
 毎勤統計問題での「官邸の圧力」は、状況証拠から見れば真っ黒だ。総理秘書官の中江氏が「問題意識」を姉崎氏ら厚労省サイドに伝え、厚労省の担当者が有識者検討会の座長へ送ったメールには「官邸関係者に説明している段階」「委員以外の関係者から部分入れ替え方式を検討すべきではないかとの意見があった」との記述があった。その後、総入れ替え方式から部分入れ替え方式に調査手法が変更されたのである。
 
 25日の予算委で厚労省の藤沢勝博政策統括官は、前者の「官邸関係者」は官邸にいる厚労省出身の内閣参事官だと明らかにし、後者の「委員以外の関係者」は姉崎氏だと主張しつつも、「中江氏も含まれる」という趣旨の発言もしている。要は、必死に官邸の関与をモミ消そうとしても、登場人物は内閣参事官であり総理秘書官。官邸の意向がクッキリなのである。
 さらには、厚労大臣答弁との食い違いや、姉崎氏や藤沢氏の発言がコロコロ変わる不自然さが疑惑を深めるばかりなのに、それでも官邸の関与についてだけは、みな揃って断固「否定」する。これぞ、まさにモリカケ問題で幾度となく見せられた光景だ。
 
 元文科官僚で京都造形芸術大客員教授の寺脇研氏はこう言う。
「時系列で見ると、モリカケ問題も今回の統計不正も2015年にいろいろ動いている。12年に第2次安倍政権が発足。14年に内閣人事局ができ、覚えのめでたい役人は登用され、一方で、事務次官候補でも飛ばされた。人事でこうした状況を目の当たりにし、15年には、総理秘書官を通じて官邸の意向が見えれば、役人はピリピリして、忖度するようになっていったわけです」
 
■秘書官は総理の100%名代
 モリカケでも、キーパーソンは総理秘書官だった。
 森友学園問題では、安倍昭恵夫人付職員だった経産省出身の谷査恵子氏が、学園の籠池泰典理事長(当時)の要望を財務省に照会。谷氏の事実上の上司に当たるのが、経産省出身で政務担当の今井尚哉総理秘書官だ。
 加計学園問題では、経産省出身の柳瀬唯夫元総理秘書官が、愛媛県や今治市の役人と官邸で面会した際に、「本件は首相案件」と発言したと愛媛県の公文書に書かれた。そして、今回は財務省出身の秘書官である。
 前出の寺脇氏は、「総理秘書官は、総理が白と言えば白、黒と言えば黒で動く。そして役人は総理の命令だと受け止める。モリカケでも同じ構図で忖度が生まれたのに、安倍首相は反省なく、『自分は関与していない』で突っぱねた。安倍政権である限り、まっとうな行政は戻りません」と言ったが、その通りなのだろう。
 
 官邸官僚が隠然たる政治力を持っているのは、霞が関の役人なら誰もが知っていることだ。元経産官僚の古賀茂明氏もこう言う。
「政務の秘書官である今井氏はまさに総理と一体化しています。だから、役人は『この人に盾突いたら大変』と考える。かつて、事務の秘書官には出身元省庁の代弁者という側面もありましたが、安倍政権では100%総理の名代になってしまいました。彼らに対しても役人は逆らえなくなっています」 
 
キレると尋常じゃない安倍首相に霞が関は恐怖心 
 総理秘書官がここまで力を持ったのは、霞が関全体が秘書官のバックにいる安倍を見ているからであり、官僚の人事権を完全に掌握する安倍が怖いからだ。
 きのう(26日)の衆院総務委員会で官邸主導の恐怖人事が「役所の忖度を生んでいる」と、立憲の高井崇志議員から追及されると、安倍は「幹部人事の一元的な管理制度は行政の縦割りを排除し、政治主導を実現するのが目的」だと反論した。
 
 確かに、官僚主導から政治主導への移行は、長年の行政改革の流れではある。しかし、安倍政権の「政治主導」は過去の政権と比べても異質。前出の古賀茂明氏はこう言った。
「1990年代後半の橋本内閣の頃から『政治主導』『内閣主導』がうたわれてきました。その完成形が安倍政権の『内閣人事局』と言えますが、過去の政権と安倍政権で違うのは、『政と官の関係』です。以前は持ちつ持たれつでありながら、時に牽制し合う面もあった。しかし、安倍政権では何でもアリの姿勢が見え、『政』の方が強くなったのです。その象徴が官僚の中でも別格の内閣法制局長官に自分の意をくむ外務官僚OBを就けたことでした。さらに安倍首相は、外務省OBの田中均氏に外交を批判され、『彼に外交を語る資格はありません』と個人攻撃したこともありました。これに霞が関は驚愕した。つまり、安倍首相はキレると尋常じゃなくなる役人と政治家の間の『一線は越えない』という暗黙のルールが通用しない恐ろしい首相だということがハッキリ分かり、役人は安倍首相に従うしかなくなったのです。その恐怖心は事務の秘書官にも言えることです」
 
 モリカケや今回のアベノミクス偽装で日常化した、官僚の黒を白と言い切る居直りや居丈高答弁は、政治の私物化を政治主導とはき違えた安倍を守るためであり、突き詰めれば自らの保身でもある。その結果、安倍が喜ぶように政策が歪められたとすれば、もはや日本は独裁国家ではないか。
 立憲主義も民主主義も亡きものにされてしまっているのに、情けないのはそんな安倍政権を野党が攻めきれないところだ。
 
 政治評論家の野上忠興氏が言う。
「モリカケ問題で役人が『知らぬ存ぜぬ』を貫き通し、自らは『指示していない』でノラリクラリ逃れることができた。安倍首相にはその成功体験がある。野党は正攻法で真正面から役人を攻めても糠にクギが続くだけです。むしろ、すぐにヒステリックになる安倍首相の弱点をもっと突いた方がいいのではないか。常々、安倍首相は『私は行政府の長』『最高責任者』だと言っているのに、官僚のせいにして通用するのか、などと追及する。そこで感情的な暴言や失言が出れば、総理の資質の問題がよりクローズアップされることになる」
 いずれにしても、明確に言えることは、安倍を総理の座から引きずり降ろさない限り、総理秘書官による闇支配の暗黒と官僚の異様な忖度も終わることはない、ということだ。