2021年7月29日木曜日

国民愚弄の「五輪が始まれば盛り上がる」(菅首相)を現時点で検証

 菅首相は月刊誌「Hanada」のインタビューで、コロナ禍で五輪開催に踏み切ったことに「私はコロナ対策に直接あたってきたから、この判断には自信があった」と答え、開催で感染が拡大することに対しては「ワクチン接種が極めて順調に増えているからその懸念はあたらない」と断言しました「(懸念はあたらない」という無意味な表現はもう聞き飽きましたが、「コロナ対策に直接あたってきた」とは一体どの口が言うのかというもので、まさに言いたい放題という感じです。

 しかしその言葉とは裏腹に、東京都のコロナ感染は心配されていた通り破滅的な事態に向かっています。
 日刊ゲンダイが「『五輪が始まれば盛り上がる』(菅首相)を現時点で検証」する記事を出しました。
 経済評論家の斎藤満氏は「日本選手の活躍にも、どうにも盛り上がり切れず、冷めた目で見ている自分がいる。今回の五輪は、やはり無理のある開催だった東京の感染者は、大会期間中にどこまで増えるのか。想像するのも怖い。このまま五輪を最後まで続けられるのかどうかも疑問」と述べました。
 政治ジャーナリストの角谷浩一氏は「自国開催の五輪なのに、沸き立つような熱気や興奮には程遠い。あまりに不祥事がありすぎた。開幕してもネガティブな情報がどんどん入ってくる。選手村の食事がまずい、暑すぎて試合にならない、東京湾の水が汚いなど、外国選手の不満を聞かされ、開催の肯定派、否定派にかかわらず、日本人として『本当にすみません』と申し訳なく思ってしまう。高揚感を得るのは無理な話です」と嘆きました。
 また政治評論家の森田実氏は、「コロナの問題はコロナに真正面から向き合って解決するしかないのに、五輪頼みで浮かれている安倍・菅政権は傲慢であることに開き直り、薄汚れた五輪を推進してきた。『世界平和』『人類平等』などの理想を完全に失い、金儲けだけが目的の醜悪な五輪を推進し、スポーツを政権浮揚に利用する卑しさでは、政治が国民に信頼されるわけがありません」と指摘しました。
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<ポンコツ首相の皮算用>
国民愚弄政権の末期症状 「始まれば盛り上がる」を現時点で検証
                       日刊ゲンダイ 2021年7月28日
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 私はコロナ対策に直接あたってきたから、この判断には自信があった
 発売中の月刊誌「Hanada」のインタビューで、ことについて、菅首相はこう強弁した。五輪開催によって感染が拡大する懸念について問われても、「ワクチン接種者数が極めて順調に増えていっているから、その懸念はあたらない」と言い切った。
 だが、厚顔無恥とはこのことだ。菅の大甘見通しは大ハズレで、誰もが予想した通り、感染は恐ろしいほど急激に拡大している。27日の東京の新規感染者数はついに2000人を突破し、一気に2848人。今年1月7日の2520人を超え、過去最多を更新してしまった。前週の同じ曜日と比べ1461人もの激増とは想像を絶する。
 こうなると当然、医療は逼迫する。都はコロナ用の確保病床を計画の最大数である6406床まで引き上げる方針だが、それに伴い、都内の医療機関には通常診療の制限を視野に入れるよう通知した。救急医療の縮小や停止、手術の延期などの検討の要請である。まさに今春、大阪府で起きた医療崩壊が東京にも迫っているということだ。
 菅は「不要不急の外出を控えて」と27日も繰り返していたが、どの口が言う。五輪開催が「緊急事態宣言下でも外出していい」という誤ったメッセージとなり、感染を拡大させたことは間違いない。特に4連休の人流増は顕著で、羽田空港はごったがえし、18万人が首都圏から脱出したというデータもある。それでもなお菅は、「五輪開催の判断には自信があった」と言い続けられるのか。

浮かれるテレビキャスターに違和感
 五輪を強行したポンコツ首相の念頭には「始まれば盛り上がる」「メダルラッシュで悪いことはみんな忘れる」といった大甘見通しもある。皮算用の通りとなるのか、ならないのか。
 27日の夕方のテレビはシュールな光景だった。各局ともニュースで東京の新規感染者が過去最多を更新したことを報じ、アナウンサーや記者が深刻な表情で「急拡大の要因は」などと解説する。ところが、五輪中継や五輪結果のニュースに切り替わると、笑顔のアナウンサーが喜々として、日本選手の奮闘を伝えるのだ。
 感染拡大と五輪という“因果関係”のある情報をセットで見せられる視聴者は少なからず当惑したのではないか。
 五輪のために、血のにじむ練習を重ねてきた選手たちに罪はない。しかし、感染者がここまで急激に増え、医療従事者が悲鳴を上げる中で、心からの声援を送れる国民がどれだけいるのだろう。
 経済評論家の斎藤満氏はこう話す。
「開幕前まで開催に疑問を呈していたテレビキャスターが、日本選手の金メダルに浮かれ、はしゃいでいる様子には違和感を覚えます。日本選手の活躍にも、どうにも盛り上がり切れず、冷めた目で見ている自分がいる。コロナ感染が拡大の一途であることからしても、今回の五輪は、やはり無理のある開催だった。それは五輪選手にも影響し、来日してから陽性になり大会に出場できなかった選手もいる。こんなのフェアじゃありませんよ。27日過去最多を更新した東京の感染者は、大会期間中にどこまで増えるのか。想像するのも怖い。このまま五輪を最後まで続けられるのかどうかも疑問です」

開幕後も続くネガティブ情報と世界に対する恥ずかしさ
 途中中止の懸念など一切ないかのように、テレビは朝から晩まで五輪一色だ。毎日、どこかのチャンネルで競技中継が放映されている。夜には各局がハイライトシーンをたっぷり流す。
 米国ではNBC、英国ではBBCと、五輪放送は1社が独占で放映権を獲得し、放送しているため、他のチャンネルでは五輪と距離を置いた通常放送が行われている。しかし日本は違う。NHKと民放連で組織するコンソーシアム(共同事業体)方式だから、日本中の全ての地上波チャンネルで「がんばれ日本」「日本選手スゴイ」と盛り上げる護送船団になってしまうのだ。
 大会5日目の27日までで、日本のメダルは金10、銀3、銅5の計18。スポーツ紙などの事前予想から見れば、体操・内村航平、競泳・瀬戸大也、女子テニス・大坂なおみなど、大物が早々に敗退する番狂わせではあるものの、連日のメダルラッシュにテレビは沸いている。
 確かに、13年越しの連覇を達成したソフトボールなど、拍手を送りたい選手はたくさんいる。だが、そこに高揚感があるかというと微妙。政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう嘆く。
自国開催の五輪なのに、沸き立つような熱気や興奮には程遠いですね。遠目では日本選手に頑張って欲しいと思うんですよ。しかし、開催直前の辞任・解任騒動に代表されるように、あまりに不祥事がありすぎた。競技が始まったからといって気持ちを切り替えるのは簡単ではありません。加えて、自国開催だからこそ、開幕してもネガティブな情報がどんどん入ってくる。選手村の食事がまずい、暑すぎて試合にならない、東京湾の水が汚いなど、外国選手の不満を聞かされ、日本人として『本当にすみません』と申し訳なく思ってしまう。準備期間はたっぷりあったのに、どうして失敗ばかりなのか。五輪開催の肯定派、否定派にかかわらず、日本人はみな世界に対して、恥ずかしさを感じている。高揚感を得るのは無理な話です」

過去最多感染の一撃は菅政権への警告
“五輪大好き国民”だった日本人をこれほど憂鬱な気分にさせ、心から喜べなくさせたのは、一体、誰のせいなのか。メダルラッシュだからって、デタラメ政治が免罪されることはない。
 ポンコツのドス黒い政治的思惑は、「メダルラッシュになれば国民はコロナ失政を忘れる。熱気冷めやらぬうちに衆院選に突っ込み、勝利して首相続投」という私利私欲。だが、五輪は始まる直前まで混乱続きで、障害者イジメにホロコースト揶揄と、人権感覚ゼロの恥部を世界に見せつけた。大会組織委員会は誰も責任を取らず、官邸は上から指図するだけだった。
 IOC(国際オリンピック委員会)の金満主義が白日の下にさらされ、オリンピズムの理念など最初からないことも知れ渡った。そんな、ただ“やるだけ”の五輪で盛り上がるわけがない。
 政治評論家の森田実氏が言う。
「日本も世界も現在の下部構造(土台)はコロナです。その上に五輪も含まれるさまざまな上部構造をつくって、上の力で下を変えようと狙っているのが今の菅政権です。しかし、それはナンセンスな話。コロナの問題はコロナに真正面から向き合って解決するしかないのに、五輪頼みで浮かれているから、東京の新規感染者2848人という大きな一撃を食らわされた。『菅よ、日本政府よ。おかしなことをやっていてはダメだ』という警告です。政権は傲慢になると必ず滅びることは、何千年もの歴史が証明しています。安倍・菅政権は傲慢であることに開き直り、薄汚れた五輪を推進してきた。『世界平和』『人類平等』『人間の可能性を高める』などの理想を完全に失い、金儲けだけが目的の醜悪な五輪を推進し、選手の活躍を政治利用している。金メダル第1号の選手に電話を入れた一件に象徴されるように、スポーツを政権浮揚に利用する卑しさでは、政治が国民に信頼されるわけがありません」
 バカな大将が「俺が正しい、文句あるか」と叫べば叫ぶほど空疎に響く。まさに国民愚弄政権の末期症状。東京の感染者数は、1週間のうち、水曜や木曜の方が多めに出る傾向がある。28日水曜はどうなるのか。
 菅は27日「五輪中止の心配はない」と断言したが、謙虚さのないリーダーに国民の命と健康は守れない。