五輪の選手や関係者をバブルの膜で包むようにして、外部の人と接触させないことでコロナの感染を防止する「バブル方式」は、日本では「当初」からそして「空港到着時点」から破綻しています。
⇒ 東京五輪の「バブル方式」は選手団入国時の羽田空港で崩壊――これが菅首相の言う「安心安全な大会」なのか(高橋浩祐)
17日、五輪関係者のコロナ新規感染者数は15人/日に達し、18日夜現在、海外からの五輪関係者の感染者数は55人に達しました。
宮城スタジアムでおこなわれる東京五輪男女サッカー競技に向け、海外から仙台市に入った大会関係者の新型コロナウイルス感染が判明しました。大会関係者の大半が市内に滞在するにもかかわらず、五輪組織委がその情報を伝えたのは数日前だったので、対策を講じるには時間がなく「恐れていたことが起きた」(市幹部)と頭を抱えています。
市幹部は「もう仙台に入っていたとは驚き。空港の水際対策は不十分で、情報提供も少なく遅すぎる」と組織委への不満をぶちまけました。初歩的・基本的なことが何もできていない感じです。
15日に開かれた都のモニタリング会議では、新規感染者の増加が今のペースで続けば、8月11日には直近1週間平均で約2400人/日に達するとの試算が示されました(コロナについては1週間平均は5日~11日の範囲)が、政府高官は「それくらいなら大丈夫。中止はない」と意に介さなかったということです(“高官”はオフレコ発言時に用い、具体的には首相などのトップクラスを指します)。
因みに都で、これまでで新規感染者数が2400人/日を超えたケースは第3波ピークの1月7日(2520人)と8日(2495人)の2日間だけで、その後は漸減しました。
それとは違い、増加に向かって2400人を超えるというのは極めて重大な事態です。菅首相には「安全安心」とは大違いの五輪になるのが分からないようです。
しんぶん赤旗、河北新報、東京新聞の記事を紹介します。
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五輪目前 懸念次々 バブル破綻 関係者15人陽性 1日あたり最多
しんぶん赤旗 2021年7月18日
急拡大する新型コロナウイルスの新規感染者、「選手村」での陽性判明―政府・東京都が強行を狙う東京五輪が迫るなか不安・懸念が相次ぎ、「このまま強行していいのか」との声が上がっています。
東京五輪・パラリンピック組織委員会は17日、新たに大会関係者15人が新型コロナウイルス検査で陽性が確認されたと発表しました。1日あたりの陽性者の発表数は最多です。東京・晴海の選手村で初めて1人の陽性が確認されました。
これまでに陽性が判明した大会関係者(事前合宿で自治体が受け入れた選手らを除く)は、計45人となりました。地域の保健医療体制に影響を与えかねない事態となっています。
同日に陽性者が確認された地域は、北海道1人、宮城県1人、茨城県1人、埼玉県1人、千葉県2人、東京都9人です。
これら15人の職種は、業務委託スタッフ7人、IOC(国際オリンピック委員会)をはじめとする五輪関連団体や競技団体の関係者6人、報道関係者2人となっています。
海外から入国して選手村で陽性が判明した1人は、村外のホテルで療養しています。
組織委は「プライバシー」を理由に、陽性者の国籍や年齢、性別、濃厚接触者などの情報を公表していません。
一般の入国者はホテルなどで14日間の待機が義務付けられています。政府は五輪関係者については、待機期間を短縮できる特例措置をとっています。この間、各地で感染確認が相次いでいます。
また、東京五輪の新型コロナ対策では、選手ら大会関係者を外部と完全に遮断する「バブル方式」が成り立っていないと指摘されています。
「なし崩し」の仙台入りに不満噴出 来仙の五輪海外関係者感染
河北新報 2021年7月18日
宮城スタジアム(宮城県利府町)で21日に始まる東京五輪男女サッカー競技を前に、海外から仙台市に入った大会関係者の新型コロナウイルス感染が判明し、市がいら立ちを募らせている。大会関係者の大半が市内に滞在するにもかかわらず、東京五輪・パラリンピック組織委員会が来仙情報を伝えたのは数日前。効果的な感染対策を講じるには時間がなく、「恐れていたことが起きた」(市幹部)と頭を抱えている。
組織委の正式発表によると、市内で感染判明の大会関係者は「入国後2週間以内」だった。12日ごろに仙台入りしたとみられる。
市外で感染が確認された外国人と同じ飛行機に搭乗し、濃厚接触者と認定された。組織委から連絡を受けた市保健所が15日にPCR検査をして、16日に陽性と判明した。
市によると、現段階で大会関係者と市民の接触は確認されていない。市幹部は「もう仙台に入っていたとは驚き。空港の水際対策は不十分で、情報提供も少なく遅すぎる」と組織委への不満をぶちまける。
利府町でサッカー競技がある21~31日、市内には出場国の選手、スタッフ、組織委やメディアの関係者ら1000人弱が滞在する。
組織委が関係者の来仙情報を市に知らせたのは13日午後6時ごろ。郡和子市長が橋本聖子会長に要請文を送り、無観客試合と宿泊人数や日程の情報提供を強く求めた1時間後だ。時既に遅く、関係者の仙台入りは始まっていた。
市スポーツ振興課の三井悦弘担当課長は「開催自治体でないから情報提供を後回しにしたのか」と組織委の姿勢を疑問視。「なし崩し的に来られては、他の宿泊客と動線を分離するなど十分な対策を取ることが難しい」と打ち明ける。
市内の新規感染者は14日以降、1日20人を上回り、感染再拡大の兆しが見える。試合当日は最大1万人の観客が市内を経由するとみられ、人流増加で感染リスクが高まる可能性がある。
市感染症対策室の中道由児室長は「保健所は再拡大に備え、増員を図ったほど余裕がない。五輪関係者の感染対策は、組織委にしっかり動いてもらわなければ困る」と注文を付ける。
五輪後、2400人感染も「それくらいなら大丈夫」 政府に開催中止の選択肢なし
東京新聞 2021年7月18日
新型コロナウイルス緊急事態宣言下での東京五輪開幕まで1週間を切った。東京都では17日まで4日連続で新規感染者が1000人を超えるなど、感染状況は明らかに悪化傾向にあり、大会の中止を求める世論は根強い。だが政府には、状況次第で中止を検討する考えは既になく、このまま開幕を迎える方針だ。
菅義偉首相は16日、政府の東京五輪・パラリンピック競技大会推進本部の会合で「安全安心の大会の実現に向けて最後まで高い緊張感を持って取り組んでほしい」と話した。17日の読売テレビ番組では「たとえ無観客でも、感動を世界に届ける。難局を乗り越えられると発信することに意義がある」と強調した。
15日に開かれた都のモニタリング会議では、新規感染者の増加が今のペースで続けば、五輪閉幕直後の8月11日には直近1週間平均で約2400人に達するとの試算が示された。だが政府高官は「それくらいなら大丈夫。中止はない」と意に介さなかった。
五輪開催については、東京が3度目の緊急事態宣言下にあった6月2日の時点で、政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長が「今の状況でやるのは、普通はない」と指摘していた。首相も「国民の命と安全を守るのは私の責務。守れなくなったらやらないのは当然」と、中止の可能性を否定しなかった。
だが、それ以降、首相は記者会見などで、どのような感染状況になれば中止を検討するのかといった明確な判断基準を示すことはなかった。
元日弁連会長の宇都宮健児弁護士は15日、インターネットで集めた大会中止を求める45万超の署名を首相ら宛てに提出した。
この署名を受け、加藤勝信官房長官は16日の会見で「安全安心な大会」を実現する方針を改めて強調した。感染状況が一段と悪化した場合、大会期間中でも中止があり得るかとの問いには「大事なことは足元の感染に対してしっかりと対応し、ワクチン接種を進めることだ」と話すにとどめた。(村上一樹)