東京都が確保している重症病床は1207床ですが、その使用率は既に51・3%と、50%を突破してステージ4(爆発的感染拡大)に達しました。
大阪の例を振り返ると、今年3月1日から7月4日までに1513人のコロナ患者が亡くなりましたが、4~5月にかけて重症病床が完全に埋まったため、一部の重症者は軽症や中等症病床での治療を余儀なくされ、自宅や宿泊施設での亡くなった人も少なくありませんでした。
ただ、辛うじて重症治療を受けられた1772人については死者は387人に抑えられ、8割(78%)近くが助かりました。府の担当者は「重症病床で治療することにより多くの方の命が救える」と語っています。
重症病床は大勢のスタッフが必要で増床には限界がありますが、漏れなく治療を受けられる体制を死守できれば死者を大幅に減らすことは可能ということです。本来、行政はそれに向けて最大限の努力をすべきでしたが、それはなされずに逆に政府は五輪を強行し、感染拡大の方向に走るとともに一部の医療ソースも五輪対応に割いてしまいました。
これではこの先死者が激増することになりかねません。
日刊ゲンダイが伝えました。
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五輪強行が招く人災「40代・50代コロナ死」続出リスク 重症病床使用率すでにステージ4突破
日刊ゲンダイ 2021/07/21
やはり、五輪をやっている場合ではない。20日の都内の新型コロナの新規感染者は1387人。前週の火曜日より557人増え、31日連続で前週を上回った。直近7日間平均も1180人と前週の149.3%に上昇。重症者も急増する中、コロナ死をいかに最小限に抑えられるか、重要な局面を迎えている。重症治療で8割近くの命は救える ― そんな結果が大阪府の調査で分かったのに、五輪強行で台無しだ。
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■都内の重症者は軽く「第3波」超え
都は重症者を前日と同じ60人と発表したが、人工呼吸器やECMOでの管理が必要な患者に限定した独自指標に過ぎない。集中治療室(ICU)などの患者も含めた国の基準に直すと前日より一気に43人も増えて619人。約1カ月で1.8倍に膨れ上がり、「第3波」のピーク時の567人(1月27日)を軽く上回る。
確保している重症病床は1207床で使用率は51.3%。ついにステージ4(爆発的感染拡大)の50%を突破した。第3波の頃のように重症病床が逼迫するリスクは高まるばかりだが、重症治療の重要性を示す大阪府のデータがある。
大阪では、今年3月1日から7月4日までに1513人のコロナ患者が亡くなった。このうち重症から死に至ったのは387人。全体の25%と意外に少ない。大阪では4~5月にかけて、重症病床が完全に埋まり、一部の重症者は軽症や中等症病床での治療を余儀なくされた。また、自宅や宿泊施設での死も少なくなかった。
この間、辛うじて重症治療を受けられたのは1772人。うち死者は387人なので8割近くが助かったことになる。府の担当者は「重症病床で治療することにより、多くの方の命が救えると認識しています」(感染症対策企画課)と答えた。重症治療を行えば、救える命は少なくないのである。
助かる命を見捨てるのは人災
現在は高齢者のワクチン接種が進み、重症者の中心は40~50代にシフトしている。高齢者の場合、重症治療は体力的に難しかったり、本人が望まないこともあった。西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)が言う。
「40~50代は重症治療に耐えられる上、死亡リスクが高い高齢者と違って、回復する可能性も高い。大阪の重症治療で8割近くが助かったのは高齢者が中心の時期でしたが、40~50代なら助かる割合はもっと増えるでしょう。必要な患者が重症病床で治療を受けられれば、これまでよりも死に至るケースは少なくできるということです」
都が確保している重症病床1207床は4月28日から1床も増えていない。都の担当者は「7月上旬に都基準の重症病床を373床から392床に増やしました。国基準でも1207床から少しは増えるはずです」(感染症対策部)と回答。劇的に増えることはなさそうだ。
「重症病床は大勢のスタッフも必要で、増床には限界があります。感染拡大は勢いを増していますが、漏れなく治療を受けられる体制を死守する必要がある。ところが、政府は五輪を強行し、感染拡大の方向に走り、一部の医療ソースも五輪対応に割かれてしまう。せっかく、重症病床で40~50代の命が助けられる可能性が高くなっているのに、死者が激増することになりかねません」(中原英臣氏)
助かる命を見捨てるのは人災だ。五輪強行で40~50代のコロナ死ラッシュなんて、あってはならない。