社会学者の上野千鶴子さんら13人と、東京五輪中止を求める緊急ネット署名を立ち上げた元外交官の飯村豊・政策研究大教授に、しんぶん赤旗が「五輪中止」を訴えるに至った理由を聞きました。
飯村氏は、五輪中止を訴えたきっかけは 組織委が看護協会に500人の動員を要請したことに五輪のために国民の健康を犠牲にするのかと思ったからで、海外では東京五輪が世界に感染を拡大させるイベントになりかねないと非常に強い批判が出ているとして、たとえ開催が強行されても最後の最後まで中止を訴えると述べました。
そしてかつて大使を務めたインドネシアでは1日で約5万6千人がコロナに感染するほど酷い状況にあるものの、多くの人はコロナに罹っても病院にもいけず倒れているとして、マレーシア、インド、ブラジルなどやアフリカ諸国も同様なので、五輪に注ぐ金をそういう国々の支援に回す日本国であって欲しいと心から思うと述べています。
しんぶん赤旗の記事「命守るため五輪中止 女性たちが抗議リレー ~ 」を併せて紹介します。
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今だからこそ五輪中止を 保守の私も統一戦線 元駐仏大使 飯村豊さん
しんぶん赤旗 2021年7月22日
外務省官房長や在フランス大使を歴任した飯村豊・政策研究大学院大学客員教授は、社会学者の上野千鶴子さん、作曲家の三枝成彰さんら13人と、東京五輪中止を求める緊急ネット署名を立ち上げました。外交官として保守政権を支えてきた飯村さんが「五輪中止」を訴えるに至った理由を聞きました。(三浦誠)
署名の呼びかけ人は保守から左派までカバーし、政治的な見解がさまざまなグループです。それが「五輪中止」の一致点で協力しています。
協力が必要
私は、元外交官であり、穏健保守です。これまで日本共産党と相いれるところはないと考えていました。「しんぶん赤旗」に登場すれば友人たちはびっくりするでしょう。インタビューに応じたのは、日本共産党が政党として一番早く「五輪中止」を主張しているからです。そこを非常に高く評価しています。
外務省で私が専門にしたのはフランスです。フランスは第2次世界大戦でナチス・ドイツに占領されました。戦後に仏大統領になったドゴール将軍やフランス共産党などが、占領に抵抗するレジスタンスで共闘しました。五輪を中止させることは世界的な課題であり、レジスタンスと同じように政治的立場を超えて連携、協力が必要です。いわば統一戦線です。
私が五輪中止を訴えだしたきっかけは、五輪組織委員会が日本看護協会に看護師500人の動員を要請したという記事をネットで読んで衝撃を受けたからです。医療関係者が新型コロナウイルスとたたかっているなかで、五輪のために国民の健康を犠牲にするのか、と。
海外で批判
社会運動とは縁がなかったのですが、黙っていてはいけないと、クリエーティブ業界で働く妻の協力も得て中止を求める署名を立ち上げました。
海外では、東京の五輪が世界に感染を拡大させる「スーパースプレッダー・イベント」になりかねないと非常に強い批判が出ています。中止することは世界に対する責任です。たとえ開催が強行されても、最後の最後まで中止を訴えます。
署名の力 政治動かす
いま世界中で新型コロナウイルスが猛威をふるっています。私がかつて大使を務めたインドネシアでは、1日で約5万6千人が感染した日もあります。先日、大使時代にコックを務めてくれた方がコロナで亡くなりました。ほかにも多くの知り合いがコロナで苦しんでいます。
あの国は公衆衛生体制、医療体制が遅れています。多くの人は新型コロナにかかると病院にもいけない。なすすべなく倒れていきます。マレーシア、インド、ブラジルなどの国々、アフリカ諸国も同様です。五輪にそそぐ金を、そういう国々の支援に回す日本国であってほしいと心から思います。
“留保”つき
菅義偉首相は6月に英国で開かれたG7サミット(主要7カ国首脳会議)で、東京五輪が「全首脳から大変力強い支持をいただきました」と述べています。
G7の宣言は「新型コロナウイルスに打ち勝つ世界の団結の象徴として」「安全・安心な形で開催すること」を支持するとしています。「コロナに打ち勝つ」と「安心・安全な形」という二つの条件を付けた上での「支持」です。
どこの国の首脳も白紙委任なんてするわけがありません。あくまでも“留保”つきです。そこを説明しないのは、国民に勘違いをさせます。実際にはコロナには打ち勝っていないし、安全・安心な開催もできていません。現状は国際約束に反しています。
署名60万人
私たちの五輪中止を求める署名と宇都宮健児・元日弁連会長が始めた署名を合わせると約60万人分となります。この力は政府にインパクトを与えます。海外の人に日本人が強く五輪に反対していることを伝えていく意味もあります。そして、日本の政治を動かすことにつながるでしょう。
命守るため五輪中止 女性たちが抗議リレー 田村氏が参加
しんぶん赤旗 2021年7月22日
東京五輪・パラリンピックの中止を求める女性たちの抗議リレーが20日、オンライン上で行われました。主催は、フラワーデモの呼びかけ人ら市民有志です。五輪開催が目前に迫るなか、「命がかかった問題です。みんなで中止を求め続けましょう」と訴えました。
医師やジャーナリスト、市民活動家や政治家などさまざまな立場の女性たちが発言。料理研究家の枝元なほみさんは、五輪招致時に安倍前首相が「汚染水は完全にコントロールされている」とスピーチしたことを念頭に「最初からうそではじまった五輪でした。この状況下でも、うそをつきながら開催しようとするなんてふざけるなという思いです」と訴え。五輪の問題に限らず、国民の声を無視する政治を変えていきたいと語りました。
日本女医会理事の青木正美さんは、東京に世界中から数万人もの人が集まることで「新たなコロナ変異株が発生し、それぞれの国にウイルスを持ちかえってしまう」と強調。「中止を求めながら誰が五輪開催に固執したのかを明確にし、選挙で決着をつけたい」とのべました。
フラワーデモ呼びかけ人で作家の北原みのりさんは、五輪中止の圧倒的な世論を菅政権が無視して開催に突き進んでいることを批判。「これは政治を変えるしかないという話だと思います。私たちはつないだ手を離さず、声をあげていきましょう」と話しました。
日本共産党の田村智子副委員長も参加しました。五輪バブルをはじめ、菅政権が繰り返していた「安全・安心のオリンピック」は妄想だったことが明らかになったと指摘。もはや五輪が開催できる根拠を誰も説明できていないと話し、「命はもちろん、自粛要請などさまざまな我慢を国民に強いる五輪は即刻中止だと求め続けます」とのべました。