五輪・パラ大会組織委は五輪を開催するにあたり医療スタッフ7000人、約30カ所の病院を五輪用に割り当てました。そこに来てこの感染爆発なので、一般医療に大きな影響が出ない筈がありません。
政府分科会の尾身会長は29日、参院内閣委で「大変な危機感を持っている。感染者数を下げる要素はないが、上げる要素はたくさんある」として、市民のコロナ慣れや自粛疲れ、デルタ株の増加、夏休み・お盆期間を列挙した上で「さらに五輪がある」と述べました。
また「感染拡大や医療逼迫を防ぐため、するべきことを全力でやることが政府・組織委の当然の責務」、ワクチンによる集団免疫獲得については「仮に70%にワクチンを接種しても、残りの30%が防護されることにはならない」と語りました(東京新聞)。
尾身会長ら専門家は30日、菅首相の記者会見前に首相と面談し「人々に寄り添うメッセージ」の発出を求めました。そして専門家らは、五輪が市民感情に影響し緊急事態宣言下でも人出の減少につながらない可能性を指摘しましたが、菅首相は「五輪と関係はないと思う」と発言しました(東京新聞)。
また五輪・パラ組織委のコロナ対策を検討する専門家会議の岡部信彦座長は取材に応じ、質問に答える形で「今はまだその段階ではないが、一般医療にしわ寄せがいくような状況になれば大会の中止も検討するべき」、「感染拡大が続けば来月のパラリンピックも中止を検討するべき」と述べました(テレビ朝日)
3つの記事を紹介します。
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尾身会長、「五輪も感染拡大の要素」 変異株や夏休み・お盆と並び
東京新聞 2021年7月30日
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は29日、参院内閣委員会で、全国的な新規感染者急増に関して「大変な危機感を感じている。感染(者数)を下げる要素はないが、上げる要素はたくさんある」と強調した。市民のコロナ慣れや自粛疲れ、感染力が強いデルタ株の増加、夏休み・お盆期間を列挙した上で「さらに五輪がある」と語った。
尾身氏は、五輪中止論に関しては「さまざまな意見が社会にある中で、政府・組織委員会は五輪をやると決定した。感染拡大や医療逼迫ひっぱくを防ぐため、するべきことはすべて全力でやることが政府・組織委の当然の責務だ」と語った。
東京都の緊急事態宣言発令後も、人出が期待通りには減っていないとの認識を重ねて示した上で「最大の危機は、社会で危機感が共有されていないことだ」と強調。このまま感染拡大が続けば「医療の逼迫がさらに深刻になる」と危機感を示した。
政府が進めるワクチン接種に関しては、人口の一定程度が免疫を持つと、感染症が流行しなくなる状態を意味する「集団免疫」獲得は当面は難しいとの考えを示した。「仮に70%にワクチンを接種しても、残りの30%がプロテクト(防護)されることにはならない」と語り、接種率の向上を求めた。(大野暢子)
「人々に寄り添うメッセージを」 尾身氏ら菅首相へ会見前に直談判
コロナ感染急拡大で
東京新聞 2021年7月30日
政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長ら専門家は30日、菅義偉首相と面談し「人々に寄り添うメッセージ」の発出を求めた。面談は同日夜の菅首相の記者会見前に実施された。
感染拡大の中、専門家らは東京五輪が市民感情に影響し、緊急事態宣言下でも人出の減少につながらない可能性を指摘したが、菅首相は「(五輪と関係は)ないと思う」と発言。厚生労働省に助言する専門家組織は「危機感を行政と市民が共有できていないのが最大の問題」と指摘していた。
面談は尾身氏ら専門家が打診した。脇田隆字・国立感染症研究所長、岡部信彦・川崎市健康安全研究所長のほか、田村憲久厚労相、西村康稔経済再生担当相も同席し30分間行われた。
◆「これまでで最も厳しい危機的な状況」
終了後、尾身氏は「今の感染状況、医療状況は、これまでの1年半以上の取り組みの中で、最も難しい危機的な状況」と発言。五輪開催などについて「人々が複雑な気持ちを持っている」とし、「気持ちに寄り添うメッセージがこの局面に今まで以上に求められる。そのことを伝え、総理も分かっていただいたと感じている」と話した。
面談に先立って開かれた基本的対処方針分科会では、メンバーから「総理がなぜ五輪を開いたか誠実に説明し、五輪が人々のいろんな気持ちに影響を与えたことを認めてほしい。認めた上で協力のお願いをするべきだ」との意見が出ていた。
菅首相は面談後の30日夜、記者会見したが、同席した尾身氏による対応が目立った。「危機感共有のため自身の発信力が必要では」という問い掛けに、菅首相は「若者へのメッセージは極めて大事だと思っています」と答えるにとどまった。(沢田千秋、村上一樹)
「大会中止も検討を」組織委専門家会議座長が懸念
テレビ朝日 2021/7/30(
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会でコロナ対策を検討する専門家会議の岡部信彦座長が取材に応じ、「一般医療にしわ寄せがいくような状況になれば大会の中止も検討するべき」という考えを示しました。
コロナ対策専門家会議・岡部信彦座長:「一般の医療そのものに、しわ寄せがくるっていうのは、これはタイミングとしては、その継続をどうするか本当に考えなきゃいけない」「(Q.中止についても検討すべきだと?)そうですね」
組織委員会でコロナ対策を検討する専門家会議の座長・岡部氏は一般医療に大きな影響が出る状況になれば、オリンピックの中止も考えなければならないとしています。
今はまだその段階ではないとしながらも、感染拡大が続けば来月のパラリンピックも中止を検討するべきとしています。
コロナ対策専門家会議・岡部信彦座長:「選手の人と一般の人が同時に、例えば入院しなくちゃいけない時に選手を優先というよりも重症度を優先すべきだと思う。亡くなるような人をやっぱり一人でも救いたいし、重症になる人も救いたい」