2021年7月21日水曜日

ハラスメント禁止 日本はILO条約の批准急げ(しんぶん赤旗 主張)

  I LO条約は現在189りますが、日本は常任理事国であるにもかかわらずそのうち批准しているのはわずか49に過ぎず、この数字は、OECD諸国の平均批准数75と比べて明らかに少ないものです。未批准の条約の中には、中核的労働基準を定めているために全加盟国に批准が要請されるものも含まれています

 象徴的なのものに1919年の第1回I LO総会で採択された第1号条約があります。これは労働時間について1日8時間、週48時間(現在は40時間)の制限を定めた条約ですが、日本は、同条約の採択にあたり、後進国としての特殊性を主張して、日本についてのみ例外的に基準を緩和する条項(第9条)を挿入させたのですが、その条約すら批准しなかったのでした
 日本は、その後著しい経済発展を遂げましたが、条約の採択から100年が経過した現在に至ってもなお、同条約を批准していません
(上記は「I LO創設100年」(田中淳哉弁護士の“つれづれ語り”)から抜粋しました)

 しんぶん赤旗の主張「ハラスメント禁止 日本はILO条約の批准急げ」を紹介します。
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    (19.4.19)「I LO創設100年」(田中淳哉弁護士の“つれづれ語り”)
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主張 ハラスメント禁止 日本はILO条約の批准急げ
                        しんぶん赤旗 2021年7月19日
 国際労働機関(ILO)の「労働の世界における暴力とハラスメントを撤廃する条約」が6月25日に発効しました。職場などでの暴力とハラスメントを法令で禁止し、加盟国に実効性ある施策を求めた初の包括的な国際基準です。コロナ危機のもと、困難が増大している働く人の命と権利を守るとともに、コロナ後の社会を築いていく上でも条約の意義はいっそう大きくなっています

働く全ての人を対象に
 条約はこれまでの国際的な人権保障の到達をふまえ、暴力とハラスメントは許されない人権侵害だと断じました。全ての人に、暴力とハラスメントのない世界で働く権利があるとうたっています。「誰も取り残さない」という精神が全体に貫かれています。
 暴力とハラスメントの定義について、「身体的、精神的、性的、経済的な被害をもたらす、または可能性がある許されない行為と慣行」とし、単発か反復かを問わないと明記しました。「ジェンダーに基づく暴力とハラスメント」について特記し、女性の労働参加と定着、昇進を阻害する恐れがあると指摘したことも重要です。
 画期的なのは対象範囲の広さです。正規・非正規の雇用形態にかかわらず、フリーランス、求職者、実習生、雇用が終了した人、ボランティアまで働く全ての人が含まれます。取引先、顧客、患者、公共空間にいる人など第三者の行為や、メールなどオンライン上、通勤時・休憩中など業務に関連するハラスメントを広く規制します。
 各国政府に求める対策では、法令による禁止に加え、▽対処・防止のための包括的な戦略策定 ▽法の実施・監視のための仕組みの確立と強化 ▽効果的な監督・調査手段の確保―も挙げました。被害者の救済・支援と加害に対する制裁を定めることも規定しました。被害者の尊厳回復と再発防止という切実な願いが反映したものです。

 これらは日本にとっても不可欠な課題です。精神障害の労災認定件数は過去最多を更新し、原因はパワハラがトップです。セクハラは毎年約7000件の相談が全国の労働局に寄せられ、通勤中の痴漢や、4人に1人が被害にあっている就活セクハラでも多くの人が泣き寝入りを強いられています
 条約が圧倒的多数の賛成で採択された2019年のILO総会で、日本の使用者代表・経団連は棄権しました。当初消極的だった日本政府は、労働組合のたたかいや#MeTooなどの運動と世論が高まる中で賛成しました。急ぐべきは、批准と国内法の整備です
 最大の問題は日本の法律にハラスメントの禁止規定がないことです。事業主には相談窓口設置など防止措置義務がありますが、行政の是正指導はその履行に対するもので限界があります。違反企業名の公表も14年間で1件のみです。禁止を根本に据えてこそ実効性ある包括的な対策が進みます。

声上げ尊厳守る政治へ
 運動の力で、19年のハラスメント関連法改定の付帯決議には、禁止の法制化の検討などが盛り込まれました。野党が20年に共同提出したセクハラ禁止法案は継続審議となっています。各地のフラワーデモや労働組合などの取り組みは、声を上げることの大切さを示しています。個人の尊厳を守る政治へ連帯を広げる時です。