2021年7月25日日曜日

感染拡大のなか 五輪強行 / 今からでも中止に 全労連など街頭で

 東京で感染が過去最悪ペースで拡大する状況のもと23日、東京オリンピック大会が開催されました。ワクチン接種は大幅に遅れ、コロナ感染症拡大で医療体制が逼迫し、選手を含めた大会関係者の感染者は123人に達しました。

 菅首相や大会組織委が繰り返し発言してきた「安全安心な五輪」完全に破綻しているなか、中止を求める多くの国民の声を無視した開催に、中止を求める運動が湧き起こっています。
 コロナウイルスの潜伏期間などによって、大会期間中に陽性が確認されなかった選手や大会関係者が、世界にウイルスを拡散させる可能性も大いにあります
 史上初めて1年延期された東京五輪ですが、開催間際まで大会関係者の中から多くの辞任や解任が続出したことは、東京五輪組織委員会の主催者としての資格そのものが問われる事態です
 共産党の和泉民郎スポーツ部長は、「これだけ人々の支持を失った大会はなかった。いつもながらの喜びやいの雰囲気かけらもなく、あるのは幾重にも折り重なった“不安”と“不信”の山」、「2年延期の声を押し切って1年延期にしたのは、安倍前首相が任期内にやれば“自民党総裁に再任されるのに有利”と踏んだからで、それがいま事態を引き起こした」(いずれも要旨)と述べました。
 全労連や医療団体などが呼びかけた「医療・介護・保健所の削減やめて! いのちまもる緊急行動」は23日、東京・JR池袋駅前で、今からでも東京五輪を中止し、コロナ感染防止に集中するよう訴えて宣伝しました。ネットでも「#五輪やめて命まもれ」のツイッターデモ実施されています。
 しんぶん赤旗の記事を紹介します。
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命と人権が危ない 感染拡大のなか 五輪強行
                       しんぶん赤旗 2021年7月24日
 開催都市東京で感染が過去最悪ペースで拡大する状況のもと、東京オリンピック大会の開幕が23日、強行されました。新型コロナウイルス感染症拡大で医療体制が逼迫(ひっぱく)し、ワクチン接種も遅れる中、中止・延期を求める多くの国民の声を無視した開催強行に、全国各地で怒りの声が上がるとともに、五輪中止を求める運動が湧き起こっています。
 東京では23日、コロナの新規陽性者数は、1359人で前週金曜日よりも88人増で、1週間平均でも対前週比で146・5%と増加が続き、第3波ピークの2520人(1月7日時点)を大きく上回る可能性が強く懸念されています。23日発表された陽性率も12・2%にはね上がりました。全国では22日に、5月22日以来初めて5000人を超える5397人が確認されるなど、深刻な状況です。
 菅義偉首相や東京五輪・パラリンピック組織委が記者会見などさまざまな場で繰り返し発言してきた「安全安心な五輪」も完全に破綻しています。組織委は23日、選手3人を含む大会関係者19人の感染が新たに確認されたと発表。陽性となった大会関係者は、累計で106人となりました。内閣官房公表分を含めると123人にのぼります。コロナ感染によって、出場機会を失う選手が続出するなど競技にも影響し始めています。
 また、ウイルスの潜伏期間などによって、大会期間中に陽性が確認されなかった選手や大会関係者が、世界にウイルスを拡散させる可能性があると国内外の専門家たちは指摘します。

 日本共産党の志位和夫委員長は開会同日、ツイッターで「東京五輪の現状は、単に『五輪憲章』に反しているだけではない。日本と世界の人々の命と健康に対する重大な脅威をもたらしているという点において、基本的人権と人間の尊厳をうたった国連憲章及び、人権保障の国際条約・取り決めにも反している」と訴え、「五輪をやめて命をまもれ」と強調しました。
 新型コロナの影響で史上初めて1年延期された東京五輪ですが、森喜朗組織委前会長の女性差別発言による辞任をはじめ、女性タレントを誹謗(ひぼう)する企画を提案した佐々木宏氏、障害者への暴行問題が発覚した小山田圭吾氏、ホロコーストを揶揄(やゆ)するコントが指摘された小林賢太郎氏など、大会関係者の辞任が相次ぎました。五輪憲章がうたう差別禁止と人権を踏みにじる姿勢があらわになり、組織委は主催者としての資格そのものが問われる事態となりました。大会には200以上の国・地域などから約1万1000人の選手が参加。8月8日までの17日間、史上最多となる33競技・339種目を予定しています。


東京五輪 理念も大義も葬られた
           スポーツ部長 和泉民郎 しんぶん赤旗 2021年7月24日
 これだけ人々の支持を失った大会があったでしょうか―。いつもなら喜びや祝祭の雰囲気に包まれる五輪なのに、東京大会にはそのかけらもありません。
 世論調査で「不安を感じている」が87%(「東京」)を占め、「開催反対」が55%(「朝日」)。あるのは、幾重にも折り重なった“不安”と“不信”の山です。開会式に3分の2のスポンサーが出席しない(NHK調べ)など、“民意”の離反は主催する側にも広がっています。

 理由の一つは組織委員会や国際オリンピック委員会(IOC)、日本政府の命より五輪を優先させた、民意無視の姿勢です。
 新型コロナウイルスがどんなに拡大しようとも「安全・安心な大会」を繰り返す政府。組織委の森喜朗前会長の女性蔑視発言など相次ぐ不祥事とその解決能力に欠ける姿。日本で緊急事態宣言が出ているのに、「五輪とは関係ない」(バッハ会長)などと繰り返すIOCの姿勢がその根底にあります。
 IOCにとって、開催するだけで得られる約1300億円とも言われるテレビマネーの存在が、開催一本槍(やり)の背後にあることは間違いありません。
 コロナが克服できないこの時期に開催を強行したIOCと政府の責任が問われます。
 昨年3月、当時の安倍晋三首相が延期を決める際、周囲の「2年後に」という判断を聞かず独断で「1年後」と決め、IOCと合意したことが出発点です。
 今秋予定の自民党総裁選に有利とする自身の思惑がその動機だったといわれます。引き継いだ菅義偉首相も「五輪の成功」の余波で総選挙を有利にしようとする思惑が伝えられます。露骨な五輪の政治利用が、いまの事態を引き起こしています。しかし、端緒をつけた安倍前首相は開会式に出席すらしません。
 民意無視の大会は、アスリートを窮地に追いこんでもいます。コロナ禍の五輪で選手は危険にさらされ、思うにまかせない環境で練習し、国民だけでなく世界からも祝福されない大会の出場を強いられています
 「胸を張って出場していいのだろうか」。そんな重苦しく複雑な思いを選手に強いている元凶が、政府の政治的な決定です。

 五輪の根本原則には「人間の尊厳保持」「平和な社会を推進する」があります。根底にあるのは「人の命の大切さ」であるはずです。しかし、世界で多くの命が脅かされる中での開催は、理念の喪失を意味します。
 それは「すべて人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する」(世界人権宣言第3条)など、人類が築いてきた世界の社会秩序の到達点をも掘り崩す事態です。
 理念も大義もない五輪は、やめる以外にありません。その強行は「五輪の理想が葬られた大会」として永遠に刻まれるだけです。


今からでも五輪中止に 全労連など街頭で訴え
                       しんぶん赤旗 2021年7月24日
 労働組合や医療団体が呼びかけた「医療・介護・保健所の削減やめて! いのちまもる緊急行動」は23日、東京・JR池袋駅前で、今からでも東京五輪を中止し、コロナ感染防止に集中するよう訴えて宣伝しました。ネットでも「#五輪やめて命まもれ」のツイッターデモを実施しました。
 緊急行動は、全労連、中央社会保障推進協議会(中央社保協)、医療団体連絡会議(医団連)が呼びかけ団体
 宣伝で共同代表の小畑雅子全労連議長は、「菅政権は、コロナ禍で働く人たちの苦しい実態を見ようとしていない。今こそ憲法に基づき国民の命を守る政治に転換しよう。医療、介護、保健所の削減から拡充へ転換しよう」と強調しました。
 全国保険医団体連合会の住江憲勇会長は、「安倍前政権、菅政権の無為無策、後手後手の対策が国民を苦しめてきた。検査の拡充、自粛への十分な補償こそ重要だ」と訴えました。
 行動参加団体のスピーチでは「医療が逼迫(ひっぱく)しているのに、看護師ら医療スタッフを五輪に派遣するのは矛盾している」(医労連)、「今日の池袋をみても、五輪が人流を助長しているのは明らかだ」(生協労連)、「飲み物の量、銘柄まで制限して子どもを観戦させようとしたが、観戦中止が相次いだ」(全教)と五輪強行が医療体制や国民の命を危険にさらしている実態を語り、中止を訴えました。