水道民営化を強行した世界各地では民営化の弊害が顕著になり、再び公営方式に戻る流れが主流になっています。水道民営化の本質は「生活必需品を独占すること」です。グローバル大資本がその旨味に目を付け、新自由主義政権がそれに乗って一頃あちこちで実現しましたが、予想された通り水道事業を独占した大資本は水道料金を著しく釣り上げる一方でサービスを低下させました。
宮城県議会は7月5日の本会議で、上水道の運営権を民間に売却する「水道民営化」強行に向けて、民間事業者への運営権設定に関する議案を賛成多数で可決しました。異例の事態です。
それをリードした村井嘉浩・宮城県知事は、同県で行われる五輪サッカ―試合について、仙台市長や県医師会、仙台市医師会、東北大病院等が「無観客開催」を要請したことを無視して、「有観客で実施」することを決めました。
植草一秀氏は、それは通常のスポーツ興行と五輪興行の違いをまったく理解していないものでコロナの感染を誘発する惧れがあるとし、また水道民営化は新しい利権政治を象徴する事案であるとして、このような人物が次の県知事選に出馬するなら、宮城県の主権者はこの候補者を確実に落選させるべきであるとするブログを発表しました。
関連して日刊ゲンダイが、五輪とプロ野球とではコロナの感染に対して置かれた立場が全く違うとする記事を出しました。併せて紹介します。
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本格化する宮城県村井知事落選運動
植草一秀の「知られざる真実」 2021年7月13日
本年11月20日、宮城県知事が任期満了を迎える。宮城県知事選が実施される。
2021年は、自公と反自公候補の戦いになった
1月7日の山形県、3月21日の千葉県、6月20日の静岡県 の知事選ですべて自公候補が敗北している。
4月25日の北海道、長野、広島の国政三選挙でもすべての自公候補が敗北した。
この流れを受けて宮城県知事選でも現職の村井嘉浩氏を落選させることが強く求められる。
東京五輪は基本的に無観客開催になった。日本の主権者の圧倒的多数が五輪中止または無観客開催を求めている。
コロナ感染が拡大しており、有観客での五輪開催を支持する国民はほとんどいない。
通常のスポーツ興行と五輪は異なる。多数の五輪関係者が会場に向かう。
また、観戦チケットの保有者の多くが首都圏在住で、五輪観戦のために感染拡大地から五輪開催地に向けて大きな人流が発生する。「直行直帰」に法的拘束力はない。
多数の国民が飲酒を伴う会食を行うことは避けられない。宮城県最大都市である仙台市の郡和子市長は五輪組織委員会に宮城県での五輪開催を無観客にするよう要請した。
これに対して宮城県の村井嘉浩知事があくまでも有観客開催を強行する方針を示している。
宮城県では県のコロナ対策本部会議に参加する県医師会、仙台市医師会、東北大病院も連名で7月12日、「県外客の来県は大きな危惧を抱かざるを得ない」などとして無観客を要請した。
村井知事はこの声も無視する姿勢を示している。村井知事はスポーツ興行が有観客で行われていることを挙げて、「五輪のサッカーのお客は観戦できませんというのは、極めて不平等」と主張する。
通常のスポーツ興行と五輪興行の違いをまったく理解していない。
宮城県議会は7月5日の本会議で、上水道の運営権を民間に売却する「水道民営化」強行に向けて、事業者への運営権設定に関する議案を賛成多数で可決した。
水道民営化は新自由主義の装いを施す新しい利権政治を象徴する事案。水道民営化を強行した世界各地では民営化の弊害が顕著になり、再公営化の流れが主流になっている。
時代遅れの利権主義=水道民営化を推進するのが宮城県の村井嘉浩氏である。
「民営化」の実態は「営利化」。
人々の生存に不可欠な「公共財」は公的機関が責任をもって安定供給を図る。これが公的事業の役割だ。
生活必需品であり、生存に不可欠な社会資本=インフラストラクチャーである。
生活必需品だから誰が事業を実施しても成り立ち得る。独占事業であるから価格を高く設定すれば独占利潤を獲得できる。
富の増殖のみを追求するグローバル大資本が富の追求のために目を付けたのが公的事業。
非営利の公的事業を営利目的の利益追求事業に置き換えるのが「民営化」で、実態は「営利化」。巨大資本への利益供与である。
見返りに何らかのキックバックがあると考えるのが自然だ。
為政者が最優先するべき事項は市民の命と健康。命と健康を守る視点から五輪の無観客が求められている。
村井嘉浩氏が五輪の有観客開催を求めるのは自分自身の利益のためであると見られる。
このような人物が次の県知事選に出馬するなら、宮城県の主権者はこの候補者を確実に落選させるべきだ。
(以下は有料ブログのため非公開)
宮城県の有観客強行に苦情殺到 プロ野球はOKでも「五輪はNO!」の凄まじい嫌われっぷり
日刊ゲンダイ 2021/07/14
このまま強行されるのか。
東京五輪・サッカー男女の試合会場、宮城スタジアム(利府町)で最大1万人を動員する件について、宮城県の村井知事は13日、改めて「特に変更はない」と予定通り有観客で開催する方針を示した。
県医師会、仙台市医師会などは12日に、人流増加などの懸念から県に無観客とする要望書を提出。県や利府町には数百件の苦情電話やメールが殺到し、仙台市の郡市長もこの日、五輪組織委に無観客を要請した。
21日の五輪サッカー開幕まで約1週間。無観客を求める声は封殺されそうな気配だが、その一方で、プロ野球は17日のオールスターで仙台市の楽天生命パーク宮城で収容人数の50%となる1万5600人を上限に動員して開催するほか、24,25日の両日は東京五輪日本代表が同じく最大50%の観客を入れて強化試合を行う。五輪サッカーの10試合と比べると試合数は少ないものの、プロ野球は国内で最も多くの観客動員力を誇るスポーツ。10日からの楽天対西武の2連戦にも楽天生命パーク宮城には計2万4881人が集まった。人流を呼び込むという意味ではむしろ、野球の方がリスクは高いかもしれない。
五輪とプロ野球とでは置かれた立場が全く違っていた
しかし、県のスポーツ振興課に球宴や強化試合の開催について問い合わせたところ、「13日時点では球宴や代表の強化試合について観客数の変更などは議題に上がっておらず、直接、賛成、反対などのご意見はいただいていない」とのこと。五輪とプロ野球とでは置かれた立場が全く違うようだ。
宮城県医師会や仙台市医師会に見解を求めると、「要望書関連の取材は一切お断りしています」との回答だったが、地元のメディア関係者はこう指摘する。
「仙台市長が無観客を言いだしたのは再選を目指す8月1日の市長選挙を見据えたパフォーマンスだ、なんて声もあります。五輪サッカーはJリーグの感染対策を参考に行うそうだが、五輪はプロ野球やJリーグとは違い、外国人関係者がやって来る。にもかかわらず、組織委は県内に何人の五輪関係者が滞在するかを明確にしておらず、GPSによる行動管理にも及び腰。東京では早速、外国人関係者が外で飲み歩いた上にコカインをやったとして捕まった。欧米のロックダウンくらいの強制力がなければ、好き勝手やるのは目に見えている¥」
野球はいいけど五輪はダメなのは、IOCや組織委への不信感が根底にあるということだろう。