2021年7月19日月曜日

19- 経済界「早く選択的夫婦別姓導入を」 改姓で弊害 経済成長阻む恐れも

 経済界と自民党政権はほぼ一心同体と思われていますが、経営者ら19人が4月に始めた選択的夫婦別姓制度を求める署名7月10日現在、634人の経済人が賛同しました。

 1000人を目標に署名を集め政府に導入を申し入れる予定です
 経済界が敢えて強いメッセージを出す背景には、夫婦同姓の強制が企業や働く人の負担となり経済の成長を阻むとの危機感があります
 自民党が選択的夫婦別姓制度に強硬に反対している背景には、日本会議が何やら大時代的な家族制度の維持を謳っているためです。しかしいまそんな家族制度が本当に実体として広く維持されているでしょうか。頑迷固陋、時代遅れの固定観念以外のものではありません、
 最高裁は6月23日、世界で唯一の「夫婦別姓を認めていない法律を再び「合憲」としまし識者からは「憲法の番人としての役割を果たしていない」と批判の声が上がりました。
 もはや司法が頼りにならない中で、この問題が経済界から経済的作業効率の観点から提唱されたのは興味深いことです。

 東京新聞の2つの記事を紹介します。
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経済界「早く選択的夫婦別姓導入を」 大企業から中小企業まで署名の輪
改姓で弊害、経済成長阻む恐れも
                         東京新聞 2021年7月18日


 夫婦がそれぞれ望む姓を使える選択的夫婦別姓制度を求める声が、経済界から相次ぎ上がっている経営者ら19人が4月に始めた署名の呼びかけに対し7月10日現在、634人の経済人が賛同した。1000人を目標に署名を集め、政府に導入を申し入れる。政治問題への関与に慎重な経済界が強いメッセージを出す背景には、夫婦同姓の強制が企業や働く人の負担となり、経済の成長を阻むとの危機感がある。(坂田奈央、嶋村光希子)

◆非生産的な手続きに「不利益大きすぎる」
 「もはや夫婦同姓の強制は時代に合わない」。「ニコニコ動画」などを運営するドワンゴの夏野剛社長は先月、最高裁大法廷が夫婦別姓を認めない現行法を合憲と判断したことに対し、ツイッターでこう発信した。夏野氏は「選択的夫婦別姓の早期実現を求めるビジネスリーダー有志の会」の共同代表を務めている。
 本紙の取材に夏野氏は「(現行制度では)企業も個人も不利益が大きすぎる」と訴えた。代表取締役が改姓すれば、企業は登記事項の書き換えが必要。個人の改姓でも、学歴や研究業績など旧姓時の経歴と結び付けられず過小評価を受ける可能性がある。非生産的な手続きと負担の話は「枚挙にいとまがない」という。
 共同代表の1人で、結婚時に妻の姓を選んだソフトウエア会社、サイボウズの青野慶久社長も「(社長として)契約書にサインするたび、旧姓を使えるかどうか法務部門に確認せねばならず、ハンコを常に2つ用意している」と明かした。

◆現場では負担増の弊害
 実際、企業の現場では「弊害」が生じている。東京都の元銀行員の女性(31)は企業の給与振り込み業務を担った際、改姓が要因のエラーが多発し、対応に追われた経験がある。主に結婚で姓が変わった女性が、口座名義変更の手続きや勤務先への届け出をしていなかったことが要因だった。
 一部の大手銀行を除き多くの金融機関は、旧姓での新規口座の開設や既設口座の使用継続に応じていない。対応に膨大なシステム改修費を要することなどが理由だ。不正防止のため、口座開設の身分照会は厳格にせざるを得ない。女性は「望まない人まで改姓し、負担を増やす制度はなくすべきだと感じた」と語った。

◆世界で日本だけ「多様な個性生かせる社会を」
 法務省によると、法律で夫婦同姓を義務付けるのは世界で日本だけ。夏野氏は4月、自民党内の推進派議員連盟の会合で「経済界で反対する人はいない。政治が遅れている」と批判。取材時も「経済界にとっても重要な課題といえる少子化は、晩婚化が理由の一つ。少しでも姓を変えることが影響しているのなら、対応すべきだ」と訴えていた。
 有志の会に参加する大和証券グループ本社の田代桂子副社長は「政府が別姓を認めれば、企業も対応せざるを得ない。コスト増の要因などと言っている場合ではない」と主張。署名リストには全国各地の中小企業経営者も名を連ね、大橋運輸(愛知県瀬戸市)の鍋嶋洋行社長(52)は「女性社員を中心に『選択できる方がいい』との声が多く上がり賛同した。女性の社会進出に伴って柔軟に変化を」と求めた。
 青野氏は「孤独な戦いと思っていたが、経済界は賛同してくれた」と驚き、「選択肢を増やすことが多様な個性を生かせる社会につながる」と強調した。


夫婦別姓から逃げた?最高裁 「憲法の番人の役割果たさず」 国会任せの姿勢に批判の声
                          東京新聞 2021年6月24日
 夫婦別姓を認めていない法律を再び「合憲」とした23日の最高裁大法廷決定は、選択的夫婦別姓導入の是非に踏み込まず、国会に議論を委ねた識者からは「憲法の番人としての役割を果たしていない」と批判の声が上がった。 (山田雄之)

◆社会情勢の変化
 「社会の変化や国民の意識の変化を踏まえても、2015年の最高裁大法廷判決を変更すべきだとは認められない」。最高裁決定は15年の合憲判断を維持した。
 今回の最高裁決定の焦点は、15年判決後の社会情勢の変化をどう評価するかだった。
 国は16年、国連の女性差別撤廃委員会から、夫婦に同姓を強いる制度を改善するよう3度目の勧告を受けた。17年の内閣府の世論調査では、選択的夫婦別姓導入を容認する割合が5年前の調査から7ポイント増え、過去最高の42.5%に。反対派の29.3%を大きく上回った。国に制度導入や議論を求める地方議会の意見書は、今月までに171件に上った。
 原告はこれらの事情を踏まえ、「選択肢のない夫婦同姓を維持する合理性は既に失われている」と主張したが、最高裁は退けた

◆合理性欠かない
 「選択的夫婦別姓に合理性がないと断じたわけではない。国会で論じられ、判断されるべきだ」とも付言した前回の判決から5年半、国会で法案提出などには至っていない。それにも関わらず、最高裁は今回の決定で再び「国会で判断されること」とした。
 15年の判決は「今の制度が国会の裁量を超えるほど不合理」であれば、憲法が保障する個人の尊厳と両性の本質的平等に抵触するとする一方、婚姻や家族に関する制度づくりは社会情勢などを踏まえて国会に委ねられているとしていた。
 その上で夫婦別姓を認めない民法の規定を「通称使用の広がりで不利益は一定程度緩和されている」として合理性を欠くとまでは言えないと判断していた。

◆世界で日本だけ
 法相の諮問機関の法制審議会が1996年に、選択的夫婦別姓の導入を盛り込んだ民法改正案を答申してから4半世紀。世界で夫婦同姓しか採用しない国は日本だけとなった。
 昨年末に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画が、今後の夫婦の姓の制度について「司法の判断を踏まえる」と盛り込んだ中での今回の決定。立命館大の二宮周平教授(家族法)は「国会は司法の判断を待っていたのに、最高裁は憲法の番人としての役割を放棄した。今後の国会で制度導入に向けた議論が進展するとは思えない」と批判した。
 一方、15年の最高裁判決で「違憲」とする意見を述べた元最高裁判事の桜井龍子さんは、裁判官3人が補足意見で「社会事情の変化によっては違憲と評価されることもあり得る」とした文言に注目する。「違憲判断の可能性を示唆しており、勧告的な意味合いが含まれている。国会は真摯に受け止め、議論を進めなければいけない」と話した。