日刊ゲンダイに感染症専門の岩田健太郎・神戸大教授のインタビュー記事が載りました。
岩田氏は先ず、東京五輪を実効再生産数が1を超えている(東京都は1・13)なかでどうして開くのか、明らかに矛盾していると述べています。
ウガンダ選手団の受け入れでは大きな問題点が2つあったとして、本来ならば同じ飛行機で長時間一緒に移動していたのだから、全員の感染を疑い、成田空港で選手らを個別に隔離して検査を繰り返すべきであったことと、事実上感染の疑いがある者をバブル内に入れてしまったのはまったく論外で、丸川五輪相が今回の対応を「問題ない」述べたのは、大会主催者側がバブル方式の意味すら理解していないということで、愚かとしか言いようがないと断じています。
そしてこんな状況で東京五輪が始まろうとしていますが、最悪のシナリオは「大会が運良く成功してしまうこと」で、そうなった時 日本の感染症対策が死ぬ、日本の進歩はない、長期的にはさらなる手痛いダメージを負う可能性があると述べています。
逆説的に要約された表現なので詳しい真意は本文から読み取ってください。
日刊ゲンダイの記事を紹介します。
また菅首相は4日、FM番組に出演し「世界全体がコロナ禍という困難に直面しているからこそ、人類の努力や英知を結集して乗り越えられるということを世界に発信したい」と述べました。
それに対して新型コロナ感染症の診療する宇都宮市のインターパーク倉持呼吸器内科の倉持仁院長が同日ツイッターで、「残念ながら日本においては努力や英知を集結はせず、ほぼほぼ自助ときおり共助、ほぼなし公助、そして絆。なんの絆かはわかりません」と反論しました。口先だけで適当なことを言うだけの菅首相への憤りが伝わってきます。
併せて紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
私が東京五輪に断固反対する理由
岩田健太郎氏「万にひとつでも東京五輪が成功すると日本の感染症対策が死ぬ」
日刊ゲンダイ 2021/07/03
■ 岩田健太郎(感染症専門内科医)
東京五輪は一種の「Go To キャンペーン」ですよ。
昨年7月、Go Toトラベルが実施される直前、政府の感染症対策分科会の尾身茂会長は「移動自体が感染拡大につながらない」などと言っていましたが、旅行には飲食などさまざまなイベントが含まれています。結局、Go Toトラベルが感染拡大に影響を与えることを示唆する論文が出ましたね。
東京五輪は全国から観客やボランティアがやってくる。彼らが日帰りの直行直帰をするのか、はなはだ疑問です。現在、東京都や埼玉県では1人の感染者から何人に感染が広がるのかを示す「実効再生産数」が「1」を超えています。つまり、感染が拡大傾向にある。それなのにどうして東京五輪を開くのでしょうか。明らかに矛盾しています。
■「バブル方式」の意味すら知らない大会主催者側
感染リスクがあるのは一般人だけでなく、選手らも同様です。政府や都、大会組織委のずさんなバブル方式がそれを物語っている。
成田空港でウガンダ代表選手1人が感染していることが分かりましたが、大きな問題点が2つありました。まず、成田空港では濃厚接触者の判定が行われず、あろうことか残りの全員が同じバスで大阪の宿泊施設に行きました。そんな対策をしていたら後日、新たな感染が判明したのです。本来ならば、同じ飛行機で長時間一緒に移動していたのだから、全員の感染を疑い、成田空港で選手らを個別に隔離して検査を繰り返すべきでした。
そして、「バブル方式」というのは、内部にウイルスを入れないように徹底的に区分けするものです。だから、感染の疑いがある者をバブル内に入れてしまうのはまったく論外です。ところが、丸川珠代五輪相は今回の対応を「問題ない」との認識だった。大会主催者側が、バブル方式の意味すら理解していないとは、愚かとしか言いようがありません。
それでも東京五輪は「安心・安全」だとか。政府や都、大会組織委はその基準を示さないのも、おかしな話です。これでは何が起きても「安心・安全だった」とされるでしょう。
このような状況で東京五輪が始まろうとしていますが、私が思い描く最悪のシナリオは「大会が運良く成功してしまうこと」です。そうなった時、日本の感染症対策が死ぬと考えています。
ハッキリ申し上げると、日本の感染症対策のレベルは中国、韓国に劣っています。これは過去の間違った成功体験が原因となっています。たとえば2000年代初期にSARSがはやった時は、たまたま日本には感染者があまり入ってこなかった。次に、09年の新型インフルエンザパンデミック時は、ウイルスが弱くて何とかなってしまった。具体的な対策をほとんどしていませんでしたが、奇跡的にうまくいってしまったのです。そうして、「これでエエんや」とあぐらをかいていた結果が、現在の惨状を招いているのです。
万にひとつでも東京五輪が成功したら、日本の進歩はありません。長期的にはさらなる手痛いダメージを負う可能性があります。ただでさえ、「安心・安全」「成功だった」と片付けることのできる余地を残した東京五輪です。間違った教訓を植え付けないためにも、私はこの時期の開催には反対です。
▼岩田健太郎(いわた・けんたろう) 1971年、島根県生まれ。2008年から神戸大学大学院医学研究科教授(微生物感染症学講座感染治療学分野)。昨年2月、専門家としてダイヤモンド・プリンセス号に乗船し、現場の惨状を伝えたことで世間に大きな衝撃を与えた。著書に「麻疹が流行する国で新型インフルエンザは防げるのか」「予防接種は『効く』のか? ワクチン嫌いを考える」など。
倉持仁院長が菅首相発言に憤慨「日本においては努力や英知は結集せず。ほぼほぼ自助」「なんの絆かはわかりません」
中日スポーツ 2021/07/04
東京五輪・パラリンピック開催について、ラジオ番組で改めて意欲を示した菅義偉首相に対し、新型コロナ感染症の診療する宇都宮市のインターパーク倉持呼吸器内科の倉持仁院長が4日、自身のツイッターを更新。「日本においては努力や英知は結集せず。ほぼほぼ自助」と憤った。
菅首相は4日、FMのNACK5の番組に出演し「世界全体がコロナ禍という困難に直面しているからこそ、人類の努力や英知を結集して乗り越えられるということを世界に発信したい」と述べ、感染対策に万全を期す考えを強調した。
これに対して倉持院長は「残念ながら日本においては努力や英知を集結はせず、ほぼほぼ自助ときおり共助、ほぼなし公助、そして絆。なんの絆かはわかりません」と反論。さらに、感染拡大で苦境に立たされているエンタメや文化・芸術の業界にフリーターの関与が多いとして、社会保障制度の見直しに首相が意欲を示したことについても「『フリーターが関与していることが多い』。なんの話でしょうか? 1年前の話ならやる気を感じ、納得します!」と手厳しくコメントした。