西村経再相が8日、新型コロナ対策の一環として酒類の提供停止の要請に応じない飲食店に対しては、金融機関からも働きかけをさせるとする方針に言及しましたが、激しい批判に晒され9日に撤回しました。この件では一部に西村氏の暴走とする見方もされましたが、その方針は前日7日夕に、菅首相以下、西村経再相、加藤官房長官、田村厚労相、赤羽国交相それに和泉補佐官や内閣官房などが出席した会議で決められたものであることが、AERA dot. が入手した資料で分かりました。
この件については、世に倦む日々氏が9日夜に「こんな重大な、飲食店に対する生殺与奪の政策を、西村康稔が一存で決定・発表できるわけがないじゃないか。菅義偉が決めて子分の西村康稔に言わせたことだよ。~ 」と、ズバリ正鵠を射るツイートをしています。
⇒(7月11日)西村大臣の飲食店圧力に菅首相が同調していた証拠が…
これを伝えたAERA dot. は記事の後半で、河野行改担当相がテレビ番組に出演し、モデルナ社のワクチンについて、「ゴールデンウイーク頃には1370万回分しか入ってこないと知っていた」と発言したことを取り上げました。これはワクチン入荷についての情報を持っていないのかと責められて反論したのだと推測されますが、やぶ蛇になりました。
関東地方のある自治体幹部は、「河野氏の発言はあまりに無責任だ。4月のゴールデンウィークの頃からワクチン不足になることを知っていたと、堂々テレビで話す神経を疑う。接種を急ぐよう政権は散々煽った。ワクチンが不足するなら、なぜその時点で自治体へ情報を出さないのか。~ 許せない発言だ」と、怒りを隠しませんでした。
実はこのワクチン不足の問題にも菅首相が絡んでいて、自衛隊が運営する東京、大阪の大規模接種会場にあまり人が来ないからと、首相がそれまで検討していた職域接種に舵を切ったのでした。周囲は職域接種を企業に勧めるのは慎重にした方がいいと進言したのですが、菅首相は耳を貸さなかったということです。どうも一旦思いつくと周囲の制止には耳を傾けない人間のようです。
共産党の小池晃書記局長は12日、西村担当相が記者会見で配布した文書には「金融機関に対して、融資先の飲食店への特措法に基づく要請・命令の遵守等の働き掛けを依頼」と書かれていることを指摘し、「これは、西村担当相一人の個人的な発言ではなく、政府内で検討した結果の方針といわざるをえない」と述べました。そして菅首相が「(西村氏の)発言を承知していない」と述べたことについて、「対策本部の本部長は菅首相で、副本部長は西村担当相だ。『承知していない』で済む話ではない」として、「今後、国会等で追及していかなければいけない」と述べました。
また国税庁が酒類販売業者の団体に対して飲食店との取引停止を求める事務連絡を出していることについて、「内閣官房と国税庁酒税課の事務連絡はいまだに撤回をされていない。これも撤回すべきだ。商取引の停止を求めることは新型コロナ特措法では認められていない」と強調しました(この件は13日に政府が撤回を決めました)。
しんぶん赤旗の記事を併せて紹介します。
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圧力発言で”西村大臣の乱”「菅首相らも打ち合わせに出席」河野大臣のワクチン弁明に自治体が怒り
AERA dot. 2021/07/13
「西村大臣と河野大臣の危なっかしい発言が続き、世論を揺るがしている。政権は大丈夫か…」 こう不安そうに話すのは、自民党の閣僚経験者だ。
緊急事態宣言中に酒類の提供停止に応じない飲食店に対し、取引金融機関から働き掛けてもらうという「圧力」発言が大炎上し、インターネットなどで辞任を求める声が上がっている西村康稔経済再生担当相。
7月13日の記者会見で、菅義偉首相や関係閣僚が出席した打ち合わせで内閣官房が金融機関への要請について説明していたことを暴露し、波紋を呼んでいる。自身の進退を問われると、「責任を果たしていきたい」と辞任を否定した。
AERAdot. が入手した資料によると、その打ち合わせは7日夕に開かれた。出席したのは、西村氏のほか、菅首相、加藤勝信官房長官、田村憲久厚生労働相、赤羽一嘉国土交通相、和泉洋人首相補佐官や内閣官房などの事務方たち。感染状況についての説明が行われた後、「飲食店対策のための関係機関として金融機関」が明記された資料が配られ、説明がなされたという。
この打ち合わせの後、西村氏の発言は炎上し、加藤官房長官は9日に慌てて「金融機関に対する協力はお願いしない」「西村大臣に気をつけていただきたい」と方針の撤回を表明。西村氏の発言を問われた菅首相も「承知していない」「そうした趣旨での発言は絶対にしないと思う」と火消しに走った。
しかし、12日には内閣官房が8日付で各府省庁に、所管する金融機関に政府方針への協力を求めるよう依頼する文書を出していたことも発覚。内閣官房は銀行などを監督する金融庁や、政府系金融機関を所管する財務、経産両省と事前に調整していた。
だが、梶山弘志経産相は13日、「内閣官房から発出される予定との報告を、事務方から受けたわけですが、私自身強い違和感を覚えた」「了承した事実はない」と発言。麻生太郎財務相兼金融担当相も同日に会見し、外遊先で8日夕(日本時間9日)、同行していた金融庁の秘書官から報告を受けたが、「言っている意味がよく分からなかったので、そんなの放っておけと言っておいた」などと西村発言から距離をとった。官邸関係者はこう話す。
「集中砲火を浴びて、炎上した西村氏がついに反撃に出ました。自分だけ更迭されるのはおかしい、ハシゴを外された、という思いがあるようです。官邸では『西村の乱』が始まったと騒ぎになっています。菅首相の『承知していない』は、さすがに酷いという声も出ています。7日夕に打ち合わせた話なのに、首相は『事務方の説明が耳に入らなかった』ととぼけるかもしれません。だが、その場に居合わせた以上、責任は免れません。麻生氏や梶山氏も今さら言いわけを始めたり、メチャクチャですが、この問題は西村氏個人ではなく、菅政権全体として進めた話です」
西村氏の姿は7月11日朝、選挙区の衆院兵庫9区にあった。18日投開票の兵庫県知事選挙で、自民党候補を応援するためだ。しかし、多忙な西村氏がコロナ禍でわざわざ地元まで舞い戻るのは、異例の事態で危機感の裏返しだという。
「冒頭、ひとことだけ言わせてください。多くの人に混乱、飲食店に不安を与えて反省しています」と謝罪に努めたが、聴衆は冷たかった。
「お願いする側の政府の偉い人が、圧力をかける。どうなっているのか」
「いらんこと言うな」と言い放つ声も飛んだ。西村氏の発言の影響で自民党が推す候補者が追い上げられているという。
「立場が危うくなった西村氏が切れて、首相や周囲を道連れにするかもしれないと政権内では戦々恐々となっています」(前出の官邸関係者)
一方、東京五輪・パラリンピックを目前に控え、ワクチン不足に陥った「戦犯」の一人、河野太郎行政改革担当相の発言も波紋を呼んでいる。テレビ番組に出演し、モデルナ社のワクチンについて、「ゴールデンウイーク頃には1370万回分しか入ってこないと知っていた」と発言。
一方で、当初は大規模接種会場、職域接種に「4000万回供給される」と語っていた河野氏。「9月末までに5000万回が供給」という最終的な数字は変わらないと強調した。
しかし、現在は全国的にワクチン不足となり、地方自治体は相次いでワクチン接種の予約を見合わせているのが実情だ。関東地方のある自治体幹部は、こう怒りを隠せない。
「河野氏の発言はあまりに無責任だ。4月のゴールデンウィーク頃からワクチン不足になることを知っていたと堂々、テレビで話す神経を疑う。接種を急ぐよう政権は散々、煽った。ワクチンが不足するなら、なぜその時点で自治体へ情報を出さないのか。ワクチン接種を希望していた市民にどれだけ迷惑をかけているか。キャンセルを通知する自治体も事務作業が膨大に増えている。許せない発言だ」
河野氏の発言や政府の動きには問題があったという。
「自衛隊や大都市の大規模会場で使用が予定されていたモデルナ製ワクチンの不足が政府内で判明したのは、4月初旬だったはず。自衛隊が運営する東京、大阪の大規模接種会場にあまり人が来ないと言うので、菅首相はそれまで検討していた職域接種に舵をきった。すると、希望する社が多くて、モデルナ製ワクチンの供給分(9月までに5000万回)があっという間に埋まってしまった。慌てて職域接種を中止したというのが本当のところ」(厚労省関係者)
職域接種の募集の中止発表は、東京都都議選の投開票日である7月4日に近接していた。
「都議選の結果は国政選挙と直結することで知られる。菅首相はワクチン接種を大々的にぶち上げることで都議選での大勝をもくろんだ。周囲は職域接種を企業にすすめるのは、慎重にした方がいいと進言したが、菅首相は耳を貸さなかった」(自民党幹部)
河野氏は自身のブログで<ファイザー社もモデルナ社もワクチンの供給に関する情報の公表には非常に敏感です。日本向けの供給が削減されたことが公になれば、それを狙って各国は、ワクチンメーカーにいろいろな動きをしてくるでしょう。ですからファイザー社もモデルナ社も、日本政府がワクチンに関する情報を公表する時は、必ず事前に合意の上で行うことという条件をつけています>と弁明している。だが、先の厚労省関係者はこう話す。
「単にモデルナとの交渉で揺さぶられて、後手を踏んだだけのことです。契約上のこともありますが、4月上旬での段階でワクチン確保が失敗したと公表したら菅政権が持たない。公表せずとも4月の衆参の補選、再選挙では3連敗しました。結局、公表は都議選にまでずれ込んだ。そして都議選でも事実上、惨敗しました」
冒頭の閣僚経験者はこう嘆く。
「西村氏の乱に、河野氏のワクチン発言で自民党は信頼を失うばかりだ。それを証拠に菅政権の支持率はどこも30%台と低空飛行になっている。衆院の任期は10月まであるが、それまで菅政権は持つのかと党内はザワついている」 (AERA dot .取材班、今西憲之)
西村担当相「金融機関から働き掛け」発言 方針決定経過明らかにせよ
小池書記局長が会見
しんぶん赤旗 2021年7月13日
日本共産党の小池晃書記局長は12日、国会内で記者会見し、西村康稔経済再生担当相が酒類を提供する飲食店が休業要請に応じない場合、店舗情報を金融機関に提供するとの考えを示し、その後、撤回(9日)したことについて「どこで、誰が、方針を決めたのか。その経過を明らかにする必要がある」と強調しました。
小池氏は、西村担当相が記者会見で配布した文書には「金融機関に対して、融資先の飲食店への特措法に基づく要請・命令の遵守等の働き掛けを依頼」と書かれていることを指摘。「これは、西村担当相一人の個人的な発言ではなく、政府内で検討した結果の方針といわざるをえない」と述べました。
小池氏は、菅義偉首相が「(西村担当相の)発言を承知していない」と述べたことについて、「(新型コロナ)対策本部の本部長は菅首相で、副本部長は西村担当相だ。『承知していない』で済む話ではない」と指摘。「今後、国会等で追及していかなければいけない」と述べました。
また国税庁が酒類販売業者の団体に対して飲食店との取引停止を求める事務連絡を出していることについて問われて、小池氏は「内閣官房と国税庁酒税課の事務連絡はいまだに撤回をされていない。これも撤回すべきだ。商取引の停止を求めることは新型コロナ特措法では認められていない」と強調しました。
小池氏は、営業の自由は憲法上保障されているとして、「これは営業の自由を脅かすものですらある。しかも国会での議論が一切ない」と批判。政府が「要請だ」と述べていることに触れて、「酒類販売の許認可権限をもつ国税庁が、業者の組合などでつくる酒類業中央団体連絡協議会に要請すれば、実質的には強い強制力を持つ」と指摘しました。